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ピアノのメロディー
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音楽学校を卒業したわたしは、歌手になることをゆめみていた。でも、わたしは歌がとてもへたで、卒業したあとも歌のレッスンにかよっていた。
そんなある日のこと。
いつものようにレッスンに行くと先生がまじめな顔でわたしにいった。
「あなた、まったく歌がうまくならないわね。あなた、歌手のゆめあきらめたほうがいいわよ。歌がすきならアイドルになればいいと思うわ。かわいいからアイドルにならなれるわ。」そんなことを言われ、わたしはショックだったけれど、ゆめをあきらめるつもりはまったくなかった。
「わたしはあきらめません。たしかに歌はへたかもしれません。でも、歌をすきで、歌手になりたいというゆめは強くもっています。たしかにアイドルも歌えますが、それがメインではないですから。」先生はそれいじょうなにも言わなかった。
レッスンが終わり、帰ろうと歩いていると、二人の話し声が近くで聞こえてきた。
「今日もよかったですよ。今では向坂和哉は世界的に有名なピアニストですよ。」
「べつにうれしくもないし、めいわくなだけ。」わたしは向坂さんのファンだ。ひとめ見たいとおもい声のする方へむかった。
そこには黒いスーツをきた向坂さんと若い男性がいた。
二人は同じぐらいの歳の友達だろうかと思った。
「あの、すいません。」わたしが声をかけると二人はふりむいた。
「あ、聞こえてたならすいません。ほら向坂さんもあやまって。」
「なんで。おれべつにわるいことしてないし、むしろ、そいつがかってに聞いてたのが悪いんじゃないの?」正論を言われてなにも言えなかった。
「すいません。いつもこうなんです。」男性は頭を深くさげた。
「いえ。わたしこそすいません。わたし向坂さんにあこがれているんです。歌手をめざしてるんですけど、なかなかうまくならなくて。」男性は笑顔で言った。
「声、とてもきれいなのに不思議ですね。おれ、すこしですけど、おしえましょうか?」それにわたしはおどろいた。
「やめなよ。今あったばかりのやつをおしえるなんて。」向坂さんは男性をとめたが、男性はわたしをおしえてくれるようだ。
「おれ、歌手をめざしてる彼女をたすけたいんだ。どうしてそう思ったのかはわからないけど。放っておけないんだ。」わたしはうれしくてむねがあつくなった。
「おねがいします。わたし、頑張ります。」
「よろしく。おれは三上健。向坂さんのマネージャーです。」三上さんはあかるい表情だった。
「木村美咲です。わたしこそおねがいします。」わたしも名前を言った。
「そしたら美咲さん、明日からここにきてください。」住所がかかれた紙をわたされた。
「ありがとうございます。」
つぎの日、わたしは書いてある住所のところへ行った。そこは大きな家だった。
おそるおそるチャイムをならした。
しばらくするとドアがあいた。
「待ってましたよ。美咲さん。」三上さんが出迎えてくれた。
「今日からお世話になります。よろしくおねがいします。」
「じゃあ、さっそくですけど、カラオケに行きましょう。」わたしはその言葉におどろいた。
「どうしてカラオケなんですか?」
「まずは、すきなきょくを歌ってみて、楽しんでください。カラオケで、美咲さんの歌声も聞きたいですから。」楽しむことはたしかに大切だ。
最近レッスンばかりで楽しむということをわすれていた気がする。
「わかりました。おねがいします。」わたしは三上さんと二人で近くのカラオケ店にむかった。
歩いて5分ぐらいして店についた。
時間は2時間。今日は楽しもうと思っていた。
部屋に入りマイクをとり、さっそくすきな歌を歌った。
1きょく歌い終わると三上さんは拍手してくれた。
「歌がすきなんだってつたわるよ。たしかに今はだめかもしれないけど、練習すればよくなるよ。」今までの人はみんなわたしの歌を聞くと歌手にはむいてないと言ってきた。三上さんの言葉はとてもうれしかった。はげまされたような気持ちになった。
「ありがとうございます。とてもうれしいです。」わたしはもっと歌いたい気持ちになった。
