制服の恋人

とき

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恋人の過去に嫉妬する

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恋人の高校時代の写真を見た。
そこには俺と出会う前の俺の恋人・もといが制服に身を包み今より少しだけ幼さを感じる表情で友人たちに囲まれている。
この友人たちは俺の知らない基を知っているのだと思うと仕方のない話だが羨ましくてついつい声に出てしまう。

「羨ましいな」

そう言うと隣で一緒にアルバムを見ていた基が不思議そうにこちらを見た。

「羨ましい?」

「うん。彼らは俺の知らない基を知ってるわけだろ。それがね」 

すると基はくすくすと笑った。

「独占欲強いな清人きよとは」

「そう?」

俺は首を傾げる。 

「そうだよ。逆にさ、こいつらは今の俺を知らないんだよ?連絡もとってないし」

「そうか。でもこの時代の基も知りたかったな」

「我儘」

基が呆れたような表情をする。
俺ははは、と笑って

「この基すごく楽しそうでさ。ついつい嫉妬したんだよ」

そう言って俺は再びアルバムに目を落とした。
だから隣の基が何か考える素振りをしていたのには全く気づいていなかったのだった。


後日、帰宅して夕食を終えてリビングで寛いでいると基が話しかけてきた。

「そういやさ、この前昔の話しただろ?それで実家のクローゼット漁ってみたんだよ。そしたらあったんだ」 

「え、何が?」

「高校のときの制服」 

「へえ、とっておいたんだ」

「うん、だから持ってきた」

「え?」

ぽかんとしているであろう俺の顔を基はおかしそうに見ている。

「高校時代を清人に見せるのは無理だけどさ、これならどうかなと思って。ちょっと着替えてくる」

そして別室に引っ込んだ基の背を目で追いながら俺はぽかんとしていた。

ガチャリと別室のドアを開け基が現れた。

「まだ着れるもんだな。どーよ27歳の高校生は」
とうにやめたはずの眼鏡を少し恥ずかしげにいじりながらブラウンのブレザーを着る彼は元々童顔気味だったので似合わなくはないが、久しぶりに再会した制服との距離感がどこかぎこちなく感じる。

「写真」

慌ててスマホを手に取ろうとする俺を基が制する。

「待った!それはなし!さすがに撮るのはやめて」
「お、おぉごめん」

誰かに写真を見せるかもしれないのが恥ずかしいのだろうか。
そんな事を俺がするはずがないのに。

そのまま目に焼き付けんばかりに凝視する俺にさすがに限界だったのか基が声をあげた。

「何か言ってくれない?」

「うーん…やばいな」

「う、やっぱりきつい?」

「言葉にならないね」

「そんなに…」

がくりと肩を落とす基に俺は慌てて弁解した。

「あっ、違うよ。やばいってのは似合わないとかじゃなくて似合いすぎてやばいって言おうとしたら語彙力がすっとんじゃって」

俺はあわてふためきながらなけなしの言葉を拾い集めたが基を見ながらでは落ち着いて話すことができない。
とりあえず素直に出てきた感想を伝える。

「すごい似合ってるよ」

「なら良かった…」

へへ、と笑った基はソファの俺の隣に座った。

「俺も清人の制服姿見てみたいな」

「俺の?うーんまだあったかな。写真じゃだめ?」

「なければいいけどあったら着てみてほしいな」

あっただろうか、俺は高校時代のものなど思い入れがなくてほとんど処分してしまっているはずだ。

「今度実家を探してみるよ」

「やった」

そして基は飽きたのかさっさと別室に戻り部屋着に着替えてきた。


あれから数週間後

隣には学生服に身を包んだ愛しい恋人の姿がある。
俯いた彼の名を呼ぶと彼は顔を上げた。

知っている顔の知らない顔だ。


暇を見つけて帰った実家で掃除をするふりをして今や物置と化した自室の押し入れを探ると奥の方に「清人高校」と書かれた収納ボックスがあった。
開けてみると処分したと思っていた学生時代に使っていたものが何点が納められており制服も当時のまま綺麗な状態で保存されていた。
何故とっておいたかはわからない。
ただ処分が面倒くさかったのかもしれないが今はそのことに感謝せねばならない。

制服があった、という事を基に伝えると彼はさらっと今度お互いに制服を着てシようと言い出した。
日にちを決めてからは仕事中悶々とし過ぎて手が止まらないようにするのが大変だったことは言うまでもない。


洗面台の前に立ち鏡の中の制服姿の自分を見る。
幸い着ることは出来たが微妙な違和感が漂っている。
基もややぎこちなかったが自分のそれはいかにも大人が制服コスプレをしているようにしか見えない。
しかしもう後には引けないのだった。
覚悟を決めて寝室のドアを開ける。

同じく学生服のシャツ姿の基がベッドに腰掛けてこちらを見た。

「ははっ、なんか、なんか…」

基はくすくすと俺を見て笑った。

「似合わない?わかってるよ」

俺はどかりと彼の隣に座る。

「ごめんごめん…」

基は笑いながら俺の姿をまじまじと見た。

「へー、なんかかわいい清人。高校の時はこんな感じだったんだね。詰襟だったんだ」

その視線がこそばゆくて思わず俺は顔を背けてしまう。

「あんまり見ないでくれないか…」

「いやいや、どうせすぐ脱いじゃうんだからよく見せてよ」

そこまで言って基は唇を結んだ。
急に言葉を切ったので彼の方を見ると自分で自分の発言に恥ずかしくなったのか俯いて固まっている。
それがひどく愛らしくて俺は彼の名を呼んだ。

