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第三章 守られる私じゃなく。
黎明の誓い
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朝の光が、淡くカーテン越しに差し込んでいた。
昨日までとは違う天井。違う部屋。
ここは――レオン様の屋敷。
まだ、少しだけ息が詰まる。
けれど不思議と、怖くはなかった。
「リディア様、朝食のご用意ができました」
ミリアの声が扉の向こうから響く。
私は小さく返事をして、ゆっくりとベッドから体を起こした。
鏡の中の自分は、どこか落ち着かない顔をしている。
頬に残る赤みが、昨夜の出来事を思い出させた。
――“俺が怖いか?”
その声がまだ耳に残っている。
怖い。でも、あの瞳の奥に見えた優しさが、胸を締めつけた。
そんな事を考えながら着替えをする。
黒を基調にした女性用の軍服。
金の刺繍が縁を彩り、腰には細身の剣。
肩章には王国直属部隊の紋章。
スカートではなく、動きやすいロングコート型で、ブーツまできっちりと締められている。
鏡に映る自分を見つめて、リディアは小さく息を吐いた。
――これが、私の新しい「ドレス」ね。
着替えを済ませて廊下を歩く。
どこも広く、静かで、整いすぎている。
足音が響くたびに、自分がここにいていいのか不安になる。
食堂に入ると、レオン様がすでに席に着いていた。
黒の軍服姿のまま、書類に目を通している。
「おはようございます、レオン様」
「おはよう。眠れたか?」
「……少しだけ。でも、大丈夫です」
「そうか。今日から任務が始まる。出発は正午だ」
レオン様の声はいつも通り低くて落ち着いていた。
それだけなのに、少しだけ心が安定する。
窓の外を見れば、澄んだ青空が広がっていた。
自由の空のはずなのに――なぜか、胸の奥がざわついていた。
* * *
出発の準備が整い、屋敷の前には二頭立ての馬車が待っていた。
部隊の紋章が刻まれた黒い車体が、朝日を受けて鈍く光っている。
「荷は全部積みました、レオン様」
執事の報告に、彼は小さくうなずいた。
「……リディア」
名を呼ばれて、振り返る。
「本当に来るのか。まだ引き返すこともできる」
「行きます」
即答だった。自分でも驚くほど迷いがなかった。
「私は……ただ守られるだけの人でいたくないんです。怖いですけど、それでも、あなたと同じ場所に立ちたい」
風がそよぎ、金の髪が揺れた。
レオンの瞳が、一瞬だけ揺らいだ気がした。
「……無理はするな」
低く、かすれた声。
それがどこか優しくて、胸が締めつけられた。
「はい。けれど、私――レオン様に守られるだけの婚約者ではいたくありません」
言い終えた瞬間、レオンの表情がわずかに変わった。
それは驚きにも、嬉しさにも見えた。
「……強いな、君は」
「そう見えます?」
「いや、本当に強い。だが、俺の目の前で倒れたら許さない」
ふっと笑みが漏れる。
これほど真剣に言われると、怖いより先に安心してしまう。
「じゃあ、約束ですね」
「約束だ」
馬車の扉が開かれる。
一歩、外の世界へ足を踏み出した。
その瞬間、胸の奥で小さく呟いた。
――これは、私の始まりだ。
昨日までとは違う天井。違う部屋。
ここは――レオン様の屋敷。
まだ、少しだけ息が詰まる。
けれど不思議と、怖くはなかった。
「リディア様、朝食のご用意ができました」
ミリアの声が扉の向こうから響く。
私は小さく返事をして、ゆっくりとベッドから体を起こした。
鏡の中の自分は、どこか落ち着かない顔をしている。
頬に残る赤みが、昨夜の出来事を思い出させた。
――“俺が怖いか?”
その声がまだ耳に残っている。
怖い。でも、あの瞳の奥に見えた優しさが、胸を締めつけた。
そんな事を考えながら着替えをする。
黒を基調にした女性用の軍服。
金の刺繍が縁を彩り、腰には細身の剣。
肩章には王国直属部隊の紋章。
スカートではなく、動きやすいロングコート型で、ブーツまできっちりと締められている。
鏡に映る自分を見つめて、リディアは小さく息を吐いた。
――これが、私の新しい「ドレス」ね。
着替えを済ませて廊下を歩く。
どこも広く、静かで、整いすぎている。
足音が響くたびに、自分がここにいていいのか不安になる。
食堂に入ると、レオン様がすでに席に着いていた。
黒の軍服姿のまま、書類に目を通している。
「おはようございます、レオン様」
「おはよう。眠れたか?」
「……少しだけ。でも、大丈夫です」
「そうか。今日から任務が始まる。出発は正午だ」
レオン様の声はいつも通り低くて落ち着いていた。
それだけなのに、少しだけ心が安定する。
窓の外を見れば、澄んだ青空が広がっていた。
自由の空のはずなのに――なぜか、胸の奥がざわついていた。
* * *
出発の準備が整い、屋敷の前には二頭立ての馬車が待っていた。
部隊の紋章が刻まれた黒い車体が、朝日を受けて鈍く光っている。
「荷は全部積みました、レオン様」
執事の報告に、彼は小さくうなずいた。
「……リディア」
名を呼ばれて、振り返る。
「本当に来るのか。まだ引き返すこともできる」
「行きます」
即答だった。自分でも驚くほど迷いがなかった。
「私は……ただ守られるだけの人でいたくないんです。怖いですけど、それでも、あなたと同じ場所に立ちたい」
風がそよぎ、金の髪が揺れた。
レオンの瞳が、一瞬だけ揺らいだ気がした。
「……無理はするな」
低く、かすれた声。
それがどこか優しくて、胸が締めつけられた。
「はい。けれど、私――レオン様に守られるだけの婚約者ではいたくありません」
言い終えた瞬間、レオンの表情がわずかに変わった。
それは驚きにも、嬉しさにも見えた。
「……強いな、君は」
「そう見えます?」
「いや、本当に強い。だが、俺の目の前で倒れたら許さない」
ふっと笑みが漏れる。
これほど真剣に言われると、怖いより先に安心してしまう。
「じゃあ、約束ですね」
「約束だ」
馬車の扉が開かれる。
一歩、外の世界へ足を踏み出した。
その瞬間、胸の奥で小さく呟いた。
――これは、私の始まりだ。
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