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14・藍の過去と、葵の未来と…
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藍達は、取り付けたホテルに向かう車の中にいた。事情聴取を近くの警察署で行った事で、藍の事務所兼自宅の最寄り駅の終電時間に間に合わない為である。
「あんな事は結構あるのか?」
「年に一度くらいかな?」
冷静に答える藍に白井は言葉を詰まらせる。
「一応、今回で五回目だ。さすがにその位になると勘が働く」
「今回の件が?」
「良くあるんだよ。ヒトを追い詰める親や周囲の人間ってのが」
皮肉気味な笑みを見せる藍。
「本人の能力のキャパをオーバーさせる期待を与える奴らが」
「…それは、お前の両親とか…?」
「それは、お前が言うべきことじゃないぞ」
「実家、帰ってないんだろ?」
「だからって、出来る時は、仕送りはしている」
「無理して捻出してるんじゃないか?」
「残しても、使い道がないからな」
「それは老い先短い者の台詞だ」
「何だよ?あたしの金でも狙っているのか?それともマルサにチクるか?」
「そんな事しねぇよ」
会話が途切れる。
「言いたい事があるなら、吐き出せ」
「じゃあ、言わせてもらうが…」
諦めた様な溜め息を、白井が吐くと、
「お前、痩せたか?」
「…止めろよ…褒めても…」
「褒めてねぇよ‼」
「ダイエットの成果が…」
「いつから始めてんだよ⁈大学卒業してからだろ⁈」
「成果が出てねぇんだから…」
「瘦せ過ぎだ」
「…そうでもないさ…」
「今の体重は?」
「プライバシーに抵触します」
「お前の顔の脂肪率はどうやって調節している?」
「ノーコメント」
「…未だに自殺は考えているのか?」
「…ああ…」
「…ったく、栄養失調の自殺なんて、気の長い話だな…」
「仕方がないだろ?あたしには自殺防止の強力な暗示が掛かっているんだから」
「全人類、等しく掛けられているだろ?」
「あたし達、飛び級組は特にだよ」
藍の話では、特別に知能が発達した者特有の感性の中に、自身の早逝を望む者が、一般教育を受けた者よりも多い傾向にあるらしく、そう言った者の中にはワザと教育中の自殺防止暗示を外す者がいるらしい。こういった事態を防ぐ為に、飛び級教育受講者には一定期間、指定の映像視聴が義務付けられている。もっとも内容は、誰もが楽しめる娯楽作品で、それこそ『青い不死鳥の物語』の場合もある。が、従来の作品と違ったノイズや微妙に加工された画像で、それが特殊教育用の加工作品であると気付く者もいるが、何の教育用か?までは気付かされないまま、無意識に植え付けられる…ただし、自殺防止効果を消す可能性のある者には、保護者を巻き込んだ自殺防止教育が施され、目に映る物、聞こえて来る音から、味覚、嗅覚、触覚に至るまで『自死』を拒絶させる暗示が掛けられる。
「ある種、歪な教育だよ」
「お前も受けたのか?」
「持ってた物がいきなり替わるんだぜ?どれだけあたしが使っていた様に、精巧に見せても、あたしの『現在視』は誤魔化せないから親を問い詰めたんだ」
「…ご両親は話したのか…?」
「いや。それなりの金額が通帳に振り込まれていたから、深く詰めるのは止めた」
「英断だな」
「だから、寂しくない様に仕送りはしている」
「お前、それ…」
「意趣返しして、何が悪い?ウチの親がどれ程、あたしの未知の可能性を守る為に抵抗したか知らんが、結果として、あたしの命を守ったんだ。子に生きて欲しいと願うのは親の願いかも知れないが、あたしにあったかも知れない別の可能性を、あたしの親は潰したんだぞ。しかも、要求したか謝礼としてかは知らんが、金まで貰っている」
「それが許せないのか?だから栄養失調で死ぬのか?」
…アツ語りの白井の言葉に、藍は一息つくと、
「部長が死んだ」
「え?」
「生命維持装置の維持費が払えなくなったらしい」
淡々と語る藍がスマホを操作し、一通のメール画面を開く。
「多分、お前の方にも行ってると思うが…」
白井が車の運転を『運転手操作』から『自動』に切り替えて、藍のスマホ画面を見る。
弔事用の黒枠メールに、死亡日時と斎場の案内のテンプレートなお悔み文面…
「葬式に行ったのか?」
葬儀の日時がかなり経過している。
「あたしも忙しくてな…返信のお悔みメールと少額だがお布施を送った程度だ」
と、藍が白井からスマホを取り返す。
「あたしは、部長の様な死に方も、病気で死ぬ事を望んでいない」
「お前、それは…」
「お前が、あたしの願いを聞かないからこういう死に方を選んでいるんだ」
「そんな事、俺が出来るわけが‼」
「お前にとって、あたしは大学時代からの警護対象だからだろ?」
「‼」
言葉を詰まらせる白井。
「今更、何処の所属とか聞かないよ。だが、あたしは未だに諦めてないからな」
「…止めろ…」
「お前以外いないんだよ。身の回りで…」
「例え、そうでも…」
「念動力で、生きている人体をバラバラに出来るのは」
…言い切った藍の口元が、至上の笑みを見せる…
「だから、気が向いたら、あたしをバラバラにしてくれ」
だが、その瞳は寂しさが滲んでいて…
「頼むぞ」
藍の言葉と共に、沈黙のまま、二人を乗せた車はビジネスホテルに向かう。
…藍は飛び級用の特別講習とテレポーテーション研究の実験以外は一般教育用の学校に通っていた…自宅学習プログラムも選べたが、両親が通学教育を強く望んだ為、学校に通わされる事となった。ただし、飛び級先での藍の立ち位置は歓迎された待遇ではなかった。特に生徒間での扱われ方が酷く、陰湿で執拗ないじめに会っていた。それは彼女の『現在視』の千里眼の影響がある。教師陣からは千里眼のカンニングを疑われ、年上の生徒達からは生徒指導の先生達への点数稼ぎを疑われる…それは学校に持ち込み禁止とされている化粧品だったり、ゲームアプリのインストールコードを記したメモリーカードやセーブデータだったり、時にはタバコやお酒、錠剤の合成麻薬だったり…実際は濡れ衣だが、取り上げられた生徒達からは謂われのない報復を受ける。制服や体操着、持ち出し用タブレットの紛失は当たり前で、学年の登録簿から彼女の名前が消えていた事もある。「もうカンニングして飛び級したと思ってました」と心で嘲笑しながらも、表面上は悪気のない平然とした顔で訴える彼らに、教師は「以後はやるなよ」と言葉だけの注意…それでも折れずに、藍は高校までの教育を十一歳で終わらせ、大学の四年間を過ごす…いじめの事実を教育機関が知ったのは大学二年のアンケートの時…飛び級生の大学生活に関する大学側のアンケートのつもりだったが、『以前の学校生活と比べてどうですか?どの様に違うかの感想はありますか』と言う項目に、『身体的特徴をいじる者は何時現れるのか?壊されたタブレットは保障されるのか?知らない間に除籍扱いされていないか?』との、怯えた文章を綴った事が切っ掛けだった。藍にとっては思い切った告白で、大学側が藍の通っていた学校に抗議。破損したタブレットの代金は全額返金されたが、生徒や教師、学校からは謝罪が一切ない上に、人事にしても昇格こそあれ、降格や懲戒免職処分が一切ないまま…生徒にしても、いじめに関わったと思われる生徒達はこぞって有名進学校に合格しており、中には、藍の通う大学の付属学校に進学している者もいる始末…この事を信頼の置けるネットニュースサイトに投稿すると徹底的な取材が行われ、飛び級生受け入れ校の杜撰な実態が次々と明らかにされる事となった。ちなみに、アンケートを書く様に促したのが一般入試枠で入学した、『ブルふぇに』研究会の会長だった…ただ、何故か、彼女自身は『部長』と呼ぶ様に‼と強く主張していたが…
