2代目赤ずきんちゃん、ロリコン狼とお見舞いに行く

猫田れお

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ペレスの町

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 馬車に揺られる事、数時間――。
 私達はペレスの町に到着した。
 
 ペレスはカレンさんが本拠地にしている町だ。
 カレンさんの案内で冒険者ギルドに向かった。
 道中でカレンさんに声を掛ける人が何人もいた、この町ではカレンさんは有名人みたいだ。
 真面目で面倒見のいい姉御肌のカレンさんの事だこの町でも皆に信頼され、尊敬されているに違いない。
 私は自分の事の様に誇らしい気持ちになった。
 
「ここが冒険者ギルドだ」
 
 私達は冒険者ギルドに到着した。
 ギルドに入るなり、私達は大勢の人に迎えられた。
 ペレスの町でもヒューゴ討伐のニュースは届いているらしい。
 皆、口々に称賛の声を上げている。
 中にはどうやって倒したのか、詳細を聞いてくる人もいたけど、そこは皆で口裏を合わせていた通りに酒に酔わせて潰れたところを一気に仕留めたと言う事にした。実際ヒューゴは酒に弱かった。
 話が一段落しても誰もギルドから出ていく人はいなかった。皆、褒賞金が気になっているらしかった。

「それじゃあ、私は手続きをしてくる」

「いってらっしゃい!」

 その間、私達はギルドに併設されたダイナーで待つことにした。カレンさんはパーティーを組むことが珍しいらしく私達に興味を示す人達から質問責めに合いながら。
 
「待たせた」

 カレンさんが戻って来た時にはまわりの冒険者達とだいぶ仲良くなっていた。
 私達の席のまわりはほとんど宴会状態で、各々酒や料理を楽しんでいる。

「おかえりなさい!」

 冒険者達は先に始めてるぜって感じでビールのジョッキをかかげている。
 私も葡萄のジュースにご満悦。

「もう始めてるのか、その前に話がある。私はペレスの町をしばらく離れる。今回は隣町のミアレスとは違い、国を越える旅だ。時間もかかるだろう。その間ペレスの町は頼んだぞ」

 皆がカレンさんの話に聞き入っている、最後の言葉に皆が任せろ!と声を上げる。
 それから誰彼ともなく乾杯の音頭が取られた。

「カンパーイ!!」

「よし! ここは私の奢りだ! どんどん飲んでくれ!」

 カレンさんの言葉にその場は一気に盛り上がった。
 それからはいつもの様に酒飲み勝負にセラフさんが一人勝ちしていたり、カイが食い倒れてたり、私も沢山飲み食いしながら会話を楽しんだ。
 皆の輪の中心でカレンさんも楽しそうに笑っていた。
 ペレスの町も素敵な所だなと、私はミアレスの皆の事を思い出していた。

 そうして、楽しい宴も解散となった――。

 カイとセラフさんは宿屋、私とカレンさんはカレンさんの部屋に泊まる事に。

「アリシアだけ、特別だぞ」

 カレンさんはそう言って頬を赤らめた。

 (カレンさん……かわいい)

 部屋に入ると言葉の意味が分かった。
 そこは私の部屋と一緒かもしかしたらそれよりもガーリーでメルヘンな空間が広がっていた。

「かわいい!!」

 やっぱりカレンさんも女の子だったんだ。
 いつもはそんな素振りは見せないけど、可愛い物が好きだったんだ。
 私はカレンさんに親近感を覚えると共に、男子、特にカイには知られてはいけないと思った。
 カイは何も考えずに茶化して来るに決まってんだから!そんな事されたらカレンさんが恥ずかしさのあまり自暴自棄になって部屋中の可愛い物達を全部捨てて、超絶質素な部屋にしていまうかもしれないのだから。

「似合わないだろ?」

 カレンさんが自嘲気味に笑った。

「そんな事ありません!! カレンさんが私と同じで嬉しいです!!」

 私はお世辞でも気を使ったわけでもなく本心からそう言った。

「ありがとう、アリシアは本当に素直でいい子だね」

 そう言ってカレンさんが私の頭を撫でる。
 私の本気の言葉はちゃんと届いたみたいだ。
 一人っ子の私にはカレンさんはお姉ちゃんみたいな存在になっていた。
 それからは一緒のベッドに入っておしゃべりを楽しんだ。

