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番外編 本編後 時代を超えて受け継がれる物語
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これは聖女物語が伝説となった頃のお話し。ある村に貧しい暮らしをする家族がいました。一人娘の女の子が16歳になった時、信託を告げる破魔の矢が家の前へと現れます。
それは伝説で邪神を打倒したとされる物で、それが家の前へと現れた家の娘が次の神子になるといわれていた。そしてそれが現れた時が世界に危険が迫っている時であると告げられていて、神子が破魔の矢でその存在を射殺さなければ世界に平和は訪れないと言われている。
「と、いうわけじゃ」
「そんな昔話。本当か嘘か分からないじゃないの」
白髪頭のおじいさんが語った言葉に白い顔に赤色の長い髪を揺らしながら6歳くらいの少女……レインは言った。
「おじいさまのお話は面白いけど、でもそんな伝説私は信じたりしないわよ」
「レイ。おじいさまになんてこと言うんだ。俺は信じるぜ。だってその伝説になった聖女と俺達のご先祖様は一緒に戦ったんだからな。なあ、おじいさま。そうだよな」
彼女の言葉に声をあげたのは4歳年上の兄アシュベル。妹とは違い瞳を輝かせて祖父へと尋ねた。
「そうじゃ。我等がご先祖様であり、かつては一度この倭国を統合し頂点に立っていた帝国の王子であられたアレクシル様が、瑠璃王国の姫君アオイ様と協力して邪神からこの世界を救ったのじゃ」
「そんなすごい人の血をひいてるんだ。だから伝説は本当だと思うぜ」
「伝説なんて背びれ尾びれがつくものじゃないの。私はそんな伝説信じやしないわよ。私が信じているのは帝国の王子であった私のご先祖様であるアレクシル様と瑠璃王国の姫であるアオイ様が協力したってとこだけよ」
祖父が力強く頷くと語った言葉にアシュベルがさらに瞳を輝かせて話す。それに水を差すように冷めた口調でレインが言った。
「レイは本当に冷めてるよな。俺達の先祖が伝説になって語り継がれているんだぜ。もっと興奮してもいいんじゃないのか?」
「アッシュお兄様みたいに子どもじゃないのよ。昔はどうあれ今我が家系は栄えていたころとはまるで違ってこんな田舎に暮らす庶民じゃないの。昔の栄光にすがっていたらいつかお家は途絶えるわよ」
唇を尖らせ言った兄に対して妹は溜息を吐いて答える。
「ふぉっふぉ。レイは幼いながらに家の事を考えてくれているとは嬉しいの。なぜ帝国を作り上げたご先祖様が瑠璃王国の姫に国を返しこんな田舎にやってきたのかは定かではないが、だが王族の血を継いでいることは確かじゃ。そして武家の家系を築きあげられた。今や瑠璃王国もなくなり、倭国の主は江渡(えと)の殿様じゃ。殿様は我が一族の武術を高く買ってくださっておる。お前達が大きくなり殿様の城で働く側近兵になってくれたらとこのおいぼれが望むものは他にない」
「大丈夫。おじいさまの願いは俺がちゃんと叶えて見せるから」
「私はいやよ。そんな事より世界中を旅してまわりたいわ。だって世界には私の知らない事や物がたくさんあるんでしょ。いつかこの田舎を出て世界中を旅すること、それが私の夢なの」
祖父がおかしそうに笑うとそう語って孫の顔を見詰めた。それにアシュベルが真面目な顔で力強く頷き答えるのとは対照的にレインは首を振って自分の夢を話す。
「レイはおじいさまの願いを叶えてあげないつもりか?」
「おじいさまの願いはアッシュお兄様に託すわ。私は女の子だもの。側近兵になんてなれやしないわ。だってこの前も行列を見たけど側近兵って男の人達ばかりだったじゃないの。女である私がそこに入ることなんかできやしないわよ」
「そんな事ない。レイの実力なら絶対になれる。俺と同じくらい剣の腕が立つんだから殿様も認めてくれるさ」
兄が不服気に尋ねると妹は答える。その言葉にアシュベルが食って掛かった。
「あま、まあ。アッシュ、レイ。二人がわしが死んだ後どのような道をたどるかはお前さん達次第じゃ。だがな、人に恥じない生き方をしてほしいと願っておるよ。嘗ては帝国の主となったルシフェル様とその王子であられるアレクシル様の血をひいておるのじゃからな。今や落ちぶれたとしてもその誇りだけは決して捨ててはならんぞ」
「「はい」」
