文学フリマ京都10に向けた作品

枝浬菰文庫

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12/1開催!〈文学フリマ東京39〉試し読み

第7作品「いい子でいなきゃ」

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 ❁あらすじ
 ずっと欲しかったものそれは【仲間】だった。僕は人の目を気にしてしまう。だから作り笑いをして様子を見る。もしダメなら慎重にいかないといけない。
 高校を卒業して就職した先は大和製造会社小さい会社だけど製品を製造している。事務営業として働くことにした。僕はみんなに迷惑かけないように頑張らないといけない。


 ❁試し読み 10ページ
 三月三十一日 少し肌寒いけど桜がもう落ち始めていた。
 明日から大和製造会社に入社し頑張ると決めた。

 四月一日 入社式
 この小さな会社に新入社員は三人だけ。大卒の野田のだ木原きはらと高卒の袖野依麗そでのより

「えーでは順に挨拶をしていきましょう!」と優しそうなご年配の女性が言うと野田さんから挨拶を始める。
 小さな会社の部屋、ここはきっと作業部屋だろう、社長と事務服を着た女性の方と製造服を着た数人がいた。そして僕の番になり口を開く。


「は、初めまして袖野依麗です、よろしくお願いします」となんとも普通な挨拶をした。
 これが僕ができる精一杯だ。
「三人ともよろしくね」


 挨拶が終わり事務と製造とで別れた。

 僕と木原さんは事務営業に野田さんは製造へと別れた。


「じゃぁ事務営業をまとめているのは私なので説明するね」口を開いたのは社長だった。


 社長さんは気さくで少し肌が焼けていて笑うと声が大きそうにみえた。他の事務員さんはご年配の女性が多く、久々に若いのが事務に入ったよと嬉しがっていた。

 僕は高卒だけど木原さんは大卒だ。

 四年の差はきっと大きいだろう。

 それに 僕はまだ未成年、粗相がないようにしないと。
「じゃぁ次はね」と場所を変え食堂へと向かった。

 美味しそうなAランチやBランチがあった、お腹空きそう……。

 でも僕には我慢しないといけない理由があった。

 そしてそれを誰かに言ってはいけない。

 そんな気がした。
「で、よりちゃん聞いてる?」僕はよりちゃんと呼ばれるようになっていた。


 急に話を振られてしまい声が裏返ってしまった。

「は、はい」慌てて口に手をあてると
「いひっよりちゃん可愛い、緊張しているのと?」と言われてしまった。


 僕は昔から作り笑顔が得意だ。

 だいたいにこにこしていれば人は喜ぶことも知っているだから僕は作り笑いをしている。

 しかし見る人にはキモイやおかしいやらいろいろ言われたこともある。それもよく知っている。
「よりちゃんの最高の笑顔もらった」
 と社長は歩き出すが木原さんは後ろを向き「キモ」と言ってきた。きっとこの人と僕は気が合わないのであろう。それでも気分を害してしまったのなら僕が悪い。

「あーそうだ、この後歓迎会を開こうと思うんだけど」


「本当ですか! 嬉しいです、ありがとうございます」とすかさず木原さんは言っていた。


「あ、僕は……」未成年って飲み会行ってもいいのかな? 


「あ、よりちゃんはね、お酒飲めないからソフトドリンク頼みんなね」


 話が終わり次は社員寮にきた。僕が最も惹かれたのがここの社員寮だった。


「えっと木原くんは109号室でよりちゃんは107号室だね、先輩が誰かやめたら上階に移ることも可能だから、とりあえず荷物とか置こうか」


 各自部屋に荷物を置いた、1DKの部屋は僕にはもったいないほどの広さでさらに備え付けのベッドと簡易的な食卓これだけあれば僕は嬉しい、初めての一人暮らしはドキドキしているけど、それでも嬉しかった。
「ふふっ……」

「あーよりちゃんは引っ越し業者いつくるの?」


 僕は思わずきょとんとしてしまった。


「木原くんは明日来るんだけどよりちゃんもそうなの?」


「えっと、僕は荷物これだけなので頼んでないです」


「あらそう、ベッドはあるけど敷き布団とかはどうするの? どっかで買う? よりちゃん運転免許証あったっけ?」


 ? ベッドってこれで寝るんじゃないの? 目の前にあるのはマットレスだけだった。


「えっと持っていないです、バスとかで買い物に行きます」と言っても正直これだけでいいかな……。ベランダあるし、干したりとかでいいかなって思う。


「えーこんなド田舎、バスなんて一時間先だし、車出してあげるよ、それに事務営業だから木原くんメインで運転してもらうから……。本当は免許あったほうがいいんだけど、とれないんだっけ?」