『部長』は藍とは同窓で、強引ながらも繊細な気遣いが出来る女性だった。出会いは入学式の桜吹雪の中…藍の高校まで着ていた制服姿に一目惚れし、周囲に居る藍の親を跳ね退け、藍のメガネを外したかと思うと、
「…鳳葵の再来じゃああああああああ‼」
と、誰に憚ることなく、声を張り上げ、思いっ切り周囲と藍を引かせていた…その後、何かにつけて藍に絡み、藍と、『部長』と同じ高校出身の同好の士、更に白井を加えて『ブルふぇに』同好会を設立。それと同時に藍は大学キャンパス内でセーラー服を着る事を強要される事となった。活動内容は学生の活動の域を超えるモノではなく、週に一度の『青い不死鳥の物語』内の一シーンの独自考察の発表と論評以外は、『青い不死鳥の物語』のキャラクターコスプレ撮影会…主に藍のセーラー服コスプレをメインとした撮影会が連日催された…ちなみに、この写真は投稿サイトに『リアル鳳葵光臨‼』と題しアップされ、初回映像がちょっぴりバズった…撮影会での白井は、藍の空中姿勢の撮影の為に、念動力で彼女を空中に固定する役割を果たし、細かな服の乱れや髪の流れなどは他の同好会員の助けを借りる事が多かったが、藍の下着を見せない為の撮影位置の調整やポーズ補正の為にも白井の念動力が活用される事となった。撮影…と言うかシャッターは『部長』の役割で一発シュートが基本。なので、ポーズや服の乱し方にギリギリの拘りを見せ、藍を空中で停滞させる事もしばしば…最初の内は黙って我慢していたが、年末頃に文句を言い出し、二年の夏に入った頃から、空中で寝る事もあった。ちなみに、この時、顔にいたずら描きされた寝顔写真が同好会で最高にバズった作品となった。
学生と言う身分を満喫した藍にも卒業が近付いていた。最後の思い出として、作者の弾丸旅行を模した撮影&卒業旅行が企画された。旅は順調に進み、南アメリカから帰国…『部長』が旅の始まりに言っていた「おウチに帰るまでが卒業旅行です‼」のお約束台詞の伏線を、まさか、回収するとは、誰も思っていなかった…
「きゃああああ‼」
武装テロリスト集団とあらかじめ配備されていたSATが衝突。銃撃戦が展開された。
入国ゲート付近で発生した事件に、数機の旅客機から降りた乗客がパニックに陥った。既に駐機場に戻った旅客機に戻ろうとする人の波に弾かれた藍達が、同じく取り残された乗客と共に、テロ集団が近付かない事を祈る…逃げ遅れた者は集団の圧力に転倒し踏まれた者が殆どで、その場で呻き声を上げつつ、寝転がっている…その時点での死者はいなかったが、同好会の一人が足を傷めた。後で判明したが、骨折していたらしい…だが、銃撃戦の発砲音が無情にも近付いて来る…やがて、一人のテロリストが一人の女性を盾にこちらに近付いて来る…後ろ向きに歩きつつ、女性を引き摺る彼はSATを数人引き連れていた。どう見てもテロリストが不利で、レーザー照準の赤い光がテロリストの頭部を数ヵ所当てているが、空間が歪んでいる様で、頭部周辺の五センチ程先で乱反射して、頭部そのものに届いていない。いわゆる物理障壁であると、白井が呟く…無言の膠着状態が十秒程…入国ゲート方向からテロリストと思われる人物の叫び声と共に爆発音が響き、藍達の居る辺りにもビリビリと振動が走る。その時点での藍達の立ち位置は、テロリストに一番近いのは白井、足を折った同好会員…『部長』と藍が抱き合い、白井の後ろに隠れていた。いや、隠れる位置に白井が付いていた。が、完璧ではなかった。
逃げきれないと観念したテロリストが最後の抵抗を見せる。それは『ある言葉』を発する事で発動する仕掛け。そう、超能力ではない機械的仕掛け。テロリストの全身に仕掛けられた爆薬が起爆。殺傷目的の鋲が爆散し、人質諸共、周囲に取り残された人々を貫く。
…その場で生き残っていたのは、障壁を展開していた白井とその背後に居た葵…『部長』も生きてはいた…ただテロリストが持っていた拳銃が頭部に直撃して動かない…この場で最も無力な自分と勇敢な二人…白井は障壁を展開した事で、今にも倒れそうだ…目の前で起こった出来事に呆然としていると、『部長』の頭にぶつかった拳銃が視界の隅に見える…それに手を伸ばし、拾い上げる…思った以上に熱い…
「何やってんだ⁈」
白井の声が響く。
「え?」
藍は拳銃の銃口を自らの頭部に向けていた。引き金に指を掛け、薄ら笑いを浮かべていたとは、白井から後で聞かされた…自殺抑止の暗示が解けていた…
藍にとって、思い出したくはないが、忘れてはいけない記憶だった。
『部長』は頭部に当たった拳銃の衝撃で植物状態に陥る。何度か見舞いに行ったが、変わる事なく眠ったままだった…逆恨みの自覚はあるが、白井を恨まずにはいられなかった。障壁の展開には特殊な訓練がいると白井自身が語っていた事から、彼が何処かの軍事組織の一員であると察知した…これは白井が藍に警戒心を持ってもらう為の情報操作のつもりだったが、白井の前で事件が起きてしまった事で彼の親密な立場での身辺警護が機能しなくなってしまった。その上、第一の警護対象である藍は守れたものの、『部長』を植物状態にしてしまった事は藍の信用を喪失させるのに充分だった。
藍は決まっていた財務省のアルバイトを蹴り、探偵事務所を設立。一緒に入省するはずだった白井がそのまま財務省に就職する事となった。ちなみに、藍がアルバイトなのは入省最低年齢の二十二歳に満ちていない為である。
藍が白井を邪険にするのはこういった事情があるからだが、決定的絶好宣言をしないのは彼の事情の酌んでの配慮でもあった。
ちなみに、藍の自殺衝動を抑える暗示は応急的に施された事で、自殺を含む自傷行動は身体が抑制してくれているが、精神的な自殺衝動は抑制されていない状態である。
やがて、二人を乗せた車はビジネスホテルに到着。チェックインの前に車だけ預け、近くのコンビニで、お互い今日の夕飯と明日の朝食を購入。これは白井からの指示で、バイキングやライブキッチンでの食事はしない様に厳しく詰められた。毒物摂取の危険性を排除する為の簡単な自衛手段と説得され、納得するしかなかった…その後二人はホテルに向かい、受付の従業員に白い目で見られながらもチェックイン。お互いの部屋へと向かう。
