【完結】乙女ゲー世界の悪役令嬢に転生したけど、推しの笑顔のためなら悪役でもいいの

いっぺいちゃん

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第47話 告白前夜

残党の陰謀は潰えた。
 アリスは堂々と講義に出席し、友人たちに囲まれて笑顔を見せている。
 学園の空気も、ようやく平穏を取り戻した――表向きは。

 だが、私の心は静まらなかった。
 仮面の令嬢として立ち回り続けたこの数か月。
 推しの笑顔を守るという目的は果たせた。
 けれど、もう一つの問いが、胸を掴んで離さない。

(……私は、彩香としての“想い”を、ミシェルに告げるべきなのか?)

◇ ◇ ◇

 夜のローゼンベルク邸。
 机の上には何冊ものノートが積まれている。
 “アリス死亡ルート回避策”から始まり、“クラリッサ対策”“秘薬調合メモ”と続く記録。
 その最後のページだけが、まだ空白のままだった。

 ペンを握る手が震える。
 そこに書きたい言葉は決まっている。
 けれど、書けば――逃げられなくなる。

「……ミシェル。あなたが好き」

 呟いた瞬間、胸が熱くなった。
 彩香としての想いが、クリスティナの仮面を突き破ろうとしている。

◇ ◇ ◇

 翌日。
 学園の中庭で、アリスが私に駆け寄ってきた。

「クリスティナ様! 聞いてください。私、春の合唱祭に出演することになったんです」
「合唱祭……?」
「はい。これまで病気を理由に遠ざかってきた舞台。……でも、今は挑みたいんです」

 頬を紅潮させるアリス。
 その瞳は、弱さを克服した少女のものだった。
 私は一瞬、言葉を失い、それから笑った。

「立派ね。……これで未来は完全に変わる」

 アリスはきょとんとした顔をしたが、やがてにっこりと笑った。

◇ ◇ ◇

 夕暮れ。
 学園の図書室で、ミシェルが声をかけてきた。
「クリスティナ。明日の放課後、時間をくれないか」
「……理由は?」
「大事な話がある。ずっと言えなかったことだ」

 彼の真剣な眼差しに、心臓が大きく跳ねる。
 ――明日。
 運命が動く。

◇ ◇ ◇

 夜、私はノートの最終ページを開いた。

“推しの笑顔は守られた。未来は変わった。
 残された課題――私自身の想い。
 ミシェルに仮面を脱いで告げるか否か”

 そして、端にいつもの言葉。

――“推しの笑顔至上主義”。

(明日。私は選ぶ。
 悪役令嬢の仮面を脱ぎ、彩香として、彼の隣に立つ未来を――)

 蝋燭の炎が揺れ、部屋の影が大きく伸びていった。
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