 そしていつの間にか眠ってしまっていた。

 ◆◆◆◆◆

  朝になって私が目を覚ますと、カレンさんはすでに起きていて、長期間部屋を空けるので調度品にホコリがかぶらないように布をかぶせて養生しているところだった。
 
 昨夜の事を思い出して少し恥ずかしくなった。
 同じベッドに入るなんてちょっと甘えすぎだったんじゃないかと。カレンさんの前だと何故か子どもっぽくなってしまう。カイには子ども扱いされるのがあんなに嫌なのに。
 
 部屋はもう旅の準備がほとんど終わっていて、食べ物も何も置いてないので朝食はカイ達が泊まっている宿屋に併設しているダイナーでとることにした。
 私達は最後にベッドを整えて、布をかぶせて養生し、ベッドサイドに並んでいるぬいぐるみ達に挨拶をしてから布団をかぶせる様に布をかけてから部屋を出た。

 宿屋に着くと、カイとセラフさんも起きていてダイナーで朝食をとっているところだった。
 私達は挨拶を軽くすませると、同じテーブルについた。

 朝食を食べている間もカレンさんは冒険者達に声を掛けられていた、別れを惜しむ者、旅の安全を祈る者。様々な声に鼓舞されて私達は旅を続ける事が出来る気がした。

 出立の時間までにはカレンさんの周りには人集りが出来ていた。
皆に慕われているカレンさんを見てると仲間として誇らしく感じた。そして私にとっては、憧れの存在でもある。

 沢山の声に見送られ、私達はペレスの町を後にした。
 次の町までは徒歩だ。もちろん馬車で行く事も出来たが、私が断った。今回の旅はあまりお金をかけないで行きたいというのが理由だ。なるべくカレンさんやセラフさん、大人達の負担にならないようにしたかったからだ。
カイには子どもが遠慮するなって言われたけど……。
でも私もギルドに登録している冒険者だ、自分の面倒は自分で見たい、そう言ったらみんな納得してくれた、カイは渋々といったところだけど……。
それからヒューゴの褒賞金はみんなで分ける事にした、ただ金額が金額なので、私の分はカレンさんが管理する事になった。

 次の町まではそれなりにかかるらしく、一回は野宿をする事になるらしい、でも道は整備されているし、野宿に最適なキャンプ場も用意されているらしく、旅の初心者にも優しい道程となっている。
モンスターも出る事があるが、スライムや、ホーンラビットなどの比較的弱い者が多いらしい。

 そしてとうとう、この旅初めての戦闘が始まろうとしていた。私達の目の前にホーンラビットが現れたのだ。ホーンラビットとはその名の通り、角の生えたウサギである。可愛い見た目とは裏腹にその角や前歯の攻撃は当たり所が悪ければ致命傷になりかねない、注意しなければいけないモンスターだ。まぁ、モンスターに対する時は油断せずに注意するに越したことはない。

カレンさんとカイが前衛に私とセラフさんが後衛に陣を構えた。

「アリシア、実力が知りたい。やれるか?」

「はい!」
 
 カレンさんに言われて私は前に出た。
 ホルスターから銃を取り出すと構えてセーフティーを外した。標準をホーンラビットに合わせて引き金を引く。発射された弾はホーンラビットのこめかみを撃ち抜いた。一撃で仕留める事に成功した。

「よし、よくやった」

 私はセーフティーをロックしてホルスターに素早く銃をしまった。
 ホーンラビットにはかわいそうだが今日の晩御飯になってもらう事にした。
 私は猟師の娘なので捌き方は父に一通り教え込まれている。
 今回はカレンさんが捌いてくれたが、私も自分で捌けるようになりたい。

 その後もスライムやらホーンラビットを何体も倒した。
 その度にみんなの実力を見るために代わる代わる戦った。
 カレンさんは大剣で、カイは拳で、セラフさんは魔法で、私は銃。
 連携をするにもお互いの戦い方が分からなければ出来ない。
 
 そうしている内にキャンプ場に着いていた。

「よし、今日はここにテントを張ろう」

「はい」

 私達はテントを張り、火を焚いた。
 今日の晩御飯は、ホーンラビットの肉と根菜のシチューだ。慣れた手付きえ料理をするカレンさんにそれを手伝うセラフさん。
やっぱり冒険慣れしているんだなと思った。
私も今回の旅で成長出来たらいいな、冒険者としても、人間としても。

