遅発性Ω～試し読み～

第一章

α→Ω？

「華さん、よく言ってくれた！」

「そうだ、目の前にいる人を救えなくて、なにが医者だ、αからΩに変化したってことはなにか重大なことが体を襲ったにちがいない。調べよう、みんなの力で」

「はい」

----------------

「挿入します」
麻酔をかけ柊は眠りにつく。

蕾に小型カメラが挿入されていく。
女性の膣ではないので狭い入口に細い棒が入っていく感じ。

備え付けているカメラが直腸の奥にぶつかり、少し膨らみがあった。
「子宮ちゃんとありますよ」

「元々存在していたのかが気になります」
「αのデータ見つかりました」

「稀にαでも祖先にΩがいると直腸付近に膨らみがあることがあり、診断結果にはαと記述されることがある」

「希少価値ってことですね」
「この子、昔から賞やスポーツ推薦、学業などなど、αとしての実績を積んでいます」

「ということは本当に遅くΩとして発情期が来てしまったということだな」
「はい」

「もう一つ問題が、なぜαがΩに体質を変えてしまうのでしょうか」
「たしかに、βなら報告が上がっているがなぜαが」

「αからΩって、相当、世の中的に苦しいですよね」
「ああ、それにこの子はα専用のホテルで勤務しているから、仕事は変えないといけないだろうしな」

「とにかく、私たちができることはした、後は回復を待って、起きたらβ呼んで抜いてもらいましょう」

「そうですね、Ωに効くいい薬は性行為ですからね」


入院室に運ばれた。
「麻酔が切れるのは後、1時間くらいですね、βを呼んでおきます」

「はい」

華は旦那が待つ、車に向かった。
車の扉を開き中に入る。
「で、どうだった？」

「柊くんは残念ながらΩだった」
「そっか」

「あんま驚かないね」
「驚いたところでどうにもできないしな、今後どうしていくかが重要だ」

「さすが、α様、前向きだね」
「……」

「この後のことなんだけど、治療する時麻酔を打ったから寝てる、Ωの特効薬は性行為だからβに行為をしてもらうよ」

「そうだよな、Ωになっちゃったもんだから仕方ないよな」
「うん、杉ちゃんは仕事に戻るの？」
※杉ちゃん＝杉本

「ああ、部下に任せてきちゃったから、柊の報告も含めて持って帰らないといけないしな」
「でも、どうやって説明するの？　さすがに専用ホテルだから、置いておくの難しいよね？」

「そこは次期社長さんと話し合いだな、柊のファン多いから、あいつ有能すぎるからさ」
「有能なのに、なんでΩなんだろうね」

「なんか原因とか分かったの？」
「それが祖先とかにもしΩがいたら稀にαなのに子宮ができてしまうらしい」

「は？　あいつの家、α一家だろ」
「そうなの？」

「ああ、もっと祖先にいるのか、まぁいいや俺は仕事戻るから、柊のこと頼むな」
「うん、仕事終わったら、今後どうするか教えてね」

「おう！」
と走り出す車。
このままあそこに柊くんを戻すわけにはいかない。