「人心地付いた~…」
ベッドに荷物と食事、それと自分の身体を投げ出し、藍は仰向けに大の字になる。程よい堅さが気持ちいいが、寝てはいけない。この系列のホテルは何度か利用しているので何処に何があるか?は把握している。まず、来ている服を脱ぎ、クローゼットに収納。そこから備え付けの部屋着を取り出し、バスルームへ…シャワーで身体を洗い、クレンジングで化粧を落とす。髪を手早く乾かし、部屋着に着替え、バスルームから出ると、ベッドに寝そべりながら、スマホで依頼がないかのチェック…ついでに今日の事件が報道に挙げられているかのチェックも入れる…不謹慎だが、営業活動として有効だから…『興信所の依頼で捜索』などと書かれれば、検索して仕事を依頼する人物が現れる可能性がある…見出しの画面には『合州国』との国交正常化の話題が未だに鎮座しているが、今回の事件も、それなりの大きさで報じられていた。内容を見ると、藍の期待通りに『妻が興信所に依頼し』の文字があり、読み進めると、忠則が地元の名士の長男と言う事が書かれていた。
「本人は黙秘…か…」
スマホから目を離して、天井を仰ぎ見る。埋め込み式の丸いLED灯が暖色系の光を発している…部屋着は上下セットの紺色の甚平で、袖は七分丈、足元は膝下までの長さで部屋の室温でちょうどいいカンジだろうか…
現在午後九時ごろ…寝るにしても早いが、何の娯楽もない。そもそもスマホの動画は見飽きた。最近の傾向として、SNS黎明期の『やってみた』系が復調している様だが、あの時代ならチャレンジとして成立していただろうが、超能力のある現状ではくだらないだけで、笑える要素がほぼない。失敗して惨めな姿を晒したり、癇癪を起して当たり散らしたり…そんな人物を見る事に、藍は辟易しているのだ。
止むを得ず、藍は『青い不死鳥の物語』の追想を始める…
…葵が意識を取り戻したのは午後六時ごろ…
「…やっちゃった…」
着替えさせられた上に、ベッドに寝かされている現状に自嘲してしまう。
とりあえず、身体を起こし、一階に向かう。
「お?別のニュースだ」
居間に顔を出す葵。全員がテレビの前に揃っている。
そのテレビに付けられている映像が米軍壊滅を報じたニュースではない事に葵は思わず声を挙げてしまう。が、全国ネットではなく、地方局のアナウンサーだった。
「あ、葵。気分は?」
気付いた茜が問い掛けると
「今夜、寝られるか、不安」
バツが悪そうに、葵は笑って見せる。
「あ、買い出しは?」
「やっておきましたよ」
さくらの声。
「そろそろ、ご飯作らないと」
「え?ああ。そうか」
「今日の当番は?」
「あたしだ」
手を挙げたのは茜。
「ちゃんと味見してくれよ?」
ICの嫌味に、
「文句があるなら替われ‼」
茜が悪態を付きつつ、台所に体を向けると、
「あたし、手伝います」
葵が後を追い、
「ん。お願い」
そのまま二人で台所に向かう。
しばらく、二人は調理に集中する。
「あ、東京の件」
と、茜が一段落して、葵に尋ねる。
「余計な事…では、済みませんね」
葵は、困った様に笑って見せる。
「一応聞くけど、どっちの方向から飛んで来た?」
「その内、報道で発表されますよ」
「…ったく、核の実力行使はアメリカのみに許された行為じゃなくなったな…」
「…とは言え、乱発されることはないでしょう」
「余裕ね」
「あれって、国防の要でしょ?」
「そう思っているのは政治家だけ」
と語り、茜は次の料理に移り、
「…どれだけの範囲を転移させたの?」
みそ汁作りの為に、鍋に水を入れ始める。
「え~と…半径五十キロ…くらいです」
「直径で百キロか…随分な範囲ね」
「え?そうですか?」
「実感がないのか…ちなみに、何で五十キロ?」
適量、鍋に水が張られ、ガスに掛けられる。
「あ~…ほら、原発事故の避難地域って、そのくらいだって…」
「テレビで、やってたねぇ」
「それに、あたしに出来る事なんて、このくらいです」
「充分過ぎるよ」
「だって…これでも、相当な人が犠牲になりました」
…と、葵がみそ汁の具材を鍋に投入。
「考え過ぎよ」
「それでも、もっと犠牲を出さないで出来たハズです」
「欲張り過ぎ」
「…そうでしょうか…?」
「葵…あんたSUPERMANにでもなったつもり?」
コンロの別口に掛けられた圧力鍋が音を立て始める。
「それを言われると辛いです。あたしは正義の味方じゃないですから」
「…分かっていればいいの…」
茜が圧力鍋の火を止める。
「そう言えば、さくらさんの送別会、予約取れました?」
「いつもの温泉旅館」
「お別れなんですから…いや、だからいいのかな…?」
「他は知らないからね」
「メンドがり‼」
葵が圧力鍋のふたを開けると、中から角煮の甘しょっぱい匂いが漂い…
「文句言わない‼」
煮えたみそ汁の鍋に、茜が味噌を溶き入れるが、
「味噌は火を止めてから‼」
すかさず、葵がコンロの火を止める。
「後は…残り物をチンしましょうか?」
「…食べると思う?」
「…お浸しだけでも…」
…しばらく、二人の料理が続く…
…その後は、いつもと変わらない日常が流れた…
…ただ、夕飯前に茜による唾液採取があったくらいで、夕飯もメンバー全員で摂った…テレビは相変わらず同じ内容の特番が続いていたので、早々に葵は自分の部屋に戻り、宿題を始める。茜とアルバは葵の唾液の検査…ICとさくらは生き残っている放送衛星から情報を収集…三博士はテレビに齧り付いている…いつもと変わらない日常だった…
「…ん?」
ペンを持つ葵の手に、罅が入る。
「まだ、早いよ」
罅を一瞥すると、パッと消えてしまう。
…そんな事もありながらも、葵達の日常が過ぎて行く…
翌日は、朝から多少バタついていた。
「荷造りしてなかったのかよ⁈」
「あなたが手伝わせるから‼」
さくらの転勤に伴う引っ越し作業が、終っていなかった。そもそも、さくらは葵と政府との連絡員と言う名目で、葵を監視していた国家公務員。上からの命令があれば、原隊への帰還の辞令が出れば、従わざるを得ない身分である。
「帰った所で、私の居場所はあるのか…」
元々、部屋に荷物があまりないものの、一般的な女性に必要な分の荷物はそれなりにあった。具体的には、化粧品や下着や私服類…
「いつの間に、こんなに買い込んだ…?」
終らない段ボール詰めの作業に嫌気が差してか、さくらが虚空を眺める。
「おい。こいつも買ったのか?」
と、ICが拳銃を見せる。
「支給品だ。勝手に撃つなよ」
「隠し場所がクローゼットの裏は定番か?」
「女の秘密が詰まっている場所だからな」
「知りたくなかったよ」
セーフティを掛けて、さくらに渡す。
「一つ提案があるんだが…」
「ここに残りたい願望はあるが、そうもいかない」
