鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

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ー光ー 第一章 無能神様

第五話 天家一族

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「お...おはようございます。遅刻してすいません...」


 天光琳は扉を少し開き、その隙間から恐る恐る喋った。
 皆は朝食を食べ始めていた。


「......」
 (......うっ)


 天宇軒が細い目で天光琳を見つめ、天光琳の心臓は飛び出そうなほどドキドキしていた。


 (こりゃ後で何か言われるぞ...ははは......)


 そう思いながら天光琳はゆっくりと部屋に入った。


「疲れていたのでしょう、仕方ないわ。さあ、早く座りなさい。お腹空いているでしょ?」

「あ、はい!」


 天万姫の優しい言葉が聞こえ、天光琳は安心した。
 朝食、夕食は天家一族が揃って食事をする。
 昼食は忙しく時間が取れない場合があるため、揃うことは少ない。

 部屋には一卓の長方形の大きなテーブルが置かれており、入り口から一番遠い席に天宇軒が座っていて、右側には天万姫、その隣に天麗華が座り、左側には天光琳が座る。

 そして天光琳の隣には天宇軒の三歳年下の弟の天浩然テンハオラン、天麗華の隣には天浩然の妻天語汐テンユーシー、その隣に天浩然と天語汐の長女天李偉テンリーウェイ、次女の天李静テンリージンが座り、天浩然の隣には長男の天俊熙テンジュンシーが座っている。

 天李偉が一番上で、二番目は天俊熙、三番目が天李静だ。
 天俊熙は天光琳と同い年だが、兄弟のように仲が良い。

 天光琳が失敗してしまった時、よく励ましてくれる良い神だ。整った顔立ちで、つり目で少し口が悪いこともあるのだが、実は明るく大雑把な性格で、面倒見もよい。

 天光琳にとって兄のような存在だ。

 しかし天俊熙の姉である天李偉は天光琳に対して冷たい態度をとる。一番下の天李静は口数が少ないため、天光琳はあまり話したことがない。

 そのため天李偉と同じように嫌われているのかどうかは分からない。


 朝食は天家に仕えている神数名が作っている。
 その神々は三十代~五十代ぐらいの神の力がそこそこ高い者たちで、料理に関わる能力を持っている者が集められている。

 また、炎を出すことが出来る者や物を操れる者などもいて、素早く作ることができ、料理は全て冷めることはなく温かくて美味しい。

 しかし天光琳は遅れてきたため少し冷めてしまっている。


「天光琳様、温め直しましょうか?」


 いつも飲み物を注いでくれる男神が天光琳に言った。


「あっ...いえ、大丈夫です」
「分かりました。それではごゆっくり」


 男神は天光琳の好きなジャスミン茶を注ぎ、後ろに下がった。

 この神は好きな食べ物がわかる能力がある。

 しかし好みの衣装、好みの匂いなど、他の好みは分からない。...むしろ、神界で好みが全てわかる能力を持つ神はいない。奇跡の神天麗華ですら分からないのだ。

 恐らく千年以上必死に人間の願いを叶え、神の力を高めていけば神の全ての好みが分かる能力を手に入れることができるだろう。
 ......神界の神々は百年ぐらいしか生きられないので無理なのだか。

 今日の朝食はクリームと蜂蜜がかかったフレンチトースト。さらに、オムレツ、ベーコン、ソーセージが平皿に綺麗に盛り付けられている。また、別の皿には、様々な緑黄色野菜と生ハム、四角く切ったチーズが入っているシーザーサラダ。
 深いお皿にブルーベリー、ラズベリー、いちご、ミントの葉が入っているヨーグルトがある。...洋食だ。

 神界では人間界の様々な国の食べ物を取り入れているため、料理の種類は様々だ。

 天光琳はフレンドトーストをナイフで一口サイズに切り、クリームをたっぷりとつけてから、口へ運んだ。


 (美味しい...幸せ...)