そんな二人をなだめると祖父がそう言い聞かせる。それに二人は力強く返事をした。
これが時代を超えて受け継がれる物語の幕開けでもあり、新たな伝説の始まりを迎えるまでのほんの少し前の出来事である。
それは伝説で邪神を打倒したとされる物で、それが家の前へと現れた家の娘が次の神子になるといわれていた。そしてそれが現れた時が世界に危険が迫っている時であると告げられていて、神子が破魔の矢でその存在を射殺さなければ世界に平和は訪れないと言われている。
「と、いうわけじゃ」
「そんな昔話。本当か嘘か分からないじゃないの」
白髪頭のおじいさんが語った言葉に白い顔に赤色の長い髪を揺らしながら6歳くらいの少女……レインは言った。
「おじいさまのお話は面白いけど、でもそんな伝説私は信じたりしないわよ」
「レイ。おじいさまになんてこと言うんだ。俺は信じるぜ。だってその伝説になった聖女と俺達のご先祖様は一緒に戦ったんだからな。なあ、おじいさま。そうだよな」
彼女の言葉に声をあげたのは4歳年上の兄アシュベル。妹とは違い瞳を輝かせて祖父へと尋ねた。
「そうじゃ。我等がご先祖様であり、かつては一度この倭国を統合し頂点に立っていた帝国の王子であられたアレクシル様が、瑠璃王国の姫君アオイ様と協力して邪神からこの世界を救ったのじゃ」
「そんなすごい人の血をひいてるんだ。だから伝説は本当だと思うぜ」
「伝説なんて背びれ尾びれがつくものじゃないの。私はそんな伝説信じやしないわよ。私が信じているのは帝国の王子であった私のご先祖様であるアレクシル様と瑠璃王国の姫であるアオイ様が協力したってとこだけよ」
祖父が力強く頷くと語った言葉にアシュベルがさらに瞳を輝かせて話す。それに水を差すように冷めた口調でレインが言った。
「レイは本当に冷めてるよな。俺達の先祖が伝説になって語り継がれているんだぜ。もっと興奮してもいいんじゃないのか?」
「アッシュお兄様みたいに子どもじゃないのよ。昔はどうあれ今我が家系は栄えていたころとはまるで違ってこんな田舎に暮らす庶民じゃないの。昔の栄光にすがっていたらいつかお家は途絶えるわよ」
唇を尖らせ言った兄に対して妹は溜息を吐いて答える。
「ふぉっふぉ。レイは幼いながらに家の事を考えてくれているとは嬉しいの。なぜ帝国を作り上げたご先祖様が瑠璃王国の姫に国を返しこんな田舎にやってきたのかは定かではないが、だが王族の血を継いでいることは確かじゃ。そして武家の家系を築きあげられた。今や瑠璃王国もなくなり、倭国の主は江渡(えと)の殿様じゃ。殿様は我が一族の武術を高く買ってくださっておる。お前達が大きくなり殿様の城で働く側近兵になってくれたらとこのおいぼれが望むものは他にない」
「大丈夫。おじいさまの願いは俺がちゃんと叶えて見せるから」
「私はいやよ。そんな事より世界中を旅してまわりたいわ。だって世界には私の知らない事や物がたくさんあるんでしょ。いつかこの田舎を出て世界中を旅すること、それが私の夢なの」
祖父がおかしそうに笑うとそう語って孫の顔を見詰めた。それにアシュベルが真面目な顔で力強く頷き答えるのとは対照的にレインは首を振って自分の夢を話す。
「レイはおじいさまの願いを叶えてあげないつもりか?」
「おじいさまの願いはアッシュお兄様に託すわ。私は女の子だもの。側近兵になんてなれやしないわ。だってこの前も行列を見たけど側近兵って男の人達ばかりだったじゃないの。女である私がそこに入ることなんかできやしないわよ」
「そんな事ない。レイの実力なら絶対になれる。俺と同じくらい剣の腕が立つんだから殿様も認めてくれるさ」
兄が不服気に尋ねると妹は答える。その言葉にアシュベルが食って掛かった。
「あま、まあ。アッシュ、レイ。二人がわしが死んだ後どのような道をたどるかはお前さん達次第じゃ。だがな、人に恥じない生き方をしてほしいと願っておるよ。嘗ては帝国の主となったルシフェル様とその王子であられるアレクシル様の血をひいておるのじゃからな。今や落ちぶれたとしてもその誇りだけは決して捨ててはならんぞ」
「「はい」」
そんな二人をなだめると祖父がそう言い聞かせる。それに二人は力強く返事をした。
これが時代を超えて受け継がれる物語の幕開けでもあり、新たな伝説の始まりを迎えるまでのほんの少し前の出来事である。
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