「美咲さんのいいところはたかい音でなければ、ちゃんときれいな声がでてるところです。メロディーにあわせて歌えてるのもすばらしいです。ただ、たかい音になると声がでていないのが弱点です。それと、表情がかたいです。いろんなことを経験して、心を歌にこめるとよくなるとおもいます。」具体的なところまで言ってくれて勉強になる。
わたしに必要なのはいろんな経験が1ばんのような気がした。
今まで歌うことに必死で恋愛はしなかったし、友達もつくらなかった。
楽しいと思えることは、歌以外なかった。
「具体的にありがとうございます。」
「低い声のアーティストはいるから、それはかまいません。今美咲さんに大切なのはしあわせだと思うことです。歌手はただ歌うだけではなく、聞いている人をしあわせにしたり、感動させたりしなければいけません。今の歌声にはなにもかんじません。」きびしいことを言われたが、あきらめる気はなかった。
「頑張ります。今の言葉でますますやる気になりました。」三上さんは笑顔だった。
「美咲さんはすごいですね。その気持ちは大切です。美咲さんをかならず輝くアーティストにします。」
三上さんとの時間はゆいいぎな時間になった。
「今日は帰りましょう。のどをいためては歌えませんから。」わたしと三上さんはカラオケ店をでた。
帰り道を歩いていると、向坂さんと偶然であった。
「三上、ほんとにおしえてたの?」
「美咲さんはすごいですよ。きっとだれかにどれだけ言われても歌手になりたいってゆめをあきらめないよ。」向坂さんはあきれていた。
「あ、向坂さん、おねがいがあります。美咲さんさえよければですが、美咲さんとデートしてください。」わたしはおどろいて声も出なかった。向坂さんはいがいと冷静だった。
「なんで。あんたがおしえてるんだからあんたがしなよ。」
「1日だけでいいからさ。美咲さんはどう?」話をふられてすこし間をあけ、こたえた。
「わたしにはしあわせな経験が必要なんですよね。なら、してみたいです。」三上さんは満足そうな笑みをうかべた。
「よかった。向坂さんもいいよね?」向坂さんはためいきをついた。
「わかった。」いやだということがみてわかる。
「すいません。やっぱりやめておきます。向坂さんいやみたいなので。」わたしはたえられなくなり、言ってしまった。
向坂さんはわたしをにらんだ。
「あんた、人がつきあってあげるのにことわるんだ。べつにいいけど。」あこがれていた気持ちはきえていった。
「そういわないでくださいよ。遊園地にでも行ってきてください。ペアチケットあるので。」ことわりづらかった。
「わかりました。行ってきます。」2日後に二人で遊園地に行くことになった。
「向坂さん、くれぐれも彼女をなかせたりしないでくださいね。」
「はいはい。わかってるよ。」そう言ってその日はわかれた。
そして2日がたち、わたしはすこしおしゃれをして約束の場所にむかった。
向坂さんはすでにきていた。
「すいません。待ってましたよね。なにかおごりますから。」
「べつに待ってないけど、なにかおごってくれるなら遠慮はしないから。」しかたないと覚悟した。
遊園地に入ると観覧車が真っ先に目に入った。
「最初お化け屋敷から行きたいんですけどいいですか?」
「そんなとこ行きたいんだ。いいよ。」わたしはとてもこわがりだけど、なぜか入りたくなってしまう。
入ると、薄暗くぶきみだったけれど、二人だからかいつもよりはこわくなかった。
「向坂さん、手をつないでもいいですか?」暗くて表情はみえなかったけれど、いがいなこたえがかえってきた。
「いいよ。」わたしの手をぎゅっとにぎってくれた。あたたかい手。わたしは安心できた。
途中でおいかけられたりしたけれど、向坂さんがいたからこわくなかった。
お化け屋敷から出ると、向坂さんはすこしわらっていた。
「あんたこわがりだね。」
「そうなんです。でも、見たくなるんですよね。」向坂さんは理解できないと言いたげだった。
「そこにベンチあるから休みなよ。」いがいと優しい向坂さんを見てなんだか嬉しくなった。
わたしと向坂さんはベンチですこし休んだ。
「ありがとうございます。つぎはどこにいきますか?」
「あんたがきめなよ。どこでもいいからさ。」わたしはすこしかんがえた。すると、向坂さんが立ち上がりどこかへ行こうとしていた。
