文学フリマ京都10に向けた作品

枝浬菰文庫

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第5作品「俺はお前を一人にしない」

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 ❁あらすじ
 一人にしない。そう決めた。俺は和貴のことが大好きだ。高校の時告白もした。でも和貴はこちらを向こうともしない。和貴に彼女ができれば俺も真似して作った、でも全然よくない。和貴が大好きすぎて辛い。そんな俺はおかしいのか。和貴こっちむいて……。

 ❁登場人物
 ・浅岡 和貴(あさおかかずき)
 ・倉科 臣(くらしなおみ)


 ❁試し読み 10ページ
「いかないで母さん……」
 ふと目が覚めた、のばした手に痛感する。

 俺の朝はいつもこうだ。
 溢れる涙はもう戻ってこない母さんを俺は心の中でずっと思っている。
和貴かずきそろそろ起きないと遅刻するぞ」

 一階からそう聞こえる声は父さんだ。
「はーい」

 涙をぬぐい着替えて支度して父さんが用意してくれた朝ご飯にありつく。

「明日朝早く出張に行くからもしかしたら今日の夜は会えないかもな、戸締まりよろしく」
「はい」

 父さんと血は繋がっていない。

 俺が八歳の時母さんが再婚して、十歳の時母さんは入院したから父さんと俺は少しぎくしゃくしている。
 でも父さんは俺のことを必死に守ってくれているし大学受験もお金を出してくれると言ってくれた。
 だから俺は父さんの足枷にならないようにしている。

 面と向かって言ったことはないが父さんもきっと何かを感じているのかもしれない。
 俺が傍にいると迷惑……になるよな。
 父親といっても赤の他人だし。

 母さんがいれば家族構成に問題なんてなかった。
「ご馳走様でした、学校行ってきます」
「行ってらっしゃい」
 高校生になり二年が過ぎて後一年になった。

「おはよう、和貴」

「はよ、おみ
 俺の幼稚園からの幼馴染みの倉科臣くらしなおみ、高身長で何をしていてもかっこよくて野球部主将で……。俺と歩いていても20センチの差がある。俺は160だから。小さいよな。

 小人と巨人役で劇をしたら面白いかもしれない。

「なぁ、和貴……今年は受験だよな~」
「うん、どうせ臣はまた俺と一緒なんだろ?」
「ああ、もちろん」
「まぁここまで来たら離れるのも難しいしな」
「だな、幼馴染み歴更新しような」
 通学路をたわいない話しで通う。

 それでも臣の隣は心地が良い。

 だけど臣の幸せまで俺が奪ってしまっていいのか。
 臣は高校一年の時に告白してきた。
 でも俺は「ダメだよ」と断る。

 それでも隣にいてくれる。
 これは意地なのか分からない。
 俺は嬉しかったけどでも臣は幸せにならないとダメだから。
 ずっと俺のこと思ってくれているけど少しは自分の幸せにも気づいてほしいと思う。


 学校につき今年もクラスが一緒になった。

「まさか三年まで一緒のクラスなんて、これは先生に仕組まれてるな」
「な、俺もそう思う」

「てか、臣とまた一緒かよ、高身長がいると女子がそっちに行くじゃんか!!」友人が二人合流した。
「ふん、すまんな、でも彼女は作らない」

「えーでたでた、臣の彼女作らない宣言、男なら女の一人や二人経験してもいいじゃないか!!」
「いや、それができていないのが我ら彼女いないチームだからな」
「他はいるのにな、俺達って魅力ないんかな」

