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Case.02【雨露のメッセンジャー】
day6─微かな道筋─
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昼休みの中頃。
曇天から落ち始めた細かな雨脚は、やがてしとしとと校舎を濡らすほどに強まっていた。
放課後、絢葉は史桜からの指示どおり、手に合羽を抱えて優雅部の部室を訪れる。
「やぁ、来たか」
窓の外を横目に、史桜が静かに言った。
「この天候だ。窓に文字が浮かんでいるはずだ。──合羽を着て、外から調査してみてくれ」
「わかりました」
絢葉は素直に頷き、合羽に袖を通し始める。と、そのとき。
「おーい」
部室の戸を開けて入ってきたのは佐伯だった。
彼の肩や髪はすでに濡れていて、制服はところどころ色濃く滲んでいる。
「……佐伯君、その格好は?」と史桜。
「いやぁ、昼休みにマネージャーから備品の買い出し頼まれてさ。帰りに降ってきたんだよ。結局放課後まで髪も服も乾ききらなかったぜ……」
佐伯はゲンナリした顔で頭を掻き、肩に掛けたタオルでくしゃくしゃと髪を拭いた。
やがて二人は合羽を着込み、図書室の外へ。窓の内側からは白石が不安そうに見守っている。
彼女の隣には奏汰。
「わりぃ、合羽忘れた」だそうだ。
果たして本当に忘れたのか、面倒だったのか。
外の空気は冷たく、雨が頬を打つ。
図書室の外壁を回り込むと、件の窓へと辿り着く。
「……やっぱり」
雨樋の破損部分から溢れた水が、ちょうど窓を叩いていた。その水に濡れたガラス面には、例の文字が浮かび上がっている。
『東雲君、文字をなぞってみてくれ』
史桜の声がイヤホン越しに響く。
恐る恐る指を伸ばした絢葉の指先に、ぬるりとした感触がまとわりついた。
「ひっ……!?」
反射的に手を引き、合羽の裾でこすって拭う。
「な、なんですかこれ……ぬるぬるしてる……」
「やっぱさ」佐伯が眉をひそめる。
「漫画のインク? とかさ。そういうの使って小堀が描いた跡だったりしないか?」
絢葉は息を呑む。確かにそうも思える。昨日、あれほどアナログ作業に熱く語っていた小堀なら……。
史桜の声が耳の奥で響く。
『なるほど……。まぁいい。では、そろそろ中へ戻るとしよう』
その声で踵を返しかけた絢葉は、ふと窓を振り返る。
「……外から見ると、印象が変わりますね。なにか……別の形の暗号にも見えるような」
『ふむ……外からの窓を撮影して、送っておいてくれたまえ』
指示を受け、絢葉はスマホで撮影し、史桜へ送信した。
そして佐伯と共に図書室へ戻ると、白石が震え声で問いかけてきた。
「その……本当に……大丈夫なんでしょうか……」
一瞬、言葉に詰まる絢葉。だが顔を上げて、無理にでも気丈に答えた。
「大丈夫です! 必ず解決してみせます! ……呉宮先輩が!」
「いや、お前がじゃねぇのかよ」
奏汰が静かに突っ込みを入れると、白石も思わず吹き出した。
その笑顔を見て、佐伯はどこか安心したように微笑みを浮かべた。
──同じ頃。優雅部部室。
史桜は送られてきた写真を凝視していた。以前撮影された、図書室内からの写真とも何度も見比べる。沈黙の時間が数秒、数十秒と流れる。
やがて、唐突に笑みが浮かんだ。
「……はは。そういうことか」
紅茶を一口、静かに啜る。
「『怪異』からの淡いメッセージは、しかと受け取った。あとは当人へ届けるだけだ」
窓の外の雨は、変わらず窓を静かに叩いていた。
曇天から落ち始めた細かな雨脚は、やがてしとしとと校舎を濡らすほどに強まっていた。
放課後、絢葉は史桜からの指示どおり、手に合羽を抱えて優雅部の部室を訪れる。
「やぁ、来たか」
窓の外を横目に、史桜が静かに言った。
「この天候だ。窓に文字が浮かんでいるはずだ。──合羽を着て、外から調査してみてくれ」
「わかりました」
絢葉は素直に頷き、合羽に袖を通し始める。と、そのとき。
「おーい」
部室の戸を開けて入ってきたのは佐伯だった。
彼の肩や髪はすでに濡れていて、制服はところどころ色濃く滲んでいる。
「……佐伯君、その格好は?」と史桜。
「いやぁ、昼休みにマネージャーから備品の買い出し頼まれてさ。帰りに降ってきたんだよ。結局放課後まで髪も服も乾ききらなかったぜ……」
佐伯はゲンナリした顔で頭を掻き、肩に掛けたタオルでくしゃくしゃと髪を拭いた。
やがて二人は合羽を着込み、図書室の外へ。窓の内側からは白石が不安そうに見守っている。
彼女の隣には奏汰。
「わりぃ、合羽忘れた」だそうだ。
果たして本当に忘れたのか、面倒だったのか。
外の空気は冷たく、雨が頬を打つ。
図書室の外壁を回り込むと、件の窓へと辿り着く。
「……やっぱり」
雨樋の破損部分から溢れた水が、ちょうど窓を叩いていた。その水に濡れたガラス面には、例の文字が浮かび上がっている。
『東雲君、文字をなぞってみてくれ』
史桜の声がイヤホン越しに響く。
恐る恐る指を伸ばした絢葉の指先に、ぬるりとした感触がまとわりついた。
「ひっ……!?」
反射的に手を引き、合羽の裾でこすって拭う。
「な、なんですかこれ……ぬるぬるしてる……」
「やっぱさ」佐伯が眉をひそめる。
「漫画のインク? とかさ。そういうの使って小堀が描いた跡だったりしないか?」
絢葉は息を呑む。確かにそうも思える。昨日、あれほどアナログ作業に熱く語っていた小堀なら……。
史桜の声が耳の奥で響く。
『なるほど……。まぁいい。では、そろそろ中へ戻るとしよう』
その声で踵を返しかけた絢葉は、ふと窓を振り返る。
「……外から見ると、印象が変わりますね。なにか……別の形の暗号にも見えるような」
『ふむ……外からの窓を撮影して、送っておいてくれたまえ』
指示を受け、絢葉はスマホで撮影し、史桜へ送信した。
そして佐伯と共に図書室へ戻ると、白石が震え声で問いかけてきた。
「その……本当に……大丈夫なんでしょうか……」
一瞬、言葉に詰まる絢葉。だが顔を上げて、無理にでも気丈に答えた。
「大丈夫です! 必ず解決してみせます! ……呉宮先輩が!」
「いや、お前がじゃねぇのかよ」
奏汰が静かに突っ込みを入れると、白石も思わず吹き出した。
その笑顔を見て、佐伯はどこか安心したように微笑みを浮かべた。
──同じ頃。優雅部部室。
史桜は送られてきた写真を凝視していた。以前撮影された、図書室内からの写真とも何度も見比べる。沈黙の時間が数秒、数十秒と流れる。
やがて、唐突に笑みが浮かんだ。
「……はは。そういうことか」
紅茶を一口、静かに啜る。
「『怪異』からの淡いメッセージは、しかと受け取った。あとは当人へ届けるだけだ」
窓の外の雨は、変わらず窓を静かに叩いていた。
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