「いや。スカウトだ」
「?誰の?」
「お前しかいないだろう?」
「じゃあ、私の勧誘の為に荷造りを志願したのか?」
「機会がなかったからなぁ」
「そんな機会、幾らでも…」
「隙なんてなかったから、今しかないと思ったんだ‼」
と、ICがさくらの正面に回り込み、
「頼む‼俺の会社の相棒になってくれ‼」
慣れない体勢の慣れない土下座。
「…会社って…懲りてないの?」
やれやれ…な表情で、さくらが吐息一つ漏らす。
「いや、さくらの仕事振りを見ての判断だ‼あんたとならやってイケる‼」
「この手のスキルは一定期間、民間に流せないって知ってる?」
「それは任務中に知り得た情報だろう?それに、あんたが使ってた程度のスキルはハッカーなら使えて当然レベルだ」
「だったら、もっとハッキングスキルが上の人を相棒にしたら?まぁ、前にやらかしてるから、食い物にする連中が寄って来るだろうけど」
頭を下げ続けているICに、さくらは歩み寄ろうとしない…が、
「葵を守る為でもか?」
ICの言葉に、さくらの手が止まる。
「この家の監視システムは知っているだろ?それに葵の学校や買い物に行く場所、立ち寄るコンビニや、通学路の防犯カメラを使えば葵の監視は可能だ」
「…IC…やっている事がストーカーだぞ…」
「葵だったら気付く。俺達の目だって」
「…それで、昨日みたいに、『出て行け』なんて言われたら?」
「その時は出て行く。ただし、葵の監視は続ける」
「…そこまで葵に執心する理由は?」
「葵は俺にとって、やっと見つけた『SNOWWHITE』なんだ。」
「…『SNOWWHITE』?…ああ、『白雪姫』か…」
「退屈な日常位に現れたTROUBLEMAKER&BUSTER…巻き込まれてみたかった」
「酔狂な」
「あんた、俺の事も調べたんだろ?」
「え?…あ、ああ」
さくらが本部にICの事を問い合わせた件の回答を思い起こす。
「王子や魔女にはなれないが、DWARFの一人にはなれると思ったんだ」
「あたしにも小人の一人になれと?」
「もちろん、BUSINESSPLANもある。だから頼む‼」
床に頭を打ち付けて、ICが再度の懇願…
…数秒の静寂…
「あ~あ‼辞表、書かなきゃ‼」
さくらが立ち上がり、筆記用具を入れた段ボール箱に向かう。
「じゃあ…」
顔を上げるIC。
「…あたしは安くないわよ?」
さくらが諦めの吐息を漏らすが、その表情は微笑んでいる。
「THANK YOU‼ありがとう‼」
ICの言葉。感謝の意が必要以上に込められている。
「まぁ、あのコなら毒リンゴ丸齧りしても、平気な顔しているでしょうけど、出来る事なら毒リンゴなんて食べさせない様にしないとね。保護者の一人として不審者からの食べ物を不用意に食うなって、怒鳴り付けないと‼」
と、さくらが箱からペンとA4サイズのコピー用紙を取り出し、スマホから『退職届の書き方』を検索する。
「お?基準値を超えたかな?」
一方、茜は葵から採取した唾液の成分を調べている。
「前から、何を調べているんだ?」
そんな彼女の近くで、アルバが医学書を片付けている。先日の、さくらとの乱闘で雑然としていた茜の部屋が、更に散らかってしまった為である。
「ねぇ?これ、どうかな?」
パソコンの成分表のグラフを茜がアルバに見せると、
「…え?葵ってまだだったのか?」
「本人が意識的に押せていたんだって」
「…そうか…てっきり、昨日の葵の身体に現れた罅を調べていたと思ったんだが…」
片付けに戻るアルバ。
「あれは、どう見ても物理現象‼あたし達みたいな生化学系じゃ無理だって‼」
「何だ…気付いてたのか」
「生き急いでいるよねぇ…あのコ」
「そうか?割とマイペースに見えるが?」
「心配させたくないのよ。あたしにも覚えがある」
「『三つ子の二番目』か?」
「向こうの『アオイ』は、ちゃんと『アカネ』をやってくれている」
「…ったく、俺だから、気付いたし、フォローも出来たんだぞ」
と、本の束を置いて微調整する。場所を理解しているのか、一見、無造作に置いている様だが、茜の使い勝手がいい位置を把握しながらの配列である。
「ははは。感謝してるし、愛してる♡」
「…で、今後の研究予定は?」
「何が良い?」
「…考えてないのかよ」
「やりたい事はあるけど。研究とは違うから」
「やりたい事って?」
「こっちの葵が何をやろうとしているか?を見届ける」
「随分と惚れ込んだな。羨ましいよ」
「…あれは、このまま行くと、落ち着いたシンデレラになりそうで…」
「何だよ?それ…」
「ガラスの靴を両方履いたまま、かぼちゃの馬車に飛び乗る」
「ははは‼そうだな‼」
「だからさ‼ガラスの靴に脱げ易くなる細工が必要なのよ‼」
「じゃあ、階段を駆け下りる時、サイズが大きくなる様な仕掛けが要るな」
「…まぁ、問題はガラスの靴の構造じゃないけど…」
「舞踏会のステップを華麗に踏めるか?とかか?」
「…いや。むしろ、その後の事。差し当たって、十二時の鐘が鳴り響いた時、ガラスの靴を残すつもりがあるのか…?」
「…それは葵次第だな…」
…それだけ呟くと、アルバは片付けを再開する…
…居間の三博士はテレビに向かったまま…
「ついに始まったか」
一人が語り出す。
「葵の予知か」
「唐突だったな」
「もう少し先だと思っていたよ」
「葵なりの無茶をしても変えられんか」
「テレポーテーションは苦手と言っていたからな」
「これで苦手とは底知れんな」
「苦手だからこそ、だろうよ。この事態も予知の内に入っていたのかもな」
「そうなるのだろうな」
…しばしの沈黙…
「まったく。儂らの孫は無茶をするな」
「それを承知で付いて来たんだろ?それにホントの孫はどうした?」
「この前、中学に入学した」
「それは『西陰』を出た時だろ?」
「そうだったか?」
「いかんな。ボケちまって」
「それはお互いだ」
そんな会話の最中に呼び鈴の音。
「おお。注文していたモンが来たか」
「何を頼んだんだ?」
「備えだ。何もなけりゃ、置きモンだ。」
と、一人が立ち上がると、
「お~い‼アルバかIC、運び込むのを手伝ってくれぇ‼」
奥の部屋に声を掛けると、
「何だよ⁈あんたらで動かせねぇのか?」
声だけのICに対し、アルバは数秒して襖戸を開けて廊下に出る。
「大物でな‼済まんな‼」
対応の為に、一人が玄関に向かう…年甲斐なく、浮かれて見える…
「お~い‼居るかぁ⁈」
白井の声とドアをノックする音に、感覚が現実に戻る。
「何だぁ?」
ベッドから降りて、部屋の出入口に向かう。
「夜這いにでも来たか?」
チェーンを掛けて、ドアの隙間から覗くと、今日見た私服姿の白井…
「そんな事しねぇっての‼」
…彼の手には缶ビール二本の入ったコンビニ袋…
「あたしは飲まんぞ?」
チェーンを外し、藍は入室を促すと、
「だったら、俺が二本、飲むさ」
「コッチの部屋で寝るなよ?」
「そこまで弱くねぇよ」