「あ、はいちょっと貯金が足らなくて」素直にそう告げると

「まぁいいか、仕方ないし今まではどうしてたの? さすがに家の人に送ってもらっていたんでしょ?」
「あ、いえほとんど徒歩だったので、僕慣れてますし」にこっと笑うと

「秋とかはいいかもしれないけど、夏は特にここら辺は暑いからな気をつけな」


「はい、お気遣いありがとうございます」

 社長の大和さんは木原さんの部屋に向かった。

 とりあえず、荷物はリュックの中にある物と言っても本当にバスタオルとか私服とかしかない。事務員はみな事務服を借りるみたいだし……。それにご飯は……。どうにかしよう。

「んじゃぁよりちゃん次行くよ」

「はい」鍵をしめ大和さんの後をついていく。木原さんとどうにかして仲良くならないとな……。すごい睨んでくるけどきっと大丈夫。


「ここは製造室ね、基本的には特定の人しか入ってはいけないんだけど、事務営業もたまに出入りするから前原の名前は覚えておくように!
「ども、前原です、木原くんとよりちゃんだね、よろしくね」ここでも僕はよりちゃんと呼ばれていた。
「あの、どうして袖野だけ名前で呼ぶんですか?」木原さんはそう聞いていた。まぁどうみたってそうなるよね、と僕も待つ。


「え、だってよりちゃんまだ十八歳だよ、可愛い年齢じゃん、フレンドリーにいかないとおじさんたちに愛想良くしてくれないかもしれないだろ、もしかして木原くんも【きはらっち】とか呼び名欲しかったかな?」
「え、いらないです」


 断固拒否のような顔をしていた。

「もしかしてよりちゃん嫌だった?」
「え……う、嬉しいです」にこっと向けると
「よりちゃんスマイル頂きました」と言われた。


 またもや首を傾げる。

 きっとここの人にとってはこの笑顔でも良いんだとまた笑顔を作った。
「社長が面接終わって言ってたんだよ、すんごい笑顔が可愛い男の子採用するわって。いやもうね、社長ナイスって感じよ」

「そうなんですね」にこっとまた向けると親指を立てられ「グッド」と言ってたので僕は少し恥ずかしくなってしまった。


「そういえば木原くんは結構滑り込みでうちに面接来たけど行きたいとこの会社落ちちゃったの?」
「それ、聞きますか?」
「うん、聞いちゃう」


「そうですよ、SPIがあと一点足らないとかで、東京の会社だったんですけど、そりゃもう残念っていうか」
「あー東京か、そりゃ厳しいね、でも一点か」
「うちはSPIとかそんなんそもそもないからな」

「たしかに」

「でもいいとこの大学卒業しているよね、土屋大学だっけ? ここらじゃ有名」

「はい、まぁ県代表する大学なんで名ばかりで中身は微妙なやつも多いですよ」

「そうなんだ、たしかあそこって幼小中高大一貫校じゃなかったけ?」

「あーすんごいお坊ちゃんじゃん」

 土屋大学……。お兄ちゃんが通っているところだ。


「いやぁ俺大学だけなので」

「ええ!! 大学だけならなおさらいじめとか起きなかった?」

「あー一部やばいとこもありましたけど俺は大丈夫でした」

 話が弾んでいるようなのでにこにこな笑顔のまま聞いていると急に木原さんは
「お前ってドM?」と聞いてきた。

 前原さんと大和さんは慌てて僕の耳を塞ぎ、木原さんの口元を塞いでいた。
「そういうのは未成年にはよくないよ」と聞こえた気がした。


 それでもいい、僕がここにいてもいい理由を自分で作らないと。


 歓迎会の会場に移った。会社からは近く歩いて向かった。

 製造に別れた野田さんとも合流し僕たちは真ん中の席に座った。

「ではでは僭越ながら挨拶は前原が担当します」

「いよ!!」拍手がなり前原さんはお辞儀をしていた。
「ええ、では本日も皆様お疲れ様でした、今日から仲間入りした三人、野田くんと木原くんとよりちゃんととても楽しい仕事になるよう皆様で作り上げていきましょう、それでは皆様乾杯!!」と宴が開始された。


 僕はウーロン茶を頼みもみくちゃにされながら鍋をつついていた。
 特に事務のおばちゃんたちに囲まれて「これ食べなさい」とか盛り付けられ箸を口に運んだ。


「はぁーよりちゃんみたいな男の子、本当に可愛い」僕はというとあまり男らしくもない体つきと堂々としていない態度で馴染みやすいとよく言われる。もちろん男性に見られたほうが嬉しいのはあるけど、なかなか野田さんや木原さんみたいにはなれない。


「お肉よそってあげるから」と器がモリモリになる。こんな食べたことないや。
 口に運んでいると野田さんが来た。


 ❁他
 youtube
 https://youtu.be/RW4HT3jwKl8?si=1MCXcwFSNhzLx231


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