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第一章
4月11日(木):三日目あるいは二日目
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【京一】
十分後、僕は電車に揺られていた。
少しスペースを空けて、隣に凛が座っている。彼女は文庫本にじっと視線を向けていた。僕は対面の窓の向こうの景色をぼうっと眺める。
凛と下校を共にするのが、ついに三日目である。
妙なものだ。とはいえそれで何か感慨が得られることもない。昨日や一昨日と同様、特に会話もなく駅に着くのを待つだけ。
――かと思っていたところ、不意に、凛が文庫本を閉じた。そして口を開く。
「あのさ」
「ん?」
「……有紗に、なんか変なこと言われなかった?」
「変なこと?」
「その……、あんたとのこと、みんなによく面白がって言われるから。有紗もあんたに何か言ってなかった?」
口ぶりから、彼女も僕と同じく、その手のいじりには若干うんざりしている様子が窺える。
その心中が察せられたからこそ、僕はこう答えた。
「……別に、なにも言われてないけど」
僕の返答に対し、凛は少し間を置いてから、短く言葉を返す。
「そ」
実に素っ気ない、淡白な返事だが――そこ言い方だけで彼女の感情はなんとなく察せられた。何も聞かれていないならそれが良い、と思っているのだろう。
もし宮本が僕に対して何やら質問をしていたら、では僕がそれにどう答えたのか、僕の返答によっては宮本に面倒な誤解をされかねない――という危惧があったのではないだろうか。
その点には安心してもらってよい、「別にただの幼馴染だ」と、宮本には言った。
「そういえばさ、今日、イブとクララと一緒に食堂で昼食を食べたよ」
不意に凛から質問をされ、発生した会話。なんとなく、別の話題をつなげてみた。
「ふうん。あの子たちは元気?」
「元気も元気、昔のまんまだよ」
そこで僕はふと、クララが言っていたことを思い出した。
「そうだ。……凛も一緒にどうか、って、クララが言ってたんだけど」
あくまでクララがそう言っていたという事実だけ、伝える。
「一緒に……?」
しばし考え込むような間をあける凛。逡巡したのち、言う。
「……ごめん、私は、遠慮しとくよ。いつもお弁当だし」
「そうか」
そう答えるだろうと、分かっていたが。
「私、あの子たちが入学してから、まだ話してないんだよね」
凛は、膝の上に置いたままの文庫本の表紙を、つつり、と指先でなぞりながら言う。
「ちょっと話しかけづらいっていうか。……美代には、たぶん嫌われてるような気がするし」
電車が、がたん、と揺れた。
この車両内には僕ら二人以外にはほとんど乗客がいない。他の数人はそれぞれ寝ていたり携帯電話をいじっていたりしていて、言葉を発することはない。
僕らの会話の切れ目には、電車が線路の上を走る音だけが響く。
僕は、凛の言葉に対してなんと返せばよいのかわからなかった。
僕の目線は外の景色のまま。視界の隅に見える凛は手元の本を見つめたまま。彼女の表情は窺えない。
それから電車が駅に到着するまでは会話はなかった。
電車を降りて改札を抜けると、そのまま凛が足早に歩き出す。僕も彼女に続く。数分歩いて、お互いの家の前までたどり着いた。
「じゃ」凛が短く言う。僕は、「あ、うん、じゃあ」と返し、帰宅した。
/
その日の夜。
日付が変わる少し前、ベッドに横になる。
そこでふと、昨日の夢のことを思い出す。珍妙な小人が登場し、そのあと幼い時分へと身が縮み、同じく幼い凛が魔法少女へと変身して怪物と戦う……という、あの意味不明な夢だ。
今晩はいくらかマシな夢を見たいものだと思いつつ、瞼を閉じて静かに息を吐いた。
………………
……
ハッと意識が浮上して、目を開く。
視界いっぱい、薄紅色があった。上下左右、どこを見ても同色のもやが僕を囲っている。
しばらく言葉が出ず、はあ、と溜め息だけ吐く。
間違いなく、ここは夢の中だ。
薄紅色のもやに囲まれた空間――昨日と同じではないか。周りには何もなくて、意識や感覚ははっきりとしている。この後の展開も同じだとすると……、
「ドモドモ京一サン! またお会いしましたネ。ご機嫌いかがでしょうカ」
案の定、もやの中から勢いよく現れたハイテンションな謎の小人。
「……お前、ホントになんなの」
「何言ってるんデスか。昨日お話ししたデショウ、ワタシは『夢の案内人』デスヨ」
