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ライゼン通りのパン屋さん ~看板娘と呼ばれた女性の物語~
十章 アミーからの招待状
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秋に入り、色とりどりの紅葉が美しいライゼン通り。
「う~ん。今日もいい天気。あら、手紙が……」
店の外へ出て看板を出そうとしたミラは、郵便受けに手紙が入っていることに気付く。
「アミーさんからだ。えっと……ミラ、元気にしてる? 新しいチーズケーキを作ったので試食しに来て……か。せっかくのお誘いだから行ってみようかしら」
そう呟くと、お店を臨時休業にして、アミーの営むチーズケーキ屋さんへと向かう。
「いらっしゃい。ミラ、待ってたよ」
「招待状を貰ったので、それで、新しいチーズケーキって言うのは? また試食してってことは、感想を述べればいいのかしら」
アミーがにこりと笑う様子に、彼女が尋ねる。
「えっと、ね、実は、新しいチーズケーキを食べてもらいたいっていうのは嘘なんだ」
「え?」
彼女の言葉にミラは驚いて目を丸めた。
「その、たまには貴女とお茶がしたいなって思って。でも、絶対普通に誘っても来ないだろうからちょっとね」
「もう、アミーさんたら」
悪気がなさそうに笑うアミーの姿に、彼女らしいと苦笑しながら溜息を零す。
「それで、さ。早速お茶会しようと思うんだけど、ついてきてね」
「分かったわ」
彼女の後について向かった先はテラス席。かつてここでローズやベティー達と一緒にお茶会をした思い出のある場所である。
「ふぅ~。ここのハーブティーはやっぱり美味しいわね」
「ミラ、最近お店の調子は如何?」
お茶を一口飲み吐息を零すミラへと、アミーが尋ねた。
「そうね、変わらずにお客さんが押し寄せて、ちょっと大変。でも、何とか一人でやっているわよ。もう、頼れる人いないからね」
「そっか……」
彼女の返答にアミーが伏目で呟く。
「あ、でもね。アイクさんがお仕事お休みの日に手伝ってくれるのよ。彼、仕立て屋のお店を持つために頑張っているのに、私の事まで気にかけてくれてね」
「アイク君が」
笑顔で話すミラの様子に彼女が言葉を零す。
「それでね、この前もアイクさんと初めてのデートをしたんだけれど、彼ってばあそこのレストランを予約していたのよ。あんな高級そうな建物なのに、値段はそこそこ安くてね。それで、ステーキセットを頼んでいたのよ。でも、彼お店もつために資金を貯めているはずだから、私、これからはこんなことしなくていいよって。言ったの。だって、アイクさんがお店を出すために貯めているお金ですもの。それを使わせちゃうのは申し訳ないでしょ」
「……」
アイクの事を笑顔で語る彼女の様子に、アミーが考え深げな顔で見詰める。
「そっか、ルッツやベティーがいなくなって、寂しい思いをしているんじゃないかって、心配していたけれど、今の話を聞いていて何となくだけど大丈夫そうだなって思った」
「へ?」
にこりと笑い言われた言葉に、ミラは不思議そうに首を傾げた。
「今のミラとっても幸せそうな顔してる。アイクさんの事本気で好きなんだね。だから良かった」
「ア、アミーさん。何を言うのよ……」
笑顔でそう話すアミーの言葉に、彼女は頬を赤らめ抗議する。
「ミラが独りぼっちじゃなくて良かった。ミラ、アイクさんとこれからも仲良くね」
「も、もう。アミーさんてば」
彼女の言葉にミラは呟き、赤くなった顔を隠す。
「それで、ミラ。結婚はいつするの?」
「け、結婚!?」
アミーの口から飛び出した言葉に、彼女は驚き硬直する。
「け、結婚だなんて。そんなの、まだ考えてないわよ」
「でも、アイクさんの方は如何かな? 彼、お店を持つ夢を叶えた後どうすると思う?」
慌てて答えるミラへと、彼女が尋ねた。
「ど、どうって……」
「アイクさんもミラの事本気で好きだと思うんだ。これ、女の勘だけどね。だからアイクさんもミラの事凄く考えてくれていると思うんだ」
答えられずにいる彼女へと、アミーがそう語る。
「……」
「ミラ、アイクさんから結婚して欲しいって言われたら、どう答えるのか、考えておいた方がいいと思うよ」
遂に黙り込んでしまうミラへと、彼女がそう言ってにこりと笑った。
「それから、さ。ミラにもう一つお話しておかないといけない事があってね」
「?」
微妙な空気が流れ始めたところで、アミーが真面目な顔になり口を開く。
その様子に不思議そうに目を瞬き、彼女の次の言葉を待った。
「その、さ。実は……結婚するんだよねぇ。だからこのお店、彼と二人で経営していくことになると思う」
「え? ……えぇっ!?」
もじもじしながら言われた言葉にミラは盛大に驚く。
「アミーさんが結婚だなんて。い、何時からお付き合いを?」
「一年前から、かな。彼もケーキ職人でね。それで一緒に作っていたら、何となくお互い気を引かれて、それでそのままって感じ」
食らいつく彼女へとアミーが答える。
「そ、そう。アミーさんおめでとうございます」
「有難う」
心から祝福するミラの言葉に、彼女が嬉しそうに微笑む。
「今度ミラにも紹介するね」
