ハネ

初心なグミ

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ハネ

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「どうしてボクはハネがあるのに飛べないの?」
 
 悩んだ顔をしたペンギンが
 困った顔をしたニワトリに問う

「ワタシにもハネはあるけど飛べないわ……きっと、そんなものなのよ」

 そんなものだとニワトリは諦めるけど
 ペンギンはそんなんじゃ諦めきれなかった

「どうしてボクはハネがあるのに飛べないの?」

 諦めきれないペンギンが
 呆れた顔をしたダチョウに問う

「オレも飛べないが、その分脚が速い。お前も泳ぐのが得意だろ?」

 得意不得意があるとダチョウは言うけれど
 ペンギンは夢を捨てきれなかった

「どうしてボクはハネがあるのに飛べないの?」

 夢を捨てきれないペンギンが
 見下してくるカラスに問う

「ふんっ!生き物は生まれた時から優劣が決まってる。お前はハネでも咥えて空を眺めてるんだな」

 運命で決まってるとカラスは飛び立つけれど
 ペンギンはただ見上げることしかできなかった

「どうしてボクはハネがあるのに飛べないの……」

 泣きそうな顔をしたペンギンが
 抱きしめてるパパとママに泣き言を零す

「ごめん……ごめんねぇ……空、飛びたいよねぇ……憧れだもんねぇ……ごめんねぇ……」

 ママはボクにただ謝って……
 パパはボクに何も言わない……
 
 ペンギンは、そんな言葉が欲しい訳じゃないのに
 ただ、ボクなら空を飛べるって、背中を押して欲しいだけなのに

 これじゃあまるで
 ボクがどんなに足掻いたって空を飛べないみたい……

 そんなものだと諦められれば、もっと利口になれて
 夢を捨てられれば、もっと前に進めて
 運命だと割り切れれば、もっと楽に生きられて

 そんなの、ペンギンは分からないし
 そんなの、ペンギンは分かりたくもない

 憧れは憧れのままじゃいられない
 理想は理想のままじゃ終われない
 夢は夢のままじゃ輝けない

「ボク、諦めきれないよぉ……」

 輝かしい碧を孕んだボクの世界は
 深く苦しい闇に犯された
 
 今までは無意識で出来ていた呼吸は
 まるで酸素が無いかの様に息苦しくて

 今まではスラスラと泳げていた身体は
 まるで水が凍ったかの様に重苦しくて

 ボクがボクじゃないみたい

 それでも一途にどこまでも自由な空に恋して
 身体を浮かせながらハネをパタパタと動かす

 ミンナはボクをバカだと笑うけど
 ボクがボクを諦めたくないから

 パタパタ……パタパタ……
 パタパタ……パタパタ……
 パタパタ……パタパタ……
 パタパタ……パタパタ……
 パタパタ……パタパタ……

 何度やっても変わらなくて
 何度やっても終われなくて

 それでも諦めずに上だけを見てたら
 ボクは……いつの日か空に飛んでいた

 それが夢か現実かボクには分からないけれど
 
 諦めずに何度も躓きながら手にした光景は
 今まで見てきた景色よりも一番綺麗で
 ボクの目からは自然と暖かな涙が溢れてくる

「嬉しくて泣いたの、久しぶりだよ……」

 パタパタとハネを動かし
 澄んだ空を自由に羽ばたく

「ボク、やったよ……ママ、パパ……」

 ペンギンは小さなハネを広げて
 何処までも広がる
 空の海を泳いでいく
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