鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

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ー光ー 第一章 無能神様

第二十四話 眠れない夜

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 (眠れない......)


 天光琳はベットから起き上がった。

 明日のことを考えると早く寝なければ行けないのだが...寝ようとしても、緊張して眠れないのだ。

 目を閉じてじっとしていても眠れず、少し体を動かそうとベットからおり、静かに部屋でぐるぐると歩き回った。


「......はぁ」


 三周回ったところで飽きてベットに座った。


「...」

「......」

「.........はぁ」


 (眠れない!!)


 天光琳はまたため息をついた。

 秒針の音がいつもより大きく聞こえる。
 静かだ...。

 天光琳は部屋の扉を空け、部屋から頭だけを出し、廊下を見た。


 (皆...寝てるよね...)


 シーンとしている。

 天光琳は外に出て風に当たろうと思い、髪を簡単に一つにまとめ、薄暗い廊下に出て歩き始めた。


 ✿❀✿❀✿


 大広間にあるベランダに到着した。

 夜の風は少し冷たいが気持ちが良い。
 夜風にのって桜の花びらが運ばれてきた。
 そして天光琳の前髪に付いた。

 天光琳はその花びらを取りながら辺りを見渡した。天桜山は夜でも暖かい光に包まれている。街を見るとまだあかりが着いている家もある。

 天光琳は胸の高さまである高い柵に寄りかかった。
 しばらくボーッと眺めていると、目から涙が流れてきた。


「光琳...?」

「わっ!?」


 突然後ろから声がして天光琳は驚いて振り返った。
 天麗華だった。


「驚かせてしまってごめんなさい...。貴方も眠れなかったのね......って、どうしたの!?」


 どうやら天麗華も眠れなかったそうだ。

 天麗華は振り返った天光琳の目から涙が流れていることに気づいた。


「姉上...僕...怖くて怖くてたまらないんです」


 天麗華はベランダにあるベンチに座り、その隣に天光琳を座らせた。


「明日殺されてしまうかもって......もうここにいられるのも最後かもしれないって思っちゃうんです......」


 天光琳は十八歳だが、天麗華は昔と同じように下を向いている天光琳の頭を撫でている。


「姉上や俊熙がいるのに...怖いんです。...姉上は...怖くないんですか......?」


 天光琳はゆっくりと顔を上げ天麗華の顔を見ながら言った。


「私もものすごく怖いわ...。自分が死ぬのも...貴方たちが殺されてしまうのも有り得るもの...。あの妹さんのようになってしまうかもしれないって思うと怖くてたまらないわ...」


 天麗華も同じで怖いのだ。


「けれど、私たちが明日行かないと、この国はどうなるか分からない。だから行かなければいけない。この国を守るのよ、私たち三神が......とても素敵じゃない?」


 天麗華は昔からポジティブに考える神だ。天麗華は微笑みな
 がら言った。


「一緒に英雄になりましょう。皆を見返してやりましょう、ね!」

「...はい...!」


 天麗華は天光琳を撫でていた手を止め、天光琳の両手を軽く包み込んだ。


「明日はきっと上手くいくわ。誰一神命を落とさずここに帰ってくる。大丈夫よ」


 天麗華の言葉で天光琳は少し緊張が解けた。


「そのためにはもう寝なくてはいけないわね」

「でも...僕、怖くて...自分の心臓の音がうるさくて眠れないんです」

「ふふふ、同じね」


 天麗華は笑顔で言っているが、少し不安そうな表情をしていた。


「姉上もそうなんですか?」

「そうよ。こんなの初めてだわ」


 天麗華は遠くを見つめながら言った。


「怖いと眠れないなんて不思議ですね」

「そうね。でも私の場合は怖いだけじゃなくて、英雄になるんだって楽しみで眠れないのかもしれない、ふふふ」


 本当は嘘だ。天光琳は分かっていた。

 天麗華の手はすごく震えている。しかし姉として弱い姿を見せたくないのだろう。

 天麗華は本当に凄く良い姉だ。


「おいで」


 天麗華は自分の脚をトントンと叩いた。
 膝枕をするつもりだ。


「え!?ぼ、僕はもう成長したから大丈夫ですよ!?」


 天光琳は小さい頃、よく天麗華に膝枕をしてもらっていた。お昼寝の時間は必ずやって貰っていた。頭を撫でるとスヤスヤとすぐに眠ったため、今の天光琳でも眠れるのではないかと思ったのだ。

 天光琳は顔を真っ赤にして首を横に振った。

 しかし天麗華は諦めなかった。


「いいからいいから~」


 仕方なく天光琳は天麗華の脚に頭を乗せた。


 (なんだか懐かしい気分になる...)


 すると天麗華は頭を撫でてきた。


「ちょ、姉上!もう子供じゃないので!」

「ふふふ」


 天麗華はそのまま撫で続けた。
 するとだんだん眠たくなってきた。
 心臓の音はうるさくない。


「姉上、もう部屋に戻ってもいいですか?」

「もう少しだけ」


 天光琳は部屋に戻ろうとしたが、天麗華が止めた。天麗華は目を閉じたまま微笑んでいる。

 もう少しとはどのくらいだろう。
 そう思いながら天光琳は目を閉じた。
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