【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん

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第54話 冷たい石畳の都

長い道のりを越え、王都の高い城壁が視界に現れた。
鈴の花を掲げた馬車の列に、護衛たちが緊張を走らせる。

ノラが窓越しに街並みを見つめ、声を潜めた。
「……お嬢様、あんなに立派なのに……人々の顔は……」

石畳の大通り。
沿道に集まった群衆の表情は辺境とは対照的だった。
無言で腕を組み、疑いの色を浮かべる者。
囁き合いながら指をさす婦人たち。
「商会の女主人が、王都を揺るがすだなんて」
「逆賊だって噂もあるのに」

その冷たい視線に、ノラは小さく身を竦ませた。

◇ ◇ ◇

だがマリエールは帳面を開き、冷静に記した。
――「王都=冷遇」
――「世論:不安と疑念」
――「課題:信頼回復」

「……想定内です。
辺境で得られた信頼は、まだ王都には届いていませんから」

灰色の瞳には怯えではなく、研ぎ澄まされた光が宿っていた。

◇ ◇ ◇

城門を抜けると、鎧姿の兵士たちが列を成して待ち構えていた。
指揮官らしき男が無表情に告げる。
「マリエール=ド=ヴィエル嬢。
王都議会への召喚に応じたこと、確かに確認した。
以後の行動は我らが監視する。勝手は許されぬ」

ジークフリートが反発しかけるが、王子が静かに手を上げて制した。
蒼の瞳で兵士を見据え、冷ややかに言う。
「……隣国の王子が同席していることをお忘れなく。
彼女に対する扱いは、そのまま国際関係に響く」

兵士たちの顔色がわずかに変わり、押し黙った。

◇ ◇ ◇

王都の街路を進む馬車。
見上げれば、白亜の宮殿と高い尖塔が空を切り裂いている。
その美しさの裏に潜む冷酷な権力を、マリエールはひしひしと感じ取った。

「ここが……最も難しい舞台」
帳面に震える手で記す。
――「王都=権威と敵意」

◇ ◇ ◇

馬車が止まった先は、王都議会の広大な議事堂。
石造りの巨大な扉の前に立ち並ぶ重臣たち。
彼らの瞳は氷のように冷たく、辺境の令嬢を値踏みしていた。

ノラが小声で震える。
「お嬢様……」

だがマリエールは背筋を伸ばし、灰色の瞳をまっすぐ前へ向けた。
「大丈夫。
辺境で守った人々の声を、この都にも響かせてみせる」

王子がその横に立ち、囁いた。
「私も共に立ちます。……どうか恐れずに」

マリエールは頷き、冷たい石畳を一歩踏み出した。
その足音は、やがて王都全体に鳴り響く戦いの始まりを告げるようだった。
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