…白井は藍の部屋に入る…
「あんな事は結構あるのか?」
「年に一度くらいかな?」
冷静に答える藍に白井は言葉を詰まらせる。
「一応、今回で五回目だ。さすがにその位になると勘が働く」
「今回の件が?」
「良くあるんだよ。ヒトを追い詰める親や周囲の人間ってのが」
皮肉気味な笑みを見せる藍。
「本人の能力のキャパをオーバーさせる期待を与える奴らが」
「…それは、お前の両親とか…?」
「それは、お前が言うべきことじゃないぞ」
「実家、帰ってないんだろ?」
「だからって、出来る時は、仕送りはしている」
「無理して捻出してるんじゃないか?」
「残しても、使い道がないからな」
「それは老い先短い者の台詞だ」
「何だよ?あたしの金でも狙っているのか?それともマルサにチクるか?」
「そんな事しねぇよ」
会話が途切れる。
「言いたい事があるなら、吐き出せ」
「じゃあ、言わせてもらうが…」
諦めた様な溜め息を、白井が吐くと、
「お前、痩せたか?」
「…止めろよ…褒めても…」
「褒めてねぇよ‼」
「ダイエットの成果が…」
「いつから始めてんだよ⁈大学卒業してからだろ⁈」
「成果が出てねぇんだから…」
「瘦せ過ぎだ」
「…そうでもないさ…」
「今の体重は?」
「プライバシーに抵触します」
「お前の顔の脂肪率はどうやって調節している?」
「ノーコメント」
「…未だに自殺は考えているのか?」
「…ああ…」
「…ったく、栄養失調の自殺なんて、気の長い話だな…」
「仕方がないだろ?あたしには自殺防止の強力な暗示が掛かっているんだから」
「全人類、等しく掛けられているだろ?」
「あたし達、飛び級組は特にだよ」
藍の話では、特別に知能が発達した者特有の感性の中に、自身の早逝を望む者が、一般教育を受けた者よりも多い傾向にあるらしく、そう言った者の中にはワザと教育中の自殺防止暗示を外す者がいるらしい。こういった事態を防ぐ為に、飛び級教育受講者には一定期間、指定の映像視聴が義務付けられている。もっとも内容は、誰もが楽しめる娯楽作品で、それこそ『青い不死鳥の物語』の場合もある。が、従来の作品と違ったノイズや微妙に加工された画像で、それが特殊教育用の加工作品であると気付く者もいるが、何の教育用か?までは気付かされないまま、無意識に植え付けられる…ただし、自殺防止効果を消す可能性のある者には、保護者を巻き込んだ自殺防止教育が施され、目に映る物、聞こえて来る音から、味覚、嗅覚、触覚に至るまで『自死』を拒絶させる暗示が掛けられる。
「ある種、歪な教育だよ」
「お前も受けたのか?」
「持ってた物がいきなり替わるんだぜ?どれだけあたしが使っていた様に、精巧に見せても、あたしの『現在視』は誤魔化せないから親を問い詰めたんだ」
「…ご両親は話したのか…?」
「いや。それなりの金額が通帳に振り込まれていたから、深く詰めるのは止めた」
「英断だな」
「だから、寂しくない様に仕送りはしている」
「お前、それ…」
「意趣返しして、何が悪い?ウチの親がどれ程、あたしの未知の可能性を守る為に抵抗したか知らんが、結果として、あたしの命を守ったんだ。子に生きて欲しいと願うのは親の願いかも知れないが、あたしにあったかも知れない別の可能性を、あたしの親は潰したんだぞ。しかも、要求したか謝礼としてかは知らんが、金まで貰っている」
「それが許せないのか?だから栄養失調で死ぬのか?」
…アツ語りの白井の言葉に、藍は一息つくと、
「部長が死んだ」
「え?」
「生命維持装置の維持費が払えなくなったらしい」
淡々と語る藍がスマホを操作し、一通のメール画面を開く。
「多分、お前の方にも行ってると思うが…」
白井が車の運転を『運転手操作』から『自動』に切り替えて、藍のスマホ画面を見る。
弔事用の黒枠メールに、死亡日時と斎場の案内のテンプレートなお悔み文面…
「葬式に行ったのか?」
葬儀の日時がかなり経過している。
「あたしも忙しくてな…返信のお悔みメールと少額だがお布施を送った程度だ」
と、藍が白井からスマホを取り返す。
「あたしは、部長の様な死に方も、病気で死ぬ事を望んでいない」
「お前、それは…」
「お前が、あたしの願いを聞かないからこういう死に方を選んでいるんだ」
「そんな事、俺が出来るわけが‼」
「お前にとって、あたしは大学時代からの警護対象だからだろ?」
「‼」
言葉を詰まらせる白井。
「今更、何処の所属とか聞かないよ。だが、あたしは未だに諦めてないからな」
「…止めろ…」
「お前以外いないんだよ。身の回りで…」
「例え、そうでも…」
「念動力で、生きている人体をバラバラに出来るのは」
…言い切った藍の口元が、至上の笑みを見せる…
「だから、気が向いたら、あたしをバラバラにしてくれ」
だが、その瞳は寂しさが滲んでいて…
「頼むぞ」
藍の言葉と共に、沈黙のまま、二人を乗せた車はビジネスホテルに向かう。
…藍は飛び級用の特別講習とテレポーテーション研究の実験以外は一般教育用の学校に通っていた…自宅学習プログラムも選べたが、両親が通学教育を強く望んだ為、学校に通わされる事となった。ただし、飛び級先での藍の立ち位置は歓迎された待遇ではなかった。特に生徒間での扱われ方が酷く、陰湿で執拗ないじめに会っていた。それは彼女の『現在視』の千里眼の影響がある。教師陣からは千里眼のカンニングを疑われ、年上の生徒達からは生徒指導の先生達への点数稼ぎを疑われる…それは学校に持ち込み禁止とされている化粧品だったり、ゲームアプリのインストールコードを記したメモリーカードやセーブデータだったり、時にはタバコやお酒、錠剤の合成麻薬だったり…実際は濡れ衣だが、取り上げられた生徒達からは謂われのない報復を受ける。制服や体操着、持ち出し用タブレットの紛失は当たり前で、学年の登録簿から彼女の名前が消えていた事もある。「もうカンニングして飛び級したと思ってました」と心で嘲笑しながらも、表面上は悪気のない平然とした顔で訴える彼らに、教師は「以後はやるなよ」と言葉だけの注意…それでも折れずに、藍は高校までの教育を十一歳で終わらせ、大学の四年間を過ごす…いじめの事実を教育機関が知ったのは大学二年のアンケートの時…飛び級生の大学生活に関する大学側のアンケートのつもりだったが、『以前の学校生活と比べてどうですか?どの様に違うかの感想はありますか』と言う項目に、『身体的特徴をいじる者は何時現れるのか?壊されたタブレットは保障されるのか?知らない間に除籍扱いされていないか?』との、怯えた文章を綴った事が切っ掛けだった。藍にとっては思い切った告白で、大学側が藍の通っていた学校に抗議。破損したタブレットの代金は全額返金されたが、生徒や教師、学校からは謝罪が一切ない上に、人事にしても昇格こそあれ、降格や懲戒免職処分が一切ないまま…生徒にしても、いじめに関わったと思われる生徒達はこぞって有名進学校に合格しており、中には、藍の通う大学の付属学校に進学している者もいる始末…この事を信頼の置けるネットニュースサイトに投稿すると徹底的な取材が行われ、飛び級生受け入れ校の杜撰な実態が次々と明らかにされる事となった。ちなみに、アンケートを書く様に促したのが一般入試枠で入学した、『ブルふぇに』研究会の会長だった…ただ、何故か、彼女自身は『部長』と呼ぶ様に‼と強く主張していたが…