 焚き火を囲んで食事を楽しんだ後は思い思いに過ごした。セラフさんはヒューゴの卵を胸に抱いてまるで赤ちゃんをあやす様にしているし、カレンさんは武器の手入れを、カイはぼぉーと炎を見つめているだけだった。私も軽く銃の手入れをした、焚き火の明るさでは分解しての本格的な手入れは難しいからだ。

「セラフさん、ヒューゴの卵はどうですか?」

「順調ですよ、最近は殻を中から叩く音も増えてきてますから、もうじき孵化するんじゃないでしょうか?」

「それは楽しみだな」

「俺は面倒見るのはごめんだぜ」

「カイに面倒見られるのはヒューゴも嫌だと思うけどね」

「確かに、だいぶ嫌われていたからな」

 談笑しながらも夜は更けていき、寝る時間になった。このキャンプ場は周りにモンスター避けの結界が張ってあるのでモンスターに寝込みを襲われる心配はないし、ここらへんは盗賊も出ないらしいので安心して眠れそうだ。

◆◆◆◆◆

 鳥の囀ずりで目を覚ました。テントから出るとまだ朝霧に包まれていて少し肌寒さを感じた。
カレンさんが先に起きていて、火を焚いているところだった。
「おはようございます」

「おはよう、アリシア。よく眠れたか?」

「はい、ぐっすりです」

「それはよかった。セラフ達を起こしてきてくれ」

「はい」

 カレンさんに言われた通りにカイとセラフさんを起こそうとテントに向かうと、セラフさんがちょうどテントからのそのそと出てくるところだった。

「おはようございます」

「おはようございます、アリシアさん」

「カイはまだ寝てますか?」

「はい、ぐっすりと」

テントに入るとカイが寝袋にくるまって寝息をたてていた。そういえばカイの寝顔を見るのは初めてだ。こうみるとやっぱり子どもだよな。キスだって出来てしまえるほどの無防備な寝顔だなと思った。いや思ってしまった。
なんでそんな事思ったのか分からないままに、カイの体を乱暴に揺らして起こした。

「もっとロマンティックに起こしてくれよ、目覚めのキスとかでさ」

「キ……キス!? そんなのするわけないでしょ!!」

 思わずキスという言葉に過剰に反応してしまった。私は全部カイ寝顔を見たせいだと思って、カイを何回も叩いた。

「カイのバカ!!」

 そうしてテントから飛び出した。

「アリシア、ごめんよ。許してくれよ」

カイがそう言ってのそのそとテントから出てくるのを私は無視した。私が何故そんなに怒ったのかまったく分からないといった風にカイは私の後を付いて回った。いい加減うざいので許すことにした。

「もう分かったから、顔でも洗ってきなよ」

「ありがとう、アリシア」

 カイは私の機嫌がやっと直ったとほっとした顔をしていた。そして近くの沢に顔を洗いに行った。

「朝から仲がいいですね」

セラフさんがのほほんとした笑顔で言った。私は何故だか恥ずかしくなってしまって顔を赤らめた。

「そ……そんな事ないですよ」

 こんな事は日常茶飯事で、気にする事もないはずなのに何故だか今は気になってしまう。今まで見たことのないカイの寝顔を見たせいだ、そう思い当たった、けどだからって何だっていうんだろう?私は混乱の中にいた。そうして考えるのをやめた。考えてもしょうがない事を考えるのはやめよう。私は平常心を取り戻した。

「もうそろそろ朝食が出来るぞ」

「は~い」

 朝食は簡単なスープとパンだった。
それでもカレンさんの料理の腕は確かで、昨日のシチューといい本当に美味しいスープだった。
絶対いいお嫁さんになれる、そう思ったけど口に出すのはやめた。そんな事言ったらカレンさんが恥ずかしがって料理をしないなんて言い出しかねないからだ。

 それからこれからの道程を確認した。2、3つの町を越えたら、とうとう国境越えだ。それまでは比較的安全な道が多いので、歩きでも問題はないらしい。それでも天候やら体調やらで馬車を利用する事も考えるということだ。

 ここから次の町へは徒歩でも午後には着けるそうなので、今夜は宿で寝ることが出来そうだ、野宿も嫌いじゃないけどやっぱりベッドでの方がよく眠れるし疲れも取れる。

 私達はテントを畳み、火を消して、キャンプ場を後にした。街道に出るとまた次の町を目指して歩き出した。
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