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生命の灯火が消えて私は
しおりを挟むしかし幸いなことに私達は生きていたのだ。
逃げ行く人の荒波に飲まれそうになっても、手を離さない限り二人は一緒に居られた。
赤が周りを包み込み、黒が周りに跋扈し、灰色が光を遮断した。
赤と黒と灰色の世界。
そんな世界を二人で駆けた。
―――
「嫌じゃ!!嫌じゃ!!まだ死にとうない!!うちゃやすちゃんとまだこれからも生きるんじゃ!!」
「ゴホッゴホッ……ゴホッゴホッ……」
「どしたんやすちゃん!?」
「んーん。ちいと咳き込んでしもうただけじゃけぇ、しゃーなーよ」
二人で走ると、やすちゃんは辛そうに咳き込んだ。
健康なやすちゃんが咳き込んだのは、辺りに充満していた毒の所為だった。
しかし、うち達には止まっている暇なんてない。
だから小さくて弱々しい子どもの體で精一杯走った。
死にたくなんてないから。
―――
当時の光景を地獄と名状するならば、言葉通り神も仏も居ないのだろう。
精一杯無我夢中で走っていた私は気づかなかったのだ。
私が走っていた左横の建物が崩れ掛けていたのを……。
「危ない!やすちゃん!!」
のりちゃんが私を突き飛ばした。
「えっ……………………?」
私が咄嗟に後ろを振り向くと、のりちゃんはニコリと微笑んで、死んだ。
「は……………………?」
──私は何も考えられなくなった。
──私は何も感じられなくなった。
──私は何も聞こえれなくなった。
──私の瞳から光が消えた。
──私の體から力が抜けた。
そんな私は、ただ呆然と突っ立っていた。
「…………………………。」
建物の残骸から、のりちゃんの手が出ていたのだ。
だから私は、ただ、その手を握った。
その手を触れていると、先程まで互いに生を実感していた体温が薄れていった。
まるで、本当に生命の灯火が弱まっている様だった。
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