「…………」
二日続けて、こんな夢を見るのか。
やはり、僕は頭がどうにかしてしまったようだ。
「ふふん、今、京一サンの考えてることを当ててあげまショウ。二日も続けて夢の中でワタシに会えて、とっても嬉しい、って思ってるんデショ? まったくもう、照れちゃいマスヨ」
違う。
「ではさっそく、今晩もアナタを夢の世界の旅へとお連れしまショウかネ」
キューピーは、満面の笑みを湛えながら言い、くるり、その身を翻す。
「いや、ちょ、ちょっと待て、その前にちゃんと説明を――」
「しっかりついてきてくださいネ。昨日も言ったように、はぐれちゃうとタイヘンなんデス。無限に広がる夢世界の中で一人虚しく永遠に漂い続けることになりマスから」
聞く耳持たず、小人はそう言ってすいすいと、もやの中を推進し始める。
落ち着いて話しを聞きたいが、そんなことを言われては大人しく付いていくしかなくなる。……いや、小人の発言を真に受けているのはどうかとも思うが。
案内だとか称して、先を行く小人。
……矮小な体だ、いっそ引っ掴んでやろうかとも思い手を伸ばすが、背に生えた羽をパタパタ上下しながら飛んでゆく小人はやけに速く、なかなか届かない。
もう少し、もう少しでその足を掴んでやれるのに……と懸命に追いかけているうち、途端、パッともやが晴れた。
薄紅色のもやの空間を抜け出た。小人の姿はすでになく、見渡すとそこは緑豊かな山林であった。
ヤツを追ってこの場に出たのだから、要するにここが小人による『案内』の先なのか。
昨日とは違い、近所の街中ではない。僕は一人、林の中で茫然と立ち尽くしていた。
木の葉の合間から太陽光が細く差し込み、僕の体を照り付けている。その熱はしっかりと肌に感じられる。
風が流れ、木の葉がざわめく音。
虫の鳴き声、土の匂い。
やはりどれも鮮明で、夢とは思えないほど現実的で、そしてとても心地よかった。
「きょーいち!」
不意に、背後から呼びかけられる。
「もう、はぐれちゃだめだよ」
凛だった。昨日の夢と同じく幼い姿。
幼い凛と目線が一緒の高さだった。……いつの間やら僕の方も幼い時分の姿に変わっている。やはりそこも昨日と同じだ。
となればこの後の展開にも、およそ想像がついてしまう。
十分後、僕は電車に揺られていた。
少しスペースを空けて、隣に凛が座っている。彼女は文庫本にじっと視線を向けていた。僕は対面の窓の向こうの景色をぼうっと眺める。
凛と下校を共にするのが、ついに三日目である。
妙なものだ。とはいえそれで何か感慨が得られることもない。昨日や一昨日と同様、特に会話もなく駅に着くのを待つだけ。
――かと思っていたところ、不意に、凛が文庫本を閉じた。そして口を開く。
「あのさ」
「ん?」
「……有紗に、なんか変なこと言われなかった?」
「変なこと?」
「その……、あんたとのこと、みんなによく面白がって言われるから。有紗もあんたに何か言ってなかった?」
口ぶりから、彼女も僕と同じく、その手のいじりには若干うんざりしている様子が窺える。
その心中が察せられたからこそ、僕はこう答えた。
「……別に、なにも言われてないけど」
僕の返答に対し、凛は少し間を置いてから、短く言葉を返す。
「そ」
実に素っ気ない、淡白な返事だが――そこ言い方だけで彼女の感情はなんとなく察せられた。何も聞かれていないならそれが良い、と思っているのだろう。
もし宮本が僕に対して何やら質問をしていたら、では僕がそれにどう答えたのか、僕の返答によっては宮本に面倒な誤解をされかねない――という危惧があったのではないだろうか。
その点には安心してもらってよい、「別にただの幼馴染だ」と、宮本には言った。
「そういえばさ、今日、イブとクララと一緒に食堂で昼食を食べたよ」
不意に凛から質問をされ、発生した会話。なんとなく、別の話題をつなげてみた。
「ふうん。あの子たちは元気?」
「元気も元気、昔のまんまだよ」
そこで僕はふと、クララが言っていたことを思い出した。
「そうだ。……凛も一緒にどうか、って、クララが言ってたんだけど」
あくまでクララがそう言っていたという事実だけ、伝える。
「一緒に……?」
しばし考え込むような間をあける凛。逡巡したのち、言う。
「……ごめん、私は、遠慮しとくよ。いつもお弁当だし」
「そうか」
そう答えるだろうと、分かっていたが。
「私、あの子たちが入学してから、まだ話してないんだよね」
