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親と子の対談 一
しおりを挟む二人の姿が慌ただしく廊下に消え、パタン、と扉が閉まる。はしゃぐソルシエールの賑やかな声と、時折相槌を打っているのか、ぽつりと応答するキリエの耳に心地よい声が遠退いていく。
尾を引く余韻すら聞こえなくなると、部屋に残ったのは親子間に漂う重い雰囲気と沈黙だけだ。
優雅な仕草で冷めた紅茶を口に含む国王──母の顔は、キリエの姿が見えなくなった瞬間に表情をすべて脱ぎ落とし、真顔と化していた。向き合うアルシュも同様だ。年齢の差を差し引けば、まるで互いが鏡に向き合っているように見える。
カップを受け皿に戻す音が鳴る。小さく、耳を澄まさなければ聞き取りにくいはずのそれがやけに響いて聞こえるのは、それだけ部屋の中が静まり返っているせいだ。
「さて。婚約パーティーの詳細、改めて詳しく聞かせてもらおうか」
「……キリエに対してあんな処遇ができるくらいだ。すでにリンから聞いているだろう」
「第三者と当事者の話は別だ。片方のみを聞いて情報を鵜呑みにするほど、私が愚かだと思うか?」
「……」
射殺すような鋭く冷たい視線。アルシュは内心で肩をすくめた。
近年稀に見る激怒具合だ。温厚な賢王で知られる母は、しかし懐に入れた者に向けられる理不尽な仕打ちを厭う。
母はキリエに対して本当の子供のように、実子のアルシュ以上に可愛がっている。どれだけ溺愛しているかは、あのトンデモ権利証で片鱗を垣間見たことだろう。
「『光の乙女』が他の男にうつつを抜かしてキリエに婚約破棄を叩きつけた。破棄の理由と誹謗中傷を真に受けたカルブンクルス国王が、その場でキリエに牢に入れと命じた。キリエが自害しかけたから攫ってきた。以上」
「詳しく、と言ったはずだが」
「これ以上にどう詳しく言えと……」
アルシュはあまり、過去の状況を説明するのが得意ではなかった。喉元過ぎれば、ということわざのように、あまり終わったことを気に留めない。
「……まあいいだろう。ならいくつかの質問に答えろ」
ある意味過去を引きずらない子の性格を熟知している母は深くため息を吐いた。
「一つ。クレド王は、お前の言い分を聞いた上でキリエ王子を罪有りと見做したか?」
「……いや。キリエの主張もまともに聞こうとはしなかった」
昨日の記憶をなぞる。
アルシュの場合はただ発言する間がなかっただけだが、キリエは兄に向けて一度疑惑を否定しようとした。しかし彼は聞く耳を持たず、エメの側についた。
「周囲の人間はどうだったか?」
「最初は半信半疑だったが、最終的には全員エメの言葉を信じた」
あの時のキリエは、孤立無援に等しい絶望を味わっていたことだろう。自害の衝動に駆られるほどに。
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