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第48話 運命の告白
放課後の鐘が鳴る。
学園の喧騒が遠ざかり、廊下には静けさが満ちていた。
私はミシェルに導かれ、中庭の奥へと歩む。
噴水の水音が、胸の高鳴りを隠してくれることを願った。
(……来てしまった。ここで、全てが決まる)
◇ ◇ ◇
夕暮れの光が差し込む。
噴水の前で立ち止まり、ミシェルが振り返る。
その横顔は、幼い頃から見慣れていたはずなのに――今はもう、別の意味を持つ。
「クリスティナ」
「……何かしら」
私の声は震えていた。
彼は少し息を整え、真剣な眼差しを向ける。
「ずっと思っていた。
君は仮面を被っているように見える。冷たく、誰も寄せ付けないように振る舞う。
でも、本当の君は違う。……僕は知っている」
心臓を掴まれたように息が詰まる。
彼の言葉は、私の中の“彩香”を照らしてしまう。
「アリスを救ったのも、残党の陰謀を暴いたのも。
君は、自分の立場を捨ててでも、誰かの笑顔を守ろうとした。
――そんな君に、僕は惹かれている」
◇ ◇ ◇
喉が熱くなり、目の奥が滲む。
悪役令嬢として、推しの笑顔を守るために戦ってきた。
その道を見抜かれ、肯定されることなど――想像もしていなかった。
「……ミシェル」
扇を閉じ、私は震える手で胸に押し当てる。
「もし、真実を告げたら……あなたは、私の味方でいてくれるの?」
彼は一歩近づき、迷いなく答えた。
「もちろんだ。君がどんな過去を背負っていても、どんな未来を望んでいても――僕は君を選ぶ」
その言葉が、仮面を砕いた。
◇ ◇ ◇
私は深く息を吸い、全てを吐き出す。
「私は……悪役令嬢として生きることを選んだ。
推しの笑顔を守るために、嫌われ役でも、誤解されても構わなかった。
でも、それは――あなたを守りたかったから」
ミシェルの瞳が大きく見開かれる。
そして、すぐに柔らかな光が宿る。
「ありがとう、クリスティナ。……いや、君自身に」
その瞬間、私は涙を零した。
彩香としての心が、クリスティナの姿で解放された。
◇ ◇ ◇
夜。ノートの最終ページに記す。
“告白は終わった。仮面は砕けた。
彼は、私を選んでくれた。
――推しの笑顔を守る物語は、私自身の物語でもあった”
そして最後に、いつもの言葉を。
――“推しの笑顔至上主義”。
(けれど、もう一つ加えましょう。
“私の笑顔も、大切にしていい”と)
蝋燭の灯りの下で、涙が乾くのを待ちながら、私は静かに微笑んだ。
学園の喧騒が遠ざかり、廊下には静けさが満ちていた。
私はミシェルに導かれ、中庭の奥へと歩む。
噴水の水音が、胸の高鳴りを隠してくれることを願った。
(……来てしまった。ここで、全てが決まる)
◇ ◇ ◇
夕暮れの光が差し込む。
噴水の前で立ち止まり、ミシェルが振り返る。
その横顔は、幼い頃から見慣れていたはずなのに――今はもう、別の意味を持つ。
「クリスティナ」
「……何かしら」
私の声は震えていた。
彼は少し息を整え、真剣な眼差しを向ける。
「ずっと思っていた。
君は仮面を被っているように見える。冷たく、誰も寄せ付けないように振る舞う。
でも、本当の君は違う。……僕は知っている」
心臓を掴まれたように息が詰まる。
彼の言葉は、私の中の“彩香”を照らしてしまう。
「アリスを救ったのも、残党の陰謀を暴いたのも。
君は、自分の立場を捨ててでも、誰かの笑顔を守ろうとした。
――そんな君に、僕は惹かれている」
◇ ◇ ◇
喉が熱くなり、目の奥が滲む。
悪役令嬢として、推しの笑顔を守るために戦ってきた。
その道を見抜かれ、肯定されることなど――想像もしていなかった。
「……ミシェル」
扇を閉じ、私は震える手で胸に押し当てる。
「もし、真実を告げたら……あなたは、私の味方でいてくれるの?」
彼は一歩近づき、迷いなく答えた。
「もちろんだ。君がどんな過去を背負っていても、どんな未来を望んでいても――僕は君を選ぶ」
その言葉が、仮面を砕いた。
◇ ◇ ◇
私は深く息を吸い、全てを吐き出す。
「私は……悪役令嬢として生きることを選んだ。
推しの笑顔を守るために、嫌われ役でも、誤解されても構わなかった。
でも、それは――あなたを守りたかったから」
ミシェルの瞳が大きく見開かれる。
そして、すぐに柔らかな光が宿る。
「ありがとう、クリスティナ。……いや、君自身に」
その瞬間、私は涙を零した。
彩香としての心が、クリスティナの姿で解放された。
◇ ◇ ◇
夜。ノートの最終ページに記す。
“告白は終わった。仮面は砕けた。
彼は、私を選んでくれた。
――推しの笑顔を守る物語は、私自身の物語でもあった”
そして最後に、いつもの言葉を。
――“推しの笑顔至上主義”。
(けれど、もう一つ加えましょう。
“私の笑顔も、大切にしていい”と)
蝋燭の灯りの下で、涙が乾くのを待ちながら、私は静かに微笑んだ。
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