凛は、膝の上に置いたままの文庫本の表紙を、つつり、と指先でなぞりながら言う。
「ちょっと話しかけづらいっていうか。……美代には、たぶん嫌われてるような気がするし」
電車が、がたん、と揺れた。
この車両内には僕ら二人以外にはほとんど乗客がいない。他の数人はそれぞれ寝ていたり携帯電話をいじっていたりしていて、言葉を発することはない。
僕らの会話の切れ目には、電車が線路の上を走る音だけが響く。
僕は、凛の言葉に対してなんと返せばよいのかわからなかった。
僕の目線は外の景色のまま。視界の隅に見える凛は手元の本を見つめたまま。彼女の表情は窺えない。
それから電車が駅に到着するまでは会話はなかった。
電車を降りて改札を抜けると、そのまま凛が足早に歩き出す。僕も彼女に続く。数分歩いて、お互いの家の前までたどり着いた。
「じゃ」凛が短く言う。僕は、「あ、うん、じゃあ」と返し、帰宅した。
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その日の夜。
日付が変わる少し前、ベッドに横になる。
そこでふと、昨日の夢のことを思い出す。珍妙な小人が登場し、そのあと幼い時分へと身が縮み、同じく幼い凛が魔法少女へと変身して怪物と戦う……という、あの意味不明な夢だ。
今晩はいくらかマシな夢を見たいものだと思いつつ、瞼を閉じて静かに息を吐いた。
………………
……
ハッと意識が浮上して、目を開く。
視界いっぱい、薄紅色があった。上下左右、どこを見ても同色のもやが僕を囲っている。
しばらく言葉が出ず、はあ、と溜め息だけ吐く。
間違いなく、ここは夢の中だ。
薄紅色のもやに囲まれた空間――昨日と同じではないか。周りには何もなくて、意識や感覚ははっきりとしている。この後の展開も同じだとすると……、
「ドモドモ京一サン! またお会いしましたネ。ご機嫌いかがでしょうカ」
案の定、もやの中から勢いよく現れたハイテンションな謎の小人。
「……お前、ホントになんなの」
「何言ってるんデスか。昨日お話ししたデショウ、ワタシは『夢の案内人』デスヨ」
「…………」
二日続けて、こんな夢を見るのか。
やはり、僕は頭がどうにかしてしまったようだ。
「ふふん、今、京一サンの考えてることを当ててあげまショウ。二日も続けて夢の中でワタシに会えて、とっても嬉しい、って思ってるんデショ? まったくもう、照れちゃいマスヨ」
違う。
「ではさっそく、今晩もアナタを夢の世界の旅へとお連れしまショウかネ」
キューピーは、満面の笑みを湛えながら言い、くるり、その身を翻す。
「いや、ちょ、ちょっと待て、その前にちゃんと説明を――」
「しっかりついてきてくださいネ。昨日も言ったように、はぐれちゃうとタイヘンなんデス。無限に広がる夢世界の中で一人虚しく永遠に漂い続けることになりマスから」
聞く耳持たず、小人はそう言ってすいすいと、もやの中を推進し始める。
落ち着いて話しを聞きたいが、そんなことを言われては大人しく付いていくしかなくなる。……いや、小人の発言を真に受けているのはどうかとも思うが。
案内だとか称して、先を行く小人。
……矮小な体だ、いっそ引っ掴んでやろうかとも思い手を伸ばすが、背に生えた羽をパタパタ上下しながら飛んでゆく小人はやけに速く、なかなか届かない。
もう少し、もう少しでその足を掴んでやれるのに……と懸命に追いかけているうち、途端、パッともやが晴れた。
薄紅色のもやの空間を抜け出た。小人の姿はすでになく、見渡すとそこは緑豊かな山林であった。
ヤツを追ってこの場に出たのだから、要するにここが小人による『案内』の先なのか。
昨日とは違い、近所の街中ではない。僕は一人、林の中で茫然と立ち尽くしていた。
木の葉の合間から太陽光が細く差し込み、僕の体を照り付けている。その熱はしっかりと肌に感じられる。
風が流れ、木の葉がざわめく音。
虫の鳴き声、土の匂い。
やはりどれも鮮明で、夢とは思えないほど現実的で、そしてとても心地よかった。
「きょーいち!」
不意に、背後から呼びかけられる。
「もう、はぐれちゃだめだよ」
凛だった。昨日の夢と同じく幼い姿。
幼い凛と目線が一緒の高さだった。……いつの間やら僕の方も幼い時分の姿に変わっている。やはりそこも昨日と同じだ。
となればこの後の展開にも、およそ想像がついてしまう。
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