『部長』は藍とは同窓で、強引ながらも繊細な気遣いが出来る女性だった。出会いは入学式の桜吹雪の中…藍の高校まで着ていた制服姿に一目惚れし、周囲に居る藍の親を跳ね退け、藍のメガネを外したかと思うと、
「…鳳葵の再来じゃああああああああ‼」
と、誰に憚ることなく、声を張り上げ、思いっ切り周囲と藍を引かせていた…その後、何かにつけて藍に絡み、藍と、『部長』と同じ高校出身の同好の士、更に白井を加えて『ブルふぇに』同好会を設立。それと同時に藍は大学キャンパス内でセーラー服を着る事を強要される事となった。活動内容は学生の活動の域を超えるモノではなく、週に一度の『青い不死鳥の物語』内の一シーンの独自考察の発表と論評以外は、『青い不死鳥の物語』のキャラクターコスプレ撮影会…主に藍のセーラー服コスプレをメインとした撮影会が連日催された…ちなみに、この写真は投稿サイトに『リアル鳳葵光臨‼』と題しアップされ、初回映像がちょっぴりバズった…撮影会での白井は、藍の空中姿勢の撮影の為に、念動力で彼女を空中に固定する役割を果たし、細かな服の乱れや髪の流れなどは他の同好会員の助けを借りる事が多かったが、藍の下着を見せない為の撮影位置の調整やポーズ補正の為にも白井の念動力が活用される事となった。撮影…と言うかシャッターは『部長』の役割で一発シュートが基本。なので、ポーズや服の乱し方にギリギリの拘りを見せ、藍を空中で停滞させる事もしばしば…最初の内は黙って我慢していたが、年末頃に文句を言い出し、二年の夏に入った頃から、空中で寝る事もあった。ちなみに、この時、顔にいたずら描きされた寝顔写真が同好会で最高にバズった作品となった。
学生と言う身分を満喫した藍にも卒業が近付いていた。最後の思い出として、作者の弾丸旅行を模した撮影&卒業旅行が企画された。旅は順調に進み、南アメリカから帰国…『部長』が旅の始まりに言っていた「おウチに帰るまでが卒業旅行です‼」のお約束台詞の伏線を、まさか、回収するとは、誰も思っていなかった…
「きゃああああ‼」
武装テロリスト集団とあらかじめ配備されていたSATが衝突。銃撃戦が展開された。
入国ゲート付近で発生した事件に、数機の旅客機から降りた乗客がパニックに陥った。既に駐機場に戻った旅客機に戻ろうとする人の波に弾かれた藍達が、同じく取り残された乗客と共に、テロ集団が近付かない事を祈る…逃げ遅れた者は集団の圧力に転倒し踏まれた者が殆どで、その場で呻き声を上げつつ、寝転がっている…その時点での死者はいなかったが、同好会の一人が足を傷めた。後で判明したが、骨折していたらしい…だが、銃撃戦の発砲音が無情にも近付いて来る…やがて、一人のテロリストが一人の女性を盾にこちらに近付いて来る…後ろ向きに歩きつつ、女性を引き摺る彼はSATを数人引き連れていた。どう見てもテロリストが不利で、レーザー照準の赤い光がテロリストの頭部を数ヵ所当てているが、空間が歪んでいる様で、頭部周辺の五センチ程先で乱反射して、頭部そのものに届いていない。いわゆる物理障壁であると、白井が呟く…無言の膠着状態が十秒程…入国ゲート方向からテロリストと思われる人物の叫び声と共に爆発音が響き、藍達の居る辺りにもビリビリと振動が走る。その時点での藍達の立ち位置は、テロリストに一番近いのは白井、足を折った同好会員…『部長』と藍が抱き合い、白井の後ろに隠れていた。いや、隠れる位置に白井が付いていた。が、完璧ではなかった。
逃げきれないと観念したテロリストが最後の抵抗を見せる。それは『ある言葉』を発する事で発動する仕掛け。そう、超能力ではない機械的仕掛け。テロリストの全身に仕掛けられた爆薬が起爆。殺傷目的の鋲が爆散し、人質諸共、周囲に取り残された人々を貫く。
…その場で生き残っていたのは、障壁を展開していた白井とその背後に居た葵…『部長』も生きてはいた…ただテロリストが持っていた拳銃が頭部に直撃して動かない…この場で最も無力な自分と勇敢な二人…白井は障壁を展開した事で、今にも倒れそうだ…目の前で起こった出来事に呆然としていると、『部長』の頭にぶつかった拳銃が視界の隅に見える…それに手を伸ばし、拾い上げる…思った以上に熱い…
「何やってんだ⁈」
白井の声が響く。
「え?」
藍は拳銃の銃口を自らの頭部に向けていた。引き金に指を掛け、薄ら笑いを浮かべていたとは、白井から後で聞かされた…自殺抑止の暗示が解けていた…
藍にとって、思い出したくはないが、忘れてはいけない記憶だった。
『部長』は頭部に当たった拳銃の衝撃で植物状態に陥る。何度か見舞いに行ったが、変わる事なく眠ったままだった…逆恨みの自覚はあるが、白井を恨まずにはいられなかった。障壁の展開には特殊な訓練がいると白井自身が語っていた事から、彼が何処かの軍事組織の一員であると察知した…これは白井が藍に警戒心を持ってもらう為の情報操作のつもりだったが、白井の前で事件が起きてしまった事で彼の親密な立場での身辺警護が機能しなくなってしまった。その上、第一の警護対象である藍は守れたものの、『部長』を植物状態にしてしまった事は藍の信用を喪失させるのに充分だった。
藍は決まっていた財務省のアルバイトを蹴り、探偵事務所を設立。一緒に入省するはずだった白井がそのまま財務省に就職する事となった。ちなみに、藍がアルバイトなのは入省最低年齢の二十二歳に満ちていない為である。
藍が白井を邪険にするのはこういった事情があるからだが、決定的絶好宣言をしないのは彼の事情の酌んでの配慮でもあった。
ちなみに、藍の自殺衝動を抑える暗示は応急的に施された事で、自殺を含む自傷行動は身体が抑制してくれているが、精神的な自殺衝動は抑制されていない状態である。
やがて、二人を乗せた車はビジネスホテルに到着。チェックインの前に車だけ預け、近くのコンビニで、お互い今日の夕飯と明日の朝食を購入。これは白井からの指示で、バイキングやライブキッチンでの食事はしない様に厳しく詰められた。毒物摂取の危険性を排除する為の簡単な自衛手段と説得され、納得するしかなかった…その後二人はホテルに向かい、受付の従業員に白い目で見られながらもチェックイン。お互いの部屋へと向かう。
「人心地付いた~…」
