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第17話 報復の影
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王都から戻った舟が館に到着したのは、夜も更けたころだった。
荷を降ろす前に、使者として同行していた若い村人が駆け込んできた。
「お嬢様! 大変です!」
彼は肩で息をしながら言った。
「王都商人ギルドが……ルクスベリーの販売を“禁止すべきだ”と訴えてます!」
広間にどよめきが走った。
ノラが顔を青ざめさせる。
「禁止……? どうして……せっかく売れたのに」
「……理由は簡単です」
マリエールは静かに答えた。
「彼らが“恐れた”から。辺境の小さな果実が、自分たちの利権を脅かすと」
◇ ◇ ◇
翌朝。
王都からの正式な通達が届いた。
羊皮紙に記された文字は冷徹だった。
『辺境特産品“ルクスベリー”の取引は違法と見なす。
理由:品質不明、偽装の恐れあり。
違反者は商人ギルドより処罰を受けることとする』
村人たちの顔に絶望が広がる。
「違法って……あんまりだ!」
「じゃあ俺たちが作った瓶はどうなるんだ!」
ノラは不安げにマリエールを見た。
「お嬢様……このままでは本当に、商いが潰されてしまいます」
◇ ◇ ◇
マリエールは机に向かい、帳面を開いた。
静かにペンを走らせる。
――「王都ギルド=圧力」
――「理由:品質不明」
――「対策:品質の保証、証拠の提示」
「彼らの狙いは“恐怖”です」
彼女は村人たちに告げた。
「“偽物かもしれない”と人々に思わせれば、私たちの商品は売れなくなる。
けれど――それを逆手に取りましょう」
「逆手に……?」
「ええ。“品質保証”を作ればいい。
誰もが安心して手に取れる印を、私たち自身の手で生み出すのです」
トマスが驚きに目を見開いた。
「嬢様、それはつまり……“辺境独自の認可印”を?」
「そう。ギルドが拒むなら、私たちが自分の“規格”を立ち上げればいい。
それはきっと、王都よりも誠実で確かな証になるはず」
◇ ◇ ◇
夜。
窓辺に立ったマリエールは、鈴の花を見つめながら呟いた。
「必要ないと言われた私が、今度は“必要な証”を作る番……」
月明かりに揺れる花影は、まるで彼女に頷くようだった。
荷を降ろす前に、使者として同行していた若い村人が駆け込んできた。
「お嬢様! 大変です!」
彼は肩で息をしながら言った。
「王都商人ギルドが……ルクスベリーの販売を“禁止すべきだ”と訴えてます!」
広間にどよめきが走った。
ノラが顔を青ざめさせる。
「禁止……? どうして……せっかく売れたのに」
「……理由は簡単です」
マリエールは静かに答えた。
「彼らが“恐れた”から。辺境の小さな果実が、自分たちの利権を脅かすと」
◇ ◇ ◇
翌朝。
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羊皮紙に記された文字は冷徹だった。
『辺境特産品“ルクスベリー”の取引は違法と見なす。
理由:品質不明、偽装の恐れあり。
違反者は商人ギルドより処罰を受けることとする』
村人たちの顔に絶望が広がる。
「違法って……あんまりだ!」
「じゃあ俺たちが作った瓶はどうなるんだ!」
ノラは不安げにマリエールを見た。
「お嬢様……このままでは本当に、商いが潰されてしまいます」
◇ ◇ ◇
マリエールは机に向かい、帳面を開いた。
静かにペンを走らせる。
――「王都ギルド=圧力」
――「理由:品質不明」
――「対策:品質の保証、証拠の提示」
「彼らの狙いは“恐怖”です」
彼女は村人たちに告げた。
「“偽物かもしれない”と人々に思わせれば、私たちの商品は売れなくなる。
けれど――それを逆手に取りましょう」
「逆手に……?」
「ええ。“品質保証”を作ればいい。
誰もが安心して手に取れる印を、私たち自身の手で生み出すのです」
トマスが驚きに目を見開いた。
「嬢様、それはつまり……“辺境独自の認可印”を?」
「そう。ギルドが拒むなら、私たちが自分の“規格”を立ち上げればいい。
それはきっと、王都よりも誠実で確かな証になるはず」
◇ ◇ ◇
夜。
窓辺に立ったマリエールは、鈴の花を見つめながら呟いた。
「必要ないと言われた私が、今度は“必要な証”を作る番……」
月明かりに揺れる花影は、まるで彼女に頷くようだった。
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2024年12月追記
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