「それはお前だけだろ」と楽しげに会話をしていると俺は手を握られ後ろを振り向くと小柄な女の子がいた。

「あ……あの今ちょっといい?」
「うん」にやにや顔をした友人たちを置いて俺は階段裏まできた。

「あの、どうしたの?」
「あ……私…前から和貴くんのことが好きで、私と付き合ってくれませんか!!」
「え、俺なんかでいいの?」

「はい!」彼女ははっきりとそう告げた。

 彼女できないグループに戻りいちを報告した。
「ということで俺葉山はやまさんと付き合うことになった」

「こんの裏切り者!!」
 これで、臣もきっと諦めてくれる。
 がすごい無表情……。

 いやでもさ、臣の幸せを考えたら俺じゃないよな。
 横にいるのは心地良いしなにより安心する。
 でもさダメなんだよ。

「分かった」一言だけ聞こえた。

 臣はズカズカと歩いて行った。

「ありゃー怒ってますよ、いいの?」

「いいよ、だって臣も好きな人作った方がいいと思うし」
「うん、だよな、和貴にべったりだし」

「和貴も臣にべったりだしな」

「あ、うん……やっぱそう見えてた?」
「「うん」」
 二人同時に言うからやっぱりかと思ってしまった。
 それから四月から季節は巡り夏休みに入った。
 彼女とデートして初めてをやってしまった。
 柔らかくて気持ちよかったしなにより女の子の匂いってふわふわしてた。

 それに彼女は作らない宣言していた臣が夏の甲子園が終わった頃に一緒に歩いていた。

 それでいい、臣もそっちのほうがお似合いだよ。
 夏が終わり九月に入った。

「臣、彼女作らないって言ってたのに作ったんだ」
「……気になったから」
「そうなんだ、でも安心した」
「俺は……」

 それからあまり口を利くことは無かったが大学は同じのようだ。俺の彼女はやりたいことがあるから進路は違うけどお互い認め合っていた。
 んだけど……。

 十月に入り俺は心臓をガシッと掴まれた痛みに苦しがっていた。
「ぐっ……」
「和貴くんどうしたの??」
「はぁ……はぁ…………」
 目眩と頭痛と吐き気と……。
 頭ぐわんぐわんしてきた。ひなちゃんに迷惑かけちゃう……。

 意識が……。
 倒れっ。
 誰かに支えられた気がした。

「あ、倉科くん……」
「無理して学校くんじゃねぇよ」
「え?」
「和貴の担任呼んできてくれる?」
「う、うん」雛ちゃんに指示を出している臣が見えた。
「おみ?」

 俺は臣に抱き抱えられていた。
 しかもお姫様抱っこだ。
 廊下を小走りして保健室が見えた。

 やばい、俺体動かない。
「先生、ベッド貸してください」
「あら、どうしたの」

 どうしたのかと先生は聞く。
 確か新しく赴任してきたから知らないのか。
 そもそも俺十月は登校できないんだった。
 なのに雛ちゃんの傍にいたいそんな思いで来てしまった。
 結局臣に迷惑かけてるし、てかなんで近くにいたんだろうか。

「はぁ……はぁ……」
「大丈夫か、和貴」
「うん、ごめん、また迷惑かけた」
「馬鹿野郎、無理すんな」

 優しく撫でてくれる手が少し気持ちよかった。
「えっと説明してくれるかしら」

 話をしていた時に担任が慌てて入ってきた。
浅岡あさおか!!」俺の名字を呼ばれている気がする。でも暗闇にまた落ちる……。

 ----

「先生、和貴寝ました」
「ああ、そうか倉科毎度サンキューな」

「いえ、俺は俺ができることを和貴にしてあげたいので」
「そ、そうか、ならクラス行ってカバンとってきてくれるか」

「はい、あの和貴のお父さん多分いないので俺が家まで届けます」
「いや、それは先生がするよ」

「いえ、譲れません」俺は先生に伝えると
「あ? 放課後よれ」と怒られた。
 当たり前か。

「で、説明してくださいよ」保健室の先生は催促していた。
 俺は保健室を出た。
 この時期特に十月は和貴のお母さんの命日だ。
 それに引っ張られるように毎年和貴は具合が悪くなる。
 中学の時に亡くなってしまった和貴のお母さんは病気に苦しめられていた。
 和貴のために再婚したのよって聞いたことがあるけど本当にその通りかもしれない。

 和貴がひとりぼっちになってしまっても俺の家で引き取るようにしていたから俺はそれでも良かったけど仮に兄弟になってしまったら和貴のこと好きになったらいけなかったかもしれない。


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