リス獣人の溺愛物語

天羽

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10さい

48話 特別な力

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「ふんふん、なるほど……魔獣の声……ね」


これまでの一連を念話で話終えるとハビー先生はう~んと考え込む。

なんでも、これまで魔獣の言葉が分かる者など誰一人としていなかったらしい。
皆も驚いた表情で俺を見ているけど、俺だって……と言うか俺が一番驚いている。


「ラディアス君やガロウィは聞こえなかったんだよね?」


「……はい、大きな遠吠えにしか聞こえませんでした」
「俺もそうだな」


「それじゃあ魔獣が特殊なわけじゃないとーーーーーーふふふっ、そしたらもう答えは決まってるよね」


ハビー先生がまたもや気持ち悪い笑みを浮かべて俺を見ている。


「これはもう!リツちゃんの能力だよ!!」


『俺の能力?』


ハビー先生は俺の手をギュッと握り、興奮した様子で顔を近付ける。


「ラディアス君の瀕死の傷を癒し、闇に侵食された魔獣とその瘴気までも浄化する……これだけの聖属性魔法が使えるだけでも希少なのに、浄化対象の魔獣の声までも聞き分ける者なんて歴代にも居たかどうか……少なくとも僕が今までに見てきた文献には載っていなかった!!!」



「……うぇあ……う……」



鼻と鼻がくっつきそうなくらい俺に近付くハビー先生。
その綺麗な顔は過去一でキラキラと輝いていて、俺は身体を反らす。



「ハビー先生、リツが怖がってるので離れてください」



無機質に声を放つラディはグイッと俺を引き寄せハビー先生から離してくれた。



「ああ、ごめんごめん……それにしても僕の目に狂いは無かった!!君に出会えた事、僕にとっては人生で一番の奇跡と言ってもいい……そのくらいリツちゃんには無限の可能性が秘めているんだよ!!!」



『そ、そんなに俺のした事って凄いの……?』



「もちろん!ねぇガロウィ、リツちゃんが浄化魔法を使った後、あの森に居た他の魔獣がどうなったかリツちゃんに教えてあげてよ!!」


ハビー先生はガロウィさんを一瞥すると明るい声で投げ掛ける。



「あ、あぁ……あの白い光で浄化されたのはお前達を襲ったやつだけじゃないんだ……」



「うぁ……?」



言っている意味がよく分からず頭上にハテナを浮かべて首を傾げる。


「リツ、お前が放ったあの光は森全体を包み込み、森に居た全ての魔獣を浄化したんだ。あの森はかなり大きな森でその分多くの魔獣が居る。強さこそそこまででないにしても、あの森全体を浄化するのは非常に多くの魔力が必要になる……お前はそれをやってのけたんだ」


強い瞳で告げるガロウィさん。
その瞳は冗談を言っている様には到底見えなかった。



ーーーーおぉ……そんなにすごいことなのか。  



他人事の様にそう思う俺。
馬鹿だとは思うけど正直実感も湧かないし、あの時はただラディを助けたくて、その事しか頭の中には無かった。


「その顔は実感無いって感じだね~、でもリツちゃん、君は自分の強い意思で魔術師の呪いを解いて魔力を解放したんだ……そのお陰で獣人化に成功した。この事実が全てを物語っているんだよ。だから真実として少しずつで良いから受け入れていって欲しいと僕は思うよ。勿論これからも僕が全力でサポートする……君の魔力についてはまだまだ研究し足りなーーーーーーおわっ!うげぇ!!いったぁぁ!!!」


最初の方は凄くいい事を言っていたのに、次第に三日月の目に変わり、ヨダレを垂らしそうになっていたハビーさんをラディとラディ父ちゃんとガロウィさんの拳が襲いかかる。



「はぁぁぁ、ちょっとふざけただけなのに……」



「そうは見えませんでしたけど」
「全くだ、お前は信用ならん」
「はぁ、お前も相変わらずだな」

  


3人は息ぴったりに呆れた声を出す。


「あ~いたた……まぁとにかくリツちゃんはまだ魔力に慣れていないから直ぐに疲れたり精神的に不安定になるかもしれないけど、それを放っておくと魔力暴走を引き起こしかねないから暫くは安静にしている様に!」


『魔力暴走って?』


「魔力暴走って言うのは、身体の中で魔力の制御が出来ずに魔力が暴れ回ってしまう事。酷いと対外に放出してしまって自分の意志とは関係なく他の人を傷つけてしまうんだよ……リツちゃんの属性は攻撃系統では無いから周りの人を傷つける事は無いかもしれないけど、その分自分に負担がかかってしまうんだ。だから少しでもおかしかったら必ず誰かに言うこと!いいね?」



『そうなんだ!分かった!色々教えてくれてありがとハビー先生!』



ニヘッと笑ってハビー先生にお礼を言うと、ハビー先生は「ぐほっ!」と言って心臓を抑える。


「うわ、やばいよこの子……破壊力が尋常じゃない……ラディアスくん、リツちゃんをしっかり見ておくんだよ……頑張ってね」


ハビー先生がラディを見て苦しそうに告げると、ラディが当たり前だとでも言う様に強く頷くのが見えた。


……本当になんなんだよ、さっきから。


沢山のハテナを浮かべる俺に向かって、ラディ母ちゃんが「無自覚天然って怖いわね~」と楽しそうに言っていた。
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