ベッドに荷物と食事、それと自分の身体を投げ出し、藍は仰向けに大の字になる。程よい堅さが気持ちいいが、寝てはいけない。この系列のホテルは何度か利用しているので何処に何があるか?は把握している。まず、来ている服を脱ぎ、クローゼットに収納。そこから備え付けの部屋着を取り出し、バスルームへ…シャワーで身体を洗い、クレンジングで化粧を落とす。髪を手早く乾かし、部屋着に着替え、バスルームから出ると、ベッドに寝そべりながら、スマホで依頼がないかのチェック…ついでに今日の事件が報道に挙げられているかのチェックも入れる…不謹慎だが、営業活動として有効だから…『興信所の依頼で捜索』などと書かれれば、検索して仕事を依頼する人物が現れる可能性がある…見出しの画面には『合州国』との国交正常化の話題が未だに鎮座しているが、今回の事件も、それなりの大きさで報じられていた。内容を見ると、藍の期待通りに『妻が興信所に依頼し』の文字があり、読み進めると、忠則が地元の名士の長男と言う事が書かれていた。
「本人は黙秘…か…」
スマホから目を離して、天井を仰ぎ見る。埋め込み式の丸いLED灯が暖色系の光を発している…部屋着は上下セットの紺色の甚平で、袖は七分丈、足元は膝下までの長さで部屋の室温でちょうどいいカンジだろうか…
現在午後九時ごろ…寝るにしても早いが、何の娯楽もない。そもそもスマホの動画は見飽きた。最近の傾向として、SNS黎明期の『やってみた』系が復調している様だが、あの時代ならチャレンジとして成立していただろうが、超能力のある現状ではくだらないだけで、笑える要素がほぼない。失敗して惨めな姿を晒したり、癇癪を起して当たり散らしたり…そんな人物を見る事に、藍は辟易しているのだ。
止むを得ず、藍は『青い不死鳥の物語』の追想を始める…
…葵が意識を取り戻したのは午後六時ごろ…
「…やっちゃった…」
着替えさせられた上に、ベッドに寝かされている現状に自嘲してしまう。
とりあえず、身体を起こし、一階に向かう。
「お?別のニュースだ」
居間に顔を出す葵。全員がテレビの前に揃っている。
そのテレビに付けられている映像が米軍壊滅を報じたニュースではない事に葵は思わず声を挙げてしまう。が、全国ネットではなく、地方局のアナウンサーだった。
「あ、葵。気分は?」
気付いた茜が問い掛けると
「今夜、寝られるか、不安」
バツが悪そうに、葵は笑って見せる。
「あ、買い出しは?」
「やっておきましたよ」
さくらの声。
「そろそろ、ご飯作らないと」
「え?ああ。そうか」
「今日の当番は?」
「あたしだ」
手を挙げたのは茜。
「ちゃんと味見してくれよ?」
ICの嫌味に、
「文句があるなら替われ‼」
茜が悪態を付きつつ、台所に体を向けると、
「あたし、手伝います」
葵が後を追い、
「ん。お願い」
そのまま二人で台所に向かう。
しばらく、二人は調理に集中する。
「あ、東京の件」
と、茜が一段落して、葵に尋ねる。
「余計な事…では、済みませんね」
葵は、困った様に笑って見せる。
「一応聞くけど、どっちの方向から飛んで来た?」
「その内、報道で発表されますよ」
「…ったく、核の実力行使はアメリカのみに許された行為じゃなくなったな…」
「…とは言え、乱発されることはないでしょう」
「余裕ね」
「あれって、国防の要でしょ?」
「そう思っているのは政治家だけ」
と語り、茜は次の料理に移り、
「…どれだけの範囲を転移させたの?」
みそ汁作りの為に、鍋に水を入れ始める。
「え~と…半径五十キロ…くらいです」
「直径で百キロか…随分な範囲ね」
「え?そうですか?」
「実感がないのか…ちなみに、何で五十キロ?」
適量、鍋に水が張られ、ガスに掛けられる。
「あ~…ほら、原発事故の避難地域って、そのくらいだって…」
「テレビで、やってたねぇ」
「それに、あたしに出来る事なんて、このくらいです」
「充分過ぎるよ」
「だって…これでも、相当な人が犠牲になりました」
…と、葵がみそ汁の具材を鍋に投入。
「考え過ぎよ」
「それでも、もっと犠牲を出さないで出来たハズです」
「欲張り過ぎ」
「…そうでしょうか…?」
「葵…あんたSUPERMANにでもなったつもり?」
コンロの別口に掛けられた圧力鍋が音を立て始める。
「それを言われると辛いです。あたしは正義の味方じゃないですから」
「…分かっていればいいの…」
茜が圧力鍋の火を止める。
「そう言えば、さくらさんの送別会、予約取れました?」
「いつもの温泉旅館」
「お別れなんですから…いや、だからいいのかな…?」
「他は知らないからね」
「メンドがり‼」
葵が圧力鍋のふたを開けると、中から角煮の甘しょっぱい匂いが漂い…
「文句言わない‼」
煮えたみそ汁の鍋に、茜が味噌を溶き入れるが、
「味噌は火を止めてから‼」
すかさず、葵がコンロの火を止める。
「後は…残り物をチンしましょうか?」
「…食べると思う?」
「…お浸しだけでも…」
…しばらく、二人の料理が続く…
…その後は、いつもと変わらない日常が流れた…
…ただ、夕飯前に茜による唾液採取があったくらいで、夕飯もメンバー全員で摂った…テレビは相変わらず同じ内容の特番が続いていたので、早々に葵は自分の部屋に戻り、宿題を始める。茜とアルバは葵の唾液の検査…ICとさくらは生き残っている放送衛星から情報を収集…三博士はテレビに齧り付いている…いつもと変わらない日常だった…
「…ん?」
ペンを持つ葵の手に、罅が入る。
「まだ、早いよ」
罅を一瞥すると、パッと消えてしまう。
…そんな事もありながらも、葵達の日常が過ぎて行く…
翌日は、朝から多少バタついていた。
「荷造りしてなかったのかよ⁈」
「あなたが手伝わせるから‼」
さくらの転勤に伴う引っ越し作業が、終っていなかった。そもそも、さくらは葵と政府との連絡員と言う名目で、葵を監視していた国家公務員。上からの命令があれば、原隊への帰還の辞令が出れば、従わざるを得ない身分である。
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「いつの間に、こんなに買い込んだ…?」
終らない段ボール詰めの作業に嫌気が差してか、さくらが虚空を眺める。
「おい。こいつも買ったのか?」
と、ICが拳銃を見せる。
「支給品だ。勝手に撃つなよ」
「隠し場所がクローゼットの裏は定番か?」
「女の秘密が詰まっている場所だからな」
「知りたくなかったよ」
セーフティを掛けて、さくらに渡す。
「一つ提案があるんだが…」
「ここに残りたい願望はあるが、そうもいかない」
「いや。スカウトだ」
「?誰の?」
「お前しかいないだろう?」
「じゃあ、私の勧誘の為に荷造りを志願したのか?」
「機会がなかったからなぁ」
「そんな機会、幾らでも…」
「隙なんてなかったから、今しかないと思ったんだ‼」
と、ICがさくらの正面に回り込み、
「頼む‼俺の会社の相棒になってくれ‼」
慣れない体勢の慣れない土下座。
「…会社って…懲りてないの?」
やれやれ…な表情で、さくらが吐息一つ漏らす。