「どこに行くんですか?」わたしが聞くと向坂さんは歩きながらこたえた。
「アイスでも買ってくる。」すぐに見えなくなってしまった。
わたしは遊園地のパンフレットを見ていた。
観覧車にのった男女はかならずむすばれるとかかいてあったけど、あまり気にしなかった。
「ねえ、君一人?よかったらおれらとまわらない?」とつぜん3人の男の人に声をかけられた。
わたしはなにも言えずにいた。そのときだった。
「あんたたちなにしてんの?」向坂さんがもどってきた。
「お前には関係ないだろ。」
「あるけど。そいつおれの彼女。デートしてんだからじゃましないで。」3人は舌打ちしてどこかへ行ってしまった。
「ほらアイス。あんたなにがすきかわからないし、適当に買ってきた。」バニラのアイスを手渡してくれた。
向坂さんもおなじバニラのアイスをもっていた。
わたしのとなりにすわり、わたしより先に食べていた。
「向坂さん、いろいろとありがとうございます。」
「なんぱには気をつけて。」その一言だけだったけど、なんとなくきょりがちじまった気がした。
食べ終わるとつぎの行き先をきめた。
「あんたさけんでたし、観覧車にでものろうか。」わたしのことをちゃんとかんがえてくれていた。
「そうですね。」わたしたちは観覧車の方にむかって歩いた。
受付に行くと高校生ぐらいの女性が向坂さんを見て興奮していた。
「向坂和哉さんだ。いっしょにのりたい。」受付の仕事を忘れているようだった。
「ほらほら、ちゃんと仕事して。」中年の女性が出てきて、お金のうけわたしをしてくれた。
観覧車はとてもゆっくりうごいていた。
景色はすごくきれいで遊園地の中だけではなく、太陽のひかりできらきらしている海も見えた。
わたしはそんな景色を見て、興奮してしまった。
その後もわたしは向坂さんとたのしくすごした。
あっという間に夕方になった。
「今日はありがとうございました。」わたしは笑って向坂さんに今日のおれいを言った。
「つぎは水族館に行こうか。あんたとならデートしてもいいよ。」すごく嬉しかった。
「ありがとうございます。」つぎの約束をして、わかれた。
それからのわたしはよく笑うようになった。
毎日たのしく充実していた。
向坂さんにあこがれる気持ちはない。
だけど、好きだという気持ちはあった。それが、どんな感情なのかまだわからないけれど。
歌も向坂さんのおかげでうまく歌えるようになっていった。
「最近の美咲さんはしあわせそうだし、たのしそうだね。とてもいいことだけど、それは向坂さんのおかげですか?」三上さんが聞いてくるとわたしは笑顔でこたえた。
「そうだとおもいます。向坂さんなんだかんだでやさしいですし。」すると三上さんはまじめに言った。
「おれも美咲さんをしあわせにしたい。おれとつきあってくれませんか?」いきなりの告白に耳をうたがった。
「おれは本気です。向坂さんからあなたをうばいたいんです。つきあってくれませんか?」なんと言えばいいのかわからなくてこまっていた。
「今は気持ちがまとまりません。1週間待ってください。」わたしがそういうと三上さんはうなずいた。
「わかったよ。かんがえてくれてありがとう。」
きっと三上さんは勇気をだしてくれたのだから、わたしもまじめにこたえなくてはとおもった。
告白されてから1日たち、向坂さんから連絡がきた。
家にきてほしいというないようだった。
わたしはかいてあった住所のところまで行った。
チャイムをならすと向坂さんがでてきてくれた。
「おれの部屋に案内するからきて。」
「わかりました。」わたしは家にあがり向坂さんの部屋に案内された。
そこにはグランドピアノとベッドと机がおいてあった。
「今からひくきょく聞いてて。」向坂さんはピアノをひきはじめた。
あかるくて切なさもかんじさせるメロディーのとりこになってしまった。
小さな世界にピアノのメロディーがひびきわたり、その音がその場をしはいした。
ひきおわると向坂さんはわたしに言った。
「最初はつめたくして悪かったとおもってる。おれとつきあって。」その言葉をわたしは待っていたような気がした。
とても嬉しくてしあわせだった。
「よろしくおねがいします。」あのきょくはわたしのためにつくってくれたのだとわかった。
それから何年かたち、わたしはあこがれの歌手になれた。
