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【本編】5さい
28話 自由になったらsideラディアス
しおりを挟む「さぁ、リツ一緒に寝ようか」
「ピュイ~……」
机で明日の授業の予習をしていた僕は、一通り教本に目を通すと本を閉じ、机の上に置かれるクッションに座りコクコクと船をこぐリツに話しかけた。
リツは眠そうに一言呟くと可愛い手で目を擦りながらムクリと立ち上がり、僕の元へトテトテと近づく。
僕はリツを抱き上げるとそのままベッドへと向かい、隣にリツを寝かせると自身もベッドに入った。
「眠たいのに僕を待っててくれたんだね……ありがとう」
そう言っておでこにキスをすると擽ったそうに「ピュー……」と呟くリツはすごく可愛い。
「おやすみ、いい夢をみてね」
僕はリツのぷくりと膨らんだ可愛いお腹を撫でながら、目の前で安心して眠むってくれるその光景に、心が幸せで満たされた。
ーーーーーハビーさんの一件から数日が過ぎた。
現在リツの身体に起こっている状態を聞いた時、僕はリツを失うかもしれないと言う恐怖心に襲われ、冷静では居られなかった。
魔力の流れを確認するだけで、あんなにも苦しむリツを見た時は心底焦り、一瞬本当に周りが見えなくなったのは僕がまだ未熟な証拠だと分かっている……だが、苦しむリツが死んでしまうのではないかと怖かったのだ。
失いたくない……大好きなリツを。
まだ5歳の小さなリツに呪いと言う悪質な事をする奴が心底許せない。
いつか絶対に見つけ出して、殺して欲しいと言うまで痛めつけて、産まれてきたことを後悔させてやりたい。
獣人化も魔力も封じられたリツはもっと辛い状況を過ごしたんだ……これくらいでは足りないと思うが、先ずはリツに呪いをかけた愚か者を見つける事が先決だと決意を新たにした。
……しかし、あんなにも重大で恐怖すら感じる状況を知らされたのにもかかわらず、当の本人であるリツは今までとさほど変わらず、無邪気で元気に過ごしている。
もしかしたら、僕達に心配かけないように無理に元気に見せているのだろうかーーーとも思ったが、今までのリツを見るに、きっとあまり深く考えていないのだろうと思い、僕は眠るリツを見つめると眉を下げ「ふっ……」と笑った。
だが、解決策がリツ本人にあるのならば僕達が変に騒いでも意味が無い。
それに、リツが落ち込んだり怯えていない以上変に意識させて今の元気で可愛らしい笑顔が消えてしまってはそれこそ良くない事だ。
ハビーさんは気長に待つしかないって言ってたし、今大切なのは、リツをそばで守り、悲しませないようにする事だと思った。
淡く輝く珍しいブロンドの瞳は、竜人の血が流れている可能性があり、それに比例して魔力量も多いかも知れない。
それは、いつか何かのきっかけがトリガーとなり、リツが呪いと言う鎖から解放された時、色々な意味でリツは自由を手に入れられると言う事だ。
前から薄々感じてはいたが、リツは自分が獣人化出来ないことに負い目と不安を抱えていた。
だから、獣人化はリツにとって重要なことで、自信のつく大きな一歩になる事は間違いない。
僕は別にどんな姿のリツも大好きだけど、綺麗な瞳と小さな身体は獣人化したらどんな姿になるのだろうと少し……いや、かなり気になるし、見てみたいと思う。
でも、獣人化して、自由になったらリツは僕のそばを離れて行ってしまうかもしれない……。
そう考えると、獣人化しなくてもいいかもーーーという醜い感情が湧き、咄嗟に首を振って考えを追い払う。
……もし、リツが獣人化して違う場所を見てみたいと此処を離れようとしたら、リツに頼み込んで一緒に連れて行ってもらおう。
幸いここにはまだライオネルが居るから後継者には困らないだろう。
僕はもう、リツと離れ離れになる事は想像できないのだ。
「こんな僕でごめんね……リツ」
そう言ってリツのお腹にキスをする。
今日お風呂で使った石鹸のいい香りがした。
眉を下げ微笑む僕に気付く事もなく、すやすやと寝息をたてるリツをもっと近くに引き寄せ……僕は眠りについた。
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