「基」

ぴくりと彼の肩が震える。
ゆるゆると上げた顔にはまるでこれから自分がどうなるかわからないような期待と不安が混ざった表情が浮かんでいた。

ごく、とつばを飲み込む音がやけに大きく頭に響く。
これはまるで、

するりと彼の頰に触れる。
体の強張りを指先に感じながら触れるだけのキスをした。

「緊張してる?」

「まさか」

そう言う彼だが明らかに落ち着かないようでいつも
と反応が違う。

「清人こそ普段そんなこと言わないだろ」

「そうだけど」

「なんか…変な感じ」

それは自分も同じだった。
なんか変な感じだ。
欲情するとはまた別の熱を体の奥に感じる。
また啄むように唇を重ねた。

「こういうの初めてだな」

「え?」

俺は本気で呆気にとられた。
相当間抜けな顔でもしていたのか基が声を上げて笑う。

「え?あ、違う違うこういうプレイははじめてってこと。わかるだろ?」

くすくすと笑いながら基がふわりと妖艶な空気を言葉に含ませる。

「制服着てるだけじゃなくてそういう設定でする?」

正直魅力的な提案ではあるがうっかり正気に返ったらもう終わりな気がする。

「いや、それはいい」

「そ」

基の腕がのびてきて俺の首を抱いた。
情欲が滲む目を細める。

「優しくして」

基の体が俺に乗り上げた。

「…できたらね」

やはり今日の彼は変だ。
それは俺も同じだが。

普段としていることは変わらないのにやけに反応がぎこちない。
知らない快楽に困惑するように身を悶えさす彼を見ていると我ながら馬鹿らしいが初心を相手にしているような気持ちになる。

衣服の上から隙間から執拗にもどかしい愛撫を施していくと切なげな声が彼の口から漏れた。
衣服越しに擦れ合わせてくるのは無意識だろうか。

「もういいから、早く」

声色的に疼いて仕方がないのが伝わる。
知っているからこそわざと要所を外して攻めたのが功を奏したようだ。

「そういうときなんて言うの?」

「なんだよそれ…」

基は膝立ちになるとチェックのズボンを下着ごと下ろして引き抜いた。
そしてシャツのたくし上げて裾を咥えると自身の昂ぶりを俺の眼前に見せつける。

ニッ、とこれでいいかと笑い挑発してくる彼を見て頭の中で何かの箍が外れた。

先程まで落ち着かず初心な素振りを見せていたかと思いきや精神的に余裕が出てきたのか途端に淫らになる。
随分と煽るじゃないか。

「そういうの」

基の露わになった腰を掴む。

「誰に教わったんだよ」

怒気を絡ませたような声を出せば基の目が揺らめいた。

クソッ

自分でもわかる。
変なスイッチが入ってしまったようだ。
俺も上着を脱ぎズボンを下着ごと勢いよく引き下ろす。

抱きしめ合うように繋がる。 
縋るように求め合いながら俺の頭の中ではどうしようもない感情が渦巻いていた。

お互いが初めてでもないというのはわかりきってたことだったが今俺はその現実を掻き消したいという衝動に駆られている。

野暮としか言いようがないのに彼の「本当の初めて」に嫉妬してしまっていた。

「…基の初めてになりたかったな」

何をいっているんだとそんなことは無理な話だと冷静な方の頭が言う。

俺は髪をかき上げてため息じみた熱い息を吐く。
過去はもうどうにもならない。

それならば
上書きすればいい。
まるで「前」なんてなかったみたいに。

繋がったまま彼を押し倒す。
俺の重みが加わってより強い刺激に貫かれた基が声なく鳴いた。
淀んだ重い気持ちで押しつぶすように俺は無我夢中で彼に重なったのだった。



俺の青く歪んだ想いを知ってか知らずか何度奥を穿とうと基は俺を離すことは無かった。

漸くとなったとき、彼はもはや虚ろに蕩けた目でただひたすらに与えられる律動にその身を揺すられているだけになっていた。
薄く開いた唇が扇情的で汚したくなるがこれ以上更に彼に奉仕させるのはさすがに無理がある。

ふぅ、と長い息をついた。
基の四肢は力なくシーツに沈んでいる。
シャツがたくし上げられて露わになった基の腹は互いの精液と汗で濡れていた。

基の顔にかかった前髪を除けると薄く開いた瞳から生理的なものなのか涙が一滴流れ、その涙を拭うと瞳が緩慢に揺らいだ。
焦点の合わない瞳でぼんやりと天井を眺めている姿は本当に「始めて」のようで得も言われぬ満足感が俺の胸にじんわりと広がっていくのがわかった。

その夜はそうして終わったのだった。


「なんか俺の想定していた結果と違うんだけど」

翌朝、目を覚ますと先に目覚めていた基の不服気な声が降ってきた。

「もっと笑えるような感じになると思ってたのに」

「…ごめん」

思い出して俺は枕に顔を埋める。

「ああいうのは…たまに、ならいい…けど」

「えっ」

枕から起き上がると基はまだ不服そうな表情をしていた。
しかしその耳は赤く染まっている。

「ちょっとS入った清人もいいなって」

「基!」

基の裸の腰に抱きつこうとして力強く制された。

「盛るな!!高校生じゃないんだから!」
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