たまに向坂さんのピアノにあわせて歌うこともある。
おたがい忙しいけれど、記念日の日は仕事を休んでいる。
世界的な歌手にはなれていないが、毎日しあわせにくらしていた。
そんなある日のこと。
いつものようにレッスンに行くと先生がまじめな顔でわたしにいった。
「あなた、まったく歌がうまくならないわね。あなた、歌手のゆめあきらめたほうがいいわよ。歌がすきならアイドルになればいいと思うわ。かわいいからアイドルにならなれるわ。」そんなことを言われ、わたしはショックだったけれど、ゆめをあきらめるつもりはまったくなかった。
「わたしはあきらめません。たしかに歌はへたかもしれません。でも、歌をすきで、歌手になりたいというゆめは強くもっています。たしかにアイドルも歌えますが、それがメインではないですから。」先生はそれいじょうなにも言わなかった。
レッスンが終わり、帰ろうと歩いていると、二人の話し声が近くで聞こえてきた。
「今日もよかったですよ。今では向坂和哉は世界的に有名なピアニストですよ。」
「べつにうれしくもないし、めいわくなだけ。」わたしは向坂さんのファンだ。ひとめ見たいとおもい声のする方へむかった。
そこには黒いスーツをきた向坂さんと若い男性がいた。
二人は同じぐらいの歳の友達だろうかと思った。
「あの、すいません。」わたしが声をかけると二人はふりむいた。
「あ、聞こえてたならすいません。ほら向坂さんもあやまって。」
「なんで。おれべつにわるいことしてないし、むしろ、そいつがかってに聞いてたのが悪いんじゃないの?」正論を言われてなにも言えなかった。
「すいません。いつもこうなんです。」男性は頭を深くさげた。
「いえ。わたしこそすいません。わたし向坂さんにあこがれているんです。歌手をめざしてるんですけど、なかなかうまくならなくて。」男性は笑顔で言った。
「声、とてもきれいなのに不思議ですね。おれ、すこしですけど、おしえましょうか?」それにわたしはおどろいた。
「やめなよ。今あったばかりのやつをおしえるなんて。」向坂さんは男性をとめたが、男性はわたしをおしえてくれるようだ。
「おれ、歌手をめざしてる彼女をたすけたいんだ。どうしてそう思ったのかはわからないけど。放っておけないんだ。」わたしはうれしくてむねがあつくなった。
「おねがいします。わたし、頑張ります。」
「よろしく。おれは三上健。向坂さんのマネージャーです。」三上さんはあかるい表情だった。
「木村美咲です。わたしこそおねがいします。」わたしも名前を言った。
「そしたら美咲さん、明日からここにきてください。」住所がかかれた紙をわたされた。
「ありがとうございます。」
つぎの日、わたしは書いてある住所のところへ行った。そこは大きな家だった。
おそるおそるチャイムをならした。
しばらくするとドアがあいた。
「待ってましたよ。美咲さん。」三上さんが出迎えてくれた。
「今日からお世話になります。よろしくおねがいします。」
「じゃあ、さっそくですけど、カラオケに行きましょう。」わたしはその言葉におどろいた。
「どうしてカラオケなんですか?」
「まずは、すきなきょくを歌ってみて、楽しんでください。カラオケで、美咲さんの歌声も聞きたいですから。」楽しむことはたしかに大切だ。
最近レッスンばかりで楽しむということをわすれていた気がする。
「わかりました。おねがいします。」わたしは三上さんと二人で近くのカラオケ店にむかった。
歩いて5分ぐらいして店についた。
時間は2時間。今日は楽しもうと思っていた。
部屋に入りマイクをとり、さっそくすきな歌を歌った。
1きょく歌い終わると三上さんは拍手してくれた。
「歌がすきなんだってつたわるよ。たしかに今はだめかもしれないけど、練習すればよくなるよ。」今までの人はみんなわたしの歌を聞くと歌手にはむいてないと言ってきた。三上さんの言葉はとてもうれしかった。はげまされたような気持ちになった。
「ありがとうございます。とてもうれしいです。」わたしはもっと歌いたい気持ちになった。
「美咲さんのいいところはたかい音でなければ、ちゃんときれいな声がでてるところです。メロディーにあわせて歌えてるのもすばらしいです。ただ、たかい音になると声がでていないのが弱点です。それと、表情がかたいです。いろんなことを経験して、心を歌にこめるとよくなるとおもいます。」具体的なところまで言ってくれて勉強になる。