「えぇ。楽しみにしているわ」
にこりと笑いアミーが言うと、彼女も微笑み頷く。
ミラの周りで変わり始める日常。彼女自身にもそう遠くない未来で訪れるのかもしれない。
「う~ん。今日もいい天気。あら、手紙が……」
店の外へ出て看板を出そうとしたミラは、郵便受けに手紙が入っていることに気付く。
「アミーさんからだ。えっと……ミラ、元気にしてる? 新しいチーズケーキを作ったので試食しに来て……か。せっかくのお誘いだから行ってみようかしら」
そう呟くと、お店を臨時休業にして、アミーの営むチーズケーキ屋さんへと向かう。
「いらっしゃい。ミラ、待ってたよ」
「招待状を貰ったので、それで、新しいチーズケーキって言うのは? また試食してってことは、感想を述べればいいのかしら」
アミーがにこりと笑う様子に、彼女が尋ねる。
「えっと、ね、実は、新しいチーズケーキを食べてもらいたいっていうのは嘘なんだ」
「え?」
彼女の言葉にミラは驚いて目を丸めた。
「その、たまには貴女とお茶がしたいなって思って。でも、絶対普通に誘っても来ないだろうからちょっとね」
「もう、アミーさんたら」
悪気がなさそうに笑うアミーの姿に、彼女らしいと苦笑しながら溜息を零す。
「それで、さ。早速お茶会しようと思うんだけど、ついてきてね」
「分かったわ」
彼女の後について向かった先はテラス席。かつてここでローズやベティー達と一緒にお茶会をした思い出のある場所である。
「ふぅ~。ここのハーブティーはやっぱり美味しいわね」
「ミラ、最近お店の調子は如何?」
お茶を一口飲み吐息を零すミラへと、アミーが尋ねた。
「そうね、変わらずにお客さんが押し寄せて、ちょっと大変。でも、何とか一人でやっているわよ。もう、頼れる人いないからね」
「そっか……」
彼女の返答にアミーが伏目で呟く。
「あ、でもね。アイクさんがお仕事お休みの日に手伝ってくれるのよ。彼、仕立て屋のお店を持つために頑張っているのに、私の事まで気にかけてくれてね」
「アイク君が」
笑顔で話すミラの様子に彼女が言葉を零す。
「それでね、この前もアイクさんと初めてのデートをしたんだけれど、彼ってばあそこのレストランを予約していたのよ。あんな高級そうな建物なのに、値段はそこそこ安くてね。それで、ステーキセットを頼んでいたのよ。でも、彼お店もつために資金を貯めているはずだから、私、これからはこんなことしなくていいよって。言ったの。だって、アイクさんがお店を出すために貯めているお金ですもの。それを使わせちゃうのは申し訳ないでしょ」
「……」
アイクの事を笑顔で語る彼女の様子に、アミーが考え深げな顔で見詰める。
「そっか、ルッツやベティーがいなくなって、寂しい思いをしているんじゃないかって、心配していたけれど、今の話を聞いていて何となくだけど大丈夫そうだなって思った」
「へ?」
にこりと笑い言われた言葉に、ミラは不思議そうに首を傾げた。
「今のミラとっても幸せそうな顔してる。アイクさんの事本気で好きなんだね。だから良かった」
「ア、アミーさん。何を言うのよ……」
笑顔でそう話すアミーの言葉に、彼女は頬を赤らめ抗議する。
「ミラが独りぼっちじゃなくて良かった。ミラ、アイクさんとこれからも仲良くね」
「も、もう。アミーさんてば」
彼女の言葉にミラは呟き、赤くなった顔を隠す。
「それで、ミラ。結婚はいつするの?」
「け、結婚!?」
アミーの口から飛び出した言葉に、彼女は驚き硬直する。
「け、結婚だなんて。そんなの、まだ考えてないわよ」
「でも、アイクさんの方は如何かな? 彼、お店を持つ夢を叶えた後どうすると思う?」
慌てて答えるミラへと、彼女が尋ねた。
「ど、どうって……」
「アイクさんもミラの事本気で好きだと思うんだ。これ、女の勘だけどね。だからアイクさんもミラの事凄く考えてくれていると思うんだ」
答えられずにいる彼女へと、アミーがそう語る。
「……」
「ミラ、アイクさんから結婚して欲しいって言われたら、どう答えるのか、考えておいた方がいいと思うよ」
遂に黙り込んでしまうミラへと、彼女がそう言ってにこりと笑った。
「それから、さ。ミラにもう一つお話しておかないといけない事があってね」
「?」
微妙な空気が流れ始めたところで、アミーが真面目な顔になり口を開く。
その様子に不思議そうに目を瞬き、彼女の次の言葉を待った。
「その、さ。実は……結婚するんだよねぇ。だからこのお店、彼と二人で経営していくことになると思う」
「え? ……えぇっ!?」
もじもじしながら言われた言葉にミラは盛大に驚く。
「アミーさんが結婚だなんて。い、何時からお付き合いを?」
「一年前から、かな。彼もケーキ職人でね。それで一緒に作っていたら、何となくお互い気を引かれて、それでそのままって感じ」
食らいつく彼女へとアミーが答える。
「そ、そう。アミーさんおめでとうございます」
「有難う」
心から祝福するミラの言葉に、彼女が嬉しそうに微笑む。
「今度ミラにも紹介するね」
「えぇ。楽しみにしているわ」
にこりと笑いアミーが言うと、彼女も微笑み頷く。
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