「いや、さくらの仕事振りを見ての判断だ‼あんたとならやってイケる‼」
「この手のスキルは一定期間、民間に流せないって知ってる?」
「それは任務中に知り得た情報だろう?それに、あんたが使ってた程度のスキルはハッカーなら使えて当然レベルだ」
「だったら、もっとハッキングスキルが上の人を相棒にしたら?まぁ、前にやらかしてるから、食い物にする連中が寄って来るだろうけど」
頭を下げ続けているICに、さくらは歩み寄ろうとしない…が、
「葵を守る為でもか?」
ICの言葉に、さくらの手が止まる。
「この家の監視システムは知っているだろ?それに葵の学校や買い物に行く場所、立ち寄るコンビニや、通学路の防犯カメラを使えば葵の監視は可能だ」
「…IC…やっている事がストーカーだぞ…」
「葵だったら気付く。俺達の目だって」
「…それで、昨日みたいに、『出て行け』なんて言われたら?」
「その時は出て行く。ただし、葵の監視は続ける」
「…そこまで葵に執心する理由は?」
「葵は俺にとって、やっと見つけた『SNOWWHITE』なんだ。」
「…『SNOWWHITE』?…ああ、『白雪姫』か…」
「退屈な日常位に現れたTROUBLEMAKER&BUSTER…巻き込まれてみたかった」
「酔狂な」
「あんた、俺の事も調べたんだろ?」
「え?…あ、ああ」
さくらが本部にICの事を問い合わせた件の回答を思い起こす。
「王子や魔女にはなれないが、DWARFの一人にはなれると思ったんだ」
「あたしにも小人の一人になれと?」
「もちろん、BUSINESSPLANもある。だから頼む‼」
床に頭を打ち付けて、ICが再度の懇願…
…数秒の静寂…
「あ~あ‼辞表、書かなきゃ‼」
さくらが立ち上がり、筆記用具を入れた段ボール箱に向かう。
「じゃあ…」
顔を上げるIC。
「…あたしは安くないわよ?」
さくらが諦めの吐息を漏らすが、その表情は微笑んでいる。
「THANK YOU‼ありがとう‼」
ICの言葉。感謝の意が必要以上に込められている。
「まぁ、あのコなら毒リンゴ丸齧りしても、平気な顔しているでしょうけど、出来る事なら毒リンゴなんて食べさせない様にしないとね。保護者の一人として不審者からの食べ物を不用意に食うなって、怒鳴り付けないと‼」
と、さくらが箱からペンとA4サイズのコピー用紙を取り出し、スマホから『退職届の書き方』を検索する。
「お?基準値を超えたかな?」
一方、茜は葵から採取した唾液の成分を調べている。
「前から、何を調べているんだ?」
そんな彼女の近くで、アルバが医学書を片付けている。先日の、さくらとの乱闘で雑然としていた茜の部屋が、更に散らかってしまった為である。
「ねぇ?これ、どうかな?」
パソコンの成分表のグラフを茜がアルバに見せると、
「…え?葵ってまだだったのか?」
「本人が意識的に押せていたんだって」
「…そうか…てっきり、昨日の葵の身体に現れた罅を調べていたと思ったんだが…」
片付けに戻るアルバ。
「あれは、どう見ても物理現象‼あたし達みたいな生化学系じゃ無理だって‼」
「何だ…気付いてたのか」
「生き急いでいるよねぇ…あのコ」
「そうか?割とマイペースに見えるが?」
「心配させたくないのよ。あたしにも覚えがある」
「『三つ子の二番目』か?」
「向こうの『アオイ』は、ちゃんと『アカネ』をやってくれている」
「…ったく、俺だから、気付いたし、フォローも出来たんだぞ」
と、本の束を置いて微調整する。場所を理解しているのか、一見、無造作に置いている様だが、茜の使い勝手がいい位置を把握しながらの配列である。
「ははは。感謝してるし、愛してる♡」
「…で、今後の研究予定は?」
「何が良い?」
「…考えてないのかよ」
「やりたい事はあるけど。研究とは違うから」
「やりたい事って?」
「こっちの葵が何をやろうとしているか?を見届ける」
「随分と惚れ込んだな。羨ましいよ」
「…あれは、このまま行くと、落ち着いたシンデレラになりそうで…」
「何だよ?それ…」
「ガラスの靴を両方履いたまま、かぼちゃの馬車に飛び乗る」
「ははは‼そうだな‼」
「だからさ‼ガラスの靴に脱げ易くなる細工が必要なのよ‼」
「じゃあ、階段を駆け下りる時、サイズが大きくなる様な仕掛けが要るな」
「…まぁ、問題はガラスの靴の構造じゃないけど…」
「舞踏会のステップを華麗に踏めるか?とかか?」
「…いや。むしろ、その後の事。差し当たって、十二時の鐘が鳴り響いた時、ガラスの靴を残すつもりがあるのか…?」
「…それは葵次第だな…」
…それだけ呟くと、アルバは片付けを再開する…
…居間の三博士はテレビに向かったまま…
「ついに始まったか」
一人が語り出す。
「葵の予知か」
「唐突だったな」
「もう少し先だと思っていたよ」
「葵なりの無茶をしても変えられんか」
「テレポーテーションは苦手と言っていたからな」
「これで苦手とは底知れんな」
「苦手だからこそ、だろうよ。この事態も予知の内に入っていたのかもな」
「そうなるのだろうな」
…しばしの沈黙…
「まったく。儂らの孫は無茶をするな」
「それを承知で付いて来たんだろ?それにホントの孫はどうした?」
「この前、中学に入学した」
「それは『西陰』を出た時だろ?」
「そうだったか?」
「いかんな。ボケちまって」
「それはお互いだ」
そんな会話の最中に呼び鈴の音。
「おお。注文していたモンが来たか」
「何を頼んだんだ?」
「備えだ。何もなけりゃ、置きモンだ。」
と、一人が立ち上がると、
「お~い‼アルバかIC、運び込むのを手伝ってくれぇ‼」
奥の部屋に声を掛けると、
「何だよ⁈あんたらで動かせねぇのか?」
声だけのICに対し、アルバは数秒して襖戸を開けて廊下に出る。
「大物でな‼済まんな‼」
対応の為に、一人が玄関に向かう…年甲斐なく、浮かれて見える…
「お~い‼居るかぁ⁈」
白井の声とドアをノックする音に、感覚が現実に戻る。
「何だぁ?」
ベッドから降りて、部屋の出入口に向かう。
「夜這いにでも来たか?」
チェーンを掛けて、ドアの隙間から覗くと、今日見た私服姿の白井…
「そんな事しねぇっての‼」
…彼の手には缶ビール二本の入ったコンビニ袋…
「あたしは飲まんぞ?」
チェーンを外し、藍は入室を促すと、
「だったら、俺が二本、飲むさ」
「コッチの部屋で寝るなよ?」
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…白井は藍の部屋に入る…
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SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
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