わたしに必要なのはいろんな経験が1ばんのような気がした。
今まで歌うことに必死で恋愛はしなかったし、友達もつくらなかった。
楽しいと思えることは、歌以外なかった。
「具体的にありがとうございます。」
「低い声のアーティストはいるから、それはかまいません。今美咲さんに大切なのはしあわせだと思うことです。歌手はただ歌うだけではなく、聞いている人をしあわせにしたり、感動させたりしなければいけません。今の歌声にはなにもかんじません。」きびしいことを言われたが、あきらめる気はなかった。
「頑張ります。今の言葉でますますやる気になりました。」三上さんは笑顔だった。
「美咲さんはすごいですね。その気持ちは大切です。美咲さんをかならず輝くアーティストにします。」
三上さんとの時間はゆいいぎな時間になった。
「今日は帰りましょう。のどをいためては歌えませんから。」わたしと三上さんはカラオケ店をでた。
帰り道を歩いていると、向坂さんと偶然であった。
「三上、ほんとにおしえてたの?」
「美咲さんはすごいですよ。きっとだれかにどれだけ言われても歌手になりたいってゆめをあきらめないよ。」向坂さんはあきれていた。
「あ、向坂さん、おねがいがあります。美咲さんさえよければですが、美咲さんとデートしてください。」わたしはおどろいて声も出なかった。向坂さんはいがいと冷静だった。
「なんで。あんたがおしえてるんだからあんたがしなよ。」
「1日だけでいいからさ。美咲さんはどう?」話をふられてすこし間をあけ、こたえた。
「わたしにはしあわせな経験が必要なんですよね。なら、してみたいです。」三上さんは満足そうな笑みをうかべた。
「よかった。向坂さんもいいよね?」向坂さんはためいきをついた。
「わかった。」いやだということがみてわかる。
「すいません。やっぱりやめておきます。向坂さんいやみたいなので。」わたしはたえられなくなり、言ってしまった。
向坂さんはわたしをにらんだ。
「あんた、人がつきあってあげるのにことわるんだ。べつにいいけど。」あこがれていた気持ちはきえていった。
「そういわないでくださいよ。遊園地にでも行ってきてください。ペアチケットあるので。」ことわりづらかった。
「わかりました。行ってきます。」2日後に二人で遊園地に行くことになった。
「向坂さん、くれぐれも彼女をなかせたりしないでくださいね。」
「はいはい。わかってるよ。」そう言ってその日はわかれた。
そして2日がたち、わたしはすこしおしゃれをして約束の場所にむかった。
向坂さんはすでにきていた。
「すいません。待ってましたよね。なにかおごりますから。」
「べつに待ってないけど、なにかおごってくれるなら遠慮はしないから。」しかたないと覚悟した。
遊園地に入ると観覧車が真っ先に目に入った。
「最初お化け屋敷から行きたいんですけどいいですか?」
「そんなとこ行きたいんだ。いいよ。」わたしはとてもこわがりだけど、なぜか入りたくなってしまう。
入ると、薄暗くぶきみだったけれど、二人だからかいつもよりはこわくなかった。
「向坂さん、手をつないでもいいですか?」暗くて表情はみえなかったけれど、いがいなこたえがかえってきた。
「いいよ。」わたしの手をぎゅっとにぎってくれた。あたたかい手。わたしは安心できた。
途中でおいかけられたりしたけれど、向坂さんがいたからこわくなかった。
お化け屋敷から出ると、向坂さんはすこしわらっていた。
「あんたこわがりだね。」
「そうなんです。でも、見たくなるんですよね。」向坂さんは理解できないと言いたげだった。
「そこにベンチあるから休みなよ。」いがいと優しい向坂さんを見てなんだか嬉しくなった。
わたしと向坂さんはベンチですこし休んだ。
「ありがとうございます。つぎはどこにいきますか?」
「あんたがきめなよ。どこでもいいからさ。」わたしはすこしかんがえた。すると、向坂さんが立ち上がりどこかへ行こうとしていた。
「どこに行くんですか?」わたしが聞くと向坂さんは歩きながらこたえた。
「アイスでも買ってくる。」すぐに見えなくなってしまった。
わたしは遊園地のパンフレットを見ていた。
