【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん

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第82話 王宮の裁定

朝霧が薄く漂う王都。
大理石の回廊に、鎧の音が静かに響いていた。
その中央を進むのは、灰色の瞳を持つ一人の令嬢――
辺境商会当主、マリエール=ド=ヴィエル。

彼女の隣には、蒼いマントを翻す隣国の王子が歩く。
その姿を見て、廷臣たちのざわめきが広がった。

「まさか辺境の娘が、王宮に招かれるとは……」
「いや、今や彼女の商会は国の経済を支えている。無視できん」

マリエールはそれらの声に一切反応せず、静かに歩みを進めた。
手には、前夜押収した“偽造帳簿”が抱かれている。

◇ ◇ ◇

王宮の玉座の間。
朝日がステンドグラスを透かして床に色を落とす。
そこに座す国王の視線が、マリエールを見据えていた。

「ヴィエル嬢。
そなたの報告、確かに受け取った。
――評議会派が国庫を欺き、偽造取引で私腹を肥やしていたと」

マリエールは一歩前に進み、帳簿を献上する。
「はい。証拠はこの通りです。
金貨の流れ、虚偽の取引記録、そして署名。
いずれも、ミルドラン卿を筆頭とする評議会派の者たちによるものです」

ざわめきが走る。
廷臣の一人が叫ぶ。
「そ、そんな馬鹿な! そのようなこと――!」

しかし、王子が一歩前に出た。
「馬鹿なことではありません。
私は現場でそれをこの目で見た。
辺境商会の名を騙り、国の信頼を売り渡した卑劣な犯罪です」

静寂が落ちる。
国王は深く息を吐き、杖を床に打ち鳴らした。

「――評議会派の者ども、前へ」

◇ ◇ ◇

呼び出された数名の貴族が、蒼白な顔で前に進み出る。
その中には、ミルドラン卿の姿もあった。
彼はなお、強がるように笑う。

「たかが子爵令嬢が……王宮の決定に口を出すとは、滑稽なものだ」

マリエールは静かに微笑む。
「滑稽なのは、真実を軽んじたあなたのほうですわ。
“商”は誠実であるがゆえに価値を持つ。
それを忘れた瞬間に、あなたたちは自ら破滅を選んだのです」

ミルドランの顔が歪む。
「貴様……っ!」

王子が鋭く睨んだ。
「口を慎め。
いま貴様が立っているのは“告発される側”だ」

◇ ◇ ◇

王の声が響いた。
「ミルドラン卿、並びに評議会派の者たち。
これまで辺境商会および国庫を不正に操作した罪により――
爵位剥奪、財産没収、遠方への追放を命ずる」

廷臣たちがどよめく。
マリエールは深く頭を垂れた。
「陛下のご決断に、感謝いたします」

国王は続ける。
「そして――マリエール=ド=ヴィエル。
そなたの知恵と誠実な働きにより、国は再び立ち上がった。
ゆえに褒賞として、“辺境公”の称号を授ける」

会場が一瞬、静まり返った。
ノラが思わず小声で呟く。
「お、お嬢……いえ、公爵様……!」

マリエールは小さく首を振る。
「私は変わりません。
辺境の民と共に在る――ただ、それだけです」

◇ ◇ ◇

儀礼を終え、謁見の間を後にした廊下で、王子が微笑む。
「……これで一つの時代が終わりましたね」

マリエールは頷いた。
「でも、次の時代を創るのはここから。
信頼を繋ぎ、国を再び“誠実な商”の上に立たせるために」

「そのとき、私もあなたの隣にいられますか?」

マリエールは微笑を浮かべる。
「ええ。あなたが約束を守れるなら」

二人の間に、朝の光が差し込んだ。
まるで、新しい未来を照らすように。
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