リス獣人の溺愛物語

天羽

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10さい

57話 我慢しない sideラディアス

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「さぁ、こんな所にいつまでも居たら風邪を引いてしまうから帰ろうか」



「……らでぃの、へや?」



僕は軽々とリツを横抱きにして持ち上げると、未だ目を潤ませたリツが上目遣いで恐る恐る聞いてくる。


……そうか、リツには部屋を分けると言ったままだった。



「うん、そうだよ……それにこれからもリツには僕の部屋に居て欲しいんだけど……いい?」



「え!ほんと!?うん…いい!」



嬉しそうに笑って返事をするリツの額にキスを落とす。
可愛いリツの笑顔……それを見ただけで胸が高鳴り幸福感に包まれる。








ずっと、どうしていいか分からなかった。
今日こそはちゃんとリツと話をしようと何度も決意するが、いざリツを目の前にすると身体が言う事を聞かなくなる。
気持ちとは裏腹な行動をとってしまい、何度もリツを傷付けた。

……こんな事をしたいわけじゃない……ただ無邪気に笑う可愛い存在を抱きしめたいだけなのに……。

一歩足を踏み入れてしまうと、抑えが効かなくなって傷付けてしまいそうで……距離をとってしまっていた。




ーーーーでも、全ては僕が間違っていた。



リツが涙を流して部屋を出て行った時、直ぐに追いかけなければいけなかったのに、自分が傷付けたクセに何て声を掛けるんだとグルグル考え込んで、その場から動き出せなかった。

ぐっと拳を握りしめ、唇を噛む……そんな時、一枚の紙切れが床に落ちているのに目が止まり、僕はそれを拾うと折り畳まれた紙を開く。



「っっ…!!……これは」



そこにはリツの小さくぎこちない字で書かれた僕宛の手紙の様だった。
きっと……避け続け話もまともに聞こうとしなかった僕に、手紙で伝えようと思ったのだろう。

手紙には……主に森での一件が書かれていて、その殆どが迷惑をかけてごめんなさいと言うような謝罪の文章だった……。

そして、最後には嫌わないで欲しいと……そう小さく書いてあり、手紙の端には涙を零したような跡があった。



ーーー違う……こんな事を言わせたかったわけじゃない。



僕が自分の事ばかりを考え…行動していた時に、傷付いていたリツはそれでも僕の事を思ってくれていたのにーーーー。



ーーーもういい…もう恐れるのはやめよう。
こんな自分勝手な事でリツを傷付けるくらいなら、もっと早く全て話を話せばよかった。


僕は部屋から出てリツを探す。


玄関先でリツが大切にしているスカーフを見つけた時は何かあったのかと血の気が引いたが、いつもの様に声を抑えて泣くリツを見つけた時は、安堵の気持ちと心苦しい気持ちが入り混ざり、直ぐにでも消えて居なくなってしまいそうな儚いリツをギュッと優しく包み込んだ。 



ーーーーそして、全てを伝えるとリツは大きな声で泣いた。



……嫌われたわけでも迷惑に思われたわけでもなかったことに安心した様子で、良かった……と呟いた。


こんなにも愚かな僕をまだ好きでいてくれるリツに、今までの態度を振り返ると本当に申し訳なくて沢山謝った。


……ずっと寂しかった。
……自分はそんなに弱くないから壊れない。


真っ直ぐにそう言うリツは傷だらけの身体で力いっぱい僕の服を掴む。



「……らでぃになら、なにされても、いい……ひどく、されてもいい……だから、もうおれをひとりにしないでぇ!!!!!」



リツが声を上げて泣いた時、僕は今までの行動に酷く酷く……後悔した。
リツを傷付けない様に、しっかり守れる様にと思っていたが実際は……リツが一番嫌がる事をしていたのだから。


……僕は本当に馬鹿だ。


でも、リツがそう言うなら僕はもうするのを辞める。

僕はリツの唇に軽くキスを落とした。

その柔らかい唇は、僕の欲求を膨れ上がらせるばかりだが、真っ赤なリツの顔を見ると今はそれだけで心が満たされた。


リツ……君がいいって言ったんだからね?


これからはリツが寂しくならない様に、ずっと一緒に居て……そして、リツを沢山可愛がろうと心に決めたのだった。





。。。。。。





部屋に着くと、リツの泥だらけになった足や傷の手当をして、新しい寝巻きを着せると一緒にベッドへ潜り込む。


「ぱーるさまにもらったふく……だめにしちゃった」


「そうだね……明日一緒に謝ろうか……僕も一緒に行くから」


「ん?らでぃもいっしょに?」


「うん、だって今回は全て僕が悪いからね。それにーーーーーこれからはリツとずっと一緒にいるから」


「え、ほんと?」


「うん、絶対離さない……」


ほんのり赤くなったリツを抱きしめる。


「えへへ……おれ、らでぃのことだいきらいっていってごめんな……ほんとは、らでぃのことだいだいだいすきだ!!」


「リツーーーーうん、僕も」



無防備なリツの唇にチュッと音をたててキスをする。
瞬間、顔を真っ赤に染めて固まったリツに、続けて食むようなキスを繰り返す。



「むぅ……ちょ、らでぃ……んぅぅ」



ギュッと目を瞑るリツ。
僕はそんな様子のリツに微笑み、顔にかかった髪を分け頭を撫でる。



「そういえばリツ、手紙ありがとう」


「むぅ?でがみーーーあ!!あれ……よんだの!?」


「うん、読んだ」


「うわぁぁ!!だめだよぉ!!!」


更に顔を赤らめるリツに僕は声を出して笑う。


はぁ、本当に……可愛いなぁ。


ねぇ、リツ……これからは我慢しないから、僕と沢山……頑張って行こうね?










ーーーーーーーーー
次回から15歳!!
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