観覧車にのった男女はかならずむすばれるとかかいてあったけど、あまり気にしなかった。
「ねえ、君一人?よかったらおれらとまわらない?」とつぜん3人の男の人に声をかけられた。
わたしはなにも言えずにいた。そのときだった。
「あんたたちなにしてんの?」向坂さんがもどってきた。
「お前には関係ないだろ。」
「あるけど。そいつおれの彼女。デートしてんだからじゃましないで。」3人は舌打ちしてどこかへ行ってしまった。
「ほらアイス。あんたなにがすきかわからないし、適当に買ってきた。」バニラのアイスを手渡してくれた。
向坂さんもおなじバニラのアイスをもっていた。
わたしのとなりにすわり、わたしより先に食べていた。
「向坂さん、いろいろとありがとうございます。」
「なんぱには気をつけて。」その一言だけだったけど、なんとなくきょりがちじまった気がした。
食べ終わるとつぎの行き先をきめた。
「あんたさけんでたし、観覧車にでものろうか。」わたしのことをちゃんとかんがえてくれていた。
「そうですね。」わたしたちは観覧車の方にむかって歩いた。
受付に行くと高校生ぐらいの女性が向坂さんを見て興奮していた。
「向坂和哉さんだ。いっしょにのりたい。」受付の仕事を忘れているようだった。
「ほらほら、ちゃんと仕事して。」中年の女性が出てきて、お金のうけわたしをしてくれた。
観覧車はとてもゆっくりうごいていた。
景色はすごくきれいで遊園地の中だけではなく、太陽のひかりできらきらしている海も見えた。
わたしはそんな景色を見て、興奮してしまった。
その後もわたしは向坂さんとたのしくすごした。
あっという間に夕方になった。
「今日はありがとうございました。」わたしは笑って向坂さんに今日のおれいを言った。
「つぎは水族館に行こうか。あんたとならデートしてもいいよ。」すごく嬉しかった。
「ありがとうございます。」つぎの約束をして、わかれた。
それからのわたしはよく笑うようになった。
毎日たのしく充実していた。
向坂さんにあこがれる気持ちはない。
だけど、好きだという気持ちはあった。それが、どんな感情なのかまだわからないけれど。
歌も向坂さんのおかげでうまく歌えるようになっていった。
「最近の美咲さんはしあわせそうだし、たのしそうだね。とてもいいことだけど、それは向坂さんのおかげですか?」三上さんが聞いてくるとわたしは笑顔でこたえた。
「そうだとおもいます。向坂さんなんだかんだでやさしいですし。」すると三上さんはまじめに言った。
「おれも美咲さんをしあわせにしたい。おれとつきあってくれませんか?」いきなりの告白に耳をうたがった。
「おれは本気です。向坂さんからあなたをうばいたいんです。つきあってくれませんか?」なんと言えばいいのかわからなくてこまっていた。
「今は気持ちがまとまりません。1週間待ってください。」わたしがそういうと三上さんはうなずいた。
「わかったよ。かんがえてくれてありがとう。」
きっと三上さんは勇気をだしてくれたのだから、わたしもまじめにこたえなくてはとおもった。
告白されてから1日たち、向坂さんから連絡がきた。
家にきてほしいというないようだった。
わたしはかいてあった住所のところまで行った。
チャイムをならすと向坂さんがでてきてくれた。
「おれの部屋に案内するからきて。」
「わかりました。」わたしは家にあがり向坂さんの部屋に案内された。
そこにはグランドピアノとベッドと机がおいてあった。
「今からひくきょく聞いてて。」向坂さんはピアノをひきはじめた。
あかるくて切なさもかんじさせるメロディーのとりこになってしまった。
小さな世界にピアノのメロディーがひびきわたり、その音がその場をしはいした。
ひきおわると向坂さんはわたしに言った。
「最初はつめたくして悪かったとおもってる。おれとつきあって。」その言葉をわたしは待っていたような気がした。
とても嬉しくてしあわせだった。
「よろしくおねがいします。」あのきょくはわたしのためにつくってくれたのだとわかった。
それから何年かたち、わたしはあこがれの歌手になれた。
たまに向坂さんのピアノにあわせて歌うこともある。
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