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第49話 対等の条件
辺境の館・応接間。
深紅の絨毯が敷かれ、鈴の花を活けた花瓶が卓上に飾られている。
その席に、隣国グラディエルの王子が姿を現した。
蒼の瞳は穏やかに輝いていたが、その奥には王族特有の威圧感が潜んでいた。
マリエールは正面に座り、帳面を机に置いた。
「本日はお越しくださり、ありがとうございます」
王子は柔らかく微笑んだ。
「こちらこそ。
議会での貴女の姿を拝見し、ますます確信しました。
辺境商会は、我が国にとっても価値ある存在だと」
◇ ◇ ◇
ワインが注がれ、静かな空気の中で本題が切り出された。
王子はゆるやかに言葉を紡ぐ。
「私は、貴女と貴女の商会に“庇護”を与えたい。
その代わりに、我が国との独占的な交易権を結ぶ。
互いに利益があるはずです」
その言葉に、ジークフリートが眉をひそめ、カティアが鋭い視線を送る。
しかしマリエールは表情を崩さず、淡々と帳面をめくった。
「庇護と独占、ですか。
――つまり私たちが隣国に従属し、他国との自由な取引を断つということですね」
王子の笑みが一瞬止まる。
「……表現を変えれば、そうなるかもしれません」
マリエールは帳面に線を引き、項目を記した。
――「利点:安全保障」
――「欠点:自由の喪失、王都からの疑念」
「失礼ながら、それは受け入れられません」
灰色の瞳が鋭く光る。
「辺境商会は“独立”が前提。
従属は、辺境の人々を再び貧困へと追いやるだけです」
◇ ◇ ◇
応接間に重い沈黙が落ちた。
ジークフリートの手は剣の柄に触れ、カティアの視線は矢のように尖る。
寡黙な大剣の男は無言で立ち、巨大な影を壁に落としていた。
しかし王子は、やがて微笑みを取り戻した。
「……やはり、そう答えると思っていました。
だからこそ私は、対等の交渉を望むのです」
◇ ◇ ◇
マリエールが目を瞬かせる。
「対等……?」
王子は深く頷いた。
「庇護ではなく“同盟”を。
私が望むのは従属ではない。
共に未来を築く、対等の絆です」
その言葉に、仲間たちの緊張がわずかに緩んだ。
マリエールは帳面に新たな文字を記す。
――「提案修正:同盟」
――「条件:辺境と人々の利益優先」
「……よろしいでしょう。
ただし、今ここで即答はできません。
商会と人々のために、あらゆる条件を精査しなければならないのです」
王子は満足そうに微笑んだ。
「それでいい。答えを急ぐつもりはない。
大切なのは――私が本気であると知っていただくことです」
◇ ◇ ◇
応接間に流れる鈴の花の香り。
その中で、二人の間に新たな火花が生まれた。
従属か同盟か――未来を決する交渉は、ここから始まろうとしていた。
深紅の絨毯が敷かれ、鈴の花を活けた花瓶が卓上に飾られている。
その席に、隣国グラディエルの王子が姿を現した。
蒼の瞳は穏やかに輝いていたが、その奥には王族特有の威圧感が潜んでいた。
マリエールは正面に座り、帳面を机に置いた。
「本日はお越しくださり、ありがとうございます」
王子は柔らかく微笑んだ。
「こちらこそ。
議会での貴女の姿を拝見し、ますます確信しました。
辺境商会は、我が国にとっても価値ある存在だと」
◇ ◇ ◇
ワインが注がれ、静かな空気の中で本題が切り出された。
王子はゆるやかに言葉を紡ぐ。
「私は、貴女と貴女の商会に“庇護”を与えたい。
その代わりに、我が国との独占的な交易権を結ぶ。
互いに利益があるはずです」
その言葉に、ジークフリートが眉をひそめ、カティアが鋭い視線を送る。
しかしマリエールは表情を崩さず、淡々と帳面をめくった。
「庇護と独占、ですか。
――つまり私たちが隣国に従属し、他国との自由な取引を断つということですね」
王子の笑みが一瞬止まる。
「……表現を変えれば、そうなるかもしれません」
マリエールは帳面に線を引き、項目を記した。
――「利点:安全保障」
――「欠点:自由の喪失、王都からの疑念」
「失礼ながら、それは受け入れられません」
灰色の瞳が鋭く光る。
「辺境商会は“独立”が前提。
従属は、辺境の人々を再び貧困へと追いやるだけです」
◇ ◇ ◇
応接間に重い沈黙が落ちた。
ジークフリートの手は剣の柄に触れ、カティアの視線は矢のように尖る。
寡黙な大剣の男は無言で立ち、巨大な影を壁に落としていた。
しかし王子は、やがて微笑みを取り戻した。
「……やはり、そう答えると思っていました。
だからこそ私は、対等の交渉を望むのです」
◇ ◇ ◇
マリエールが目を瞬かせる。
「対等……?」
王子は深く頷いた。
「庇護ではなく“同盟”を。
私が望むのは従属ではない。
共に未来を築く、対等の絆です」
その言葉に、仲間たちの緊張がわずかに緩んだ。
マリエールは帳面に新たな文字を記す。
――「提案修正:同盟」
――「条件:辺境と人々の利益優先」
「……よろしいでしょう。
ただし、今ここで即答はできません。
商会と人々のために、あらゆる条件を精査しなければならないのです」
王子は満足そうに微笑んだ。
「それでいい。答えを急ぐつもりはない。
大切なのは――私が本気であると知っていただくことです」
◇ ◇ ◇
応接間に流れる鈴の花の香り。
その中で、二人の間に新たな火花が生まれた。
従属か同盟か――未来を決する交渉は、ここから始まろうとしていた。
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