 天光琳は昨日の昼食ぶりにご飯を食べたため、いつもよりさらに美味しく感じた。

 そして天宇軒に後で怒られるかもしれない...と先程まで不安でいたが、今では一瞬で消えてしまっている。


 小柄で細身の体型の天光琳だが、ご飯は結構食べる方だ。
 料理の量は神によってそれぞれ違う。

 よく食べる天浩然、天光琳、天俊熙は多め。
 少食の天万姫、天李静は少なめ。
 天宇軒、天麗華、天李偉は普通の量だ。


「光琳は本当に美味しそうに食べるわね」


 天万姫がお茶を両手で持ちながら言った。


「だって本当に毎日毎日料理が美味しいんですもん...」


 天万姫はふふっと笑った。

 そうだ。美味しいから仕方がないのだ。天光琳はこの世界の皆にも城の食べものを食べてもらいたい...と心の中でよく思っている。それほど美味しいのだ。

 天光琳はまた一口、幸せそうにフレンチトーストを食べた。



 朝食の時間が終わった。

 天光琳は残さず、全て完食した。...むしろまだ足りないぐらいなのだが......。

 口をふき、立ち上がろっとしたその時。


「わっ!!」
「ひっ!?」


 何者かが後ろから驚かせてきた。


「はははははっ、いい反応だ、ははははは!」
「もう......俊熙...そんなに笑わないでよ」


 天俊熙だ。天俊熙は涙が出るほど笑っている。その姿を見て天光琳はムスッと頬をふくらませる。


「そんな顔するなよ、そうだ、お前今日は何する予定だ?」


 笑いすぎて涙が出てきた天俊熙は目を擦りながら言った。


「え...今日は......修行と稽古かな」


 天光琳は苦笑いをしながら言った。すると、天俊熙は心配そうな顔をした。


「"今日も"だろ?今日ぐらいは休んだ方がいいんじゃないか?...クマができてるぞ」

「でも...」


 現在、天光琳と天俊熙は十八歳。修行と舞の稽古は五歳~十歳までなので本来ならば天光琳は修行と稽古をしなくても良いのだ。

 しかし神の力を使えないため、使えるようになるまで修行と舞の稽古をするしかない。

 十八歳になっても神の力を使えないので天光琳は焦りを感じている。そのため、毎日修行と舞の稽古をしなければ気が済まないのだ。


「お前の気持ちはわか......いや分からんか、いや分かる。......分からん!」
「ぷっ...どっちだよ...!」


 天光琳は思わず笑ってしまった。天俊熙は天光琳を励まそうとしたのだが、神の力を使える自分は天光琳の気持ちがわかるのか...と不安になった。

 しかし「分からない」て言うとさらに気分を悪くさせてしまうと思ったため、あんな変なことを言ってしまったのだ。


「まぁ...俺が言いたいのは、詰め込みすぎるのは良くない。......今日、俺は予定ないから光琳が良ければ久しぶりに遊びに行かないか?」


 天俊熙は手をポンっと叩きながら言った。


「えっ...うん!遊びたい!」


 天光琳は目を大きく開いて驚いたあと、笑顔で言った。

 天光琳は修行と舞の稽古ばかりで最近ずっと休みを取っていなかった。最後に天俊熙と遊んだのは、十六歳の時だ。

 決して天俊熙は天光琳のことを邪魔している訳では無い。
 天光琳は無理をする性格だとよく理解している。なので、休みを取らせるために予定を入れ少しでも肩の力を抜けるように...と思ったのだ。

 天光琳も久しぶりに天俊熙と遊びたかった。しかし自分から誘うと、『十八歳になっても神の力を使えないのに随分と余裕だな』と思われてしまうのではないかと不安で誘えなかったのだ。


「よしっ!じゃあ三十分後、城の外の池の前で集合!」


 天俊熙は手をパチンっと合わせ嬉しそうに言った。


「わかった!」


 天光琳も嬉しそうに笑顔でいい、二神は準備をするため、部屋へ向かった。
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