鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

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ー光ー 第三章 旅の後

第四十八話 診断

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 が医務室の扉を開けると、医務室にいた神々は皆二神に注目する。


「天俊熙様と天光琳様よ!」

「どうしたのかしら...」

「道を空けなさい!天様達がお先よ!!」

「天俊熙様、天光琳様、お先にどうぞ」


 待合室で待っていた神々は皆二神に順番を譲る。
 中には咳をしているもの、顔色が悪いものもいるのだが、皆王一族が優先だと思っているため、譲ってくれる。


「ありがとうございます。ですが僕は怪我を診てもらうだけなので大丈夫です...」


『なんだ、天光琳の方か』とボソッとつぶやく者も入れば、『遠慮しなくても大丈夫ですよ』と言う優しい者もいた。

 しかし苦しそうにしている者がいる中で、軽傷の自分が診てもらう訳にはいかない。

 そのため、回れ右して今すぐ医務室から出たかったのだが......再び天俊熙に手首を掴まれた。


「逃げるんじゃないぞ。ここで座ってろ」

「はぁい......」


 そう言って二神は待合室で待つことにした。





 二十分後、順番が来て、女神が二神を診察室へ案内した。
 天光琳は立ち上がり、女神の近くへ歩いていくと、腕を組んで壁にもたれていた天俊熙も着いてきた。


「俊熙は来なくても良いのに...」

「だってお前、泣き叫びそうだもん」

「え?いや...あー......うん...」


 否定しようとしたが、有り得るため否定しきれなかった。


 二神は一番奥の部屋へ案内された。
 そして扉の前まで来ると、女神は歩くのを辞めた。


「こちらです」


 女神はそう言って扉を開けると、背もたれ付きの椅子に座っている国峰の姿が見えた。


「おぉ、光琳様と俊熙様ではないか!久しぶりじゃのぅ!」

「こんにちは」

「こんにちは......」


 診察室に入ると、女神は椅子を指さし、天光琳に「座ってください」と言ったため、天光琳はその椅子に座った。

 女神はもう一つ、天俊熙用に椅子を用意しようとしたが、天俊熙は「俺は大丈夫です」といい、天光琳の後ろに立った。
 そして女神も天光琳の後ろ、天俊熙の隣に立った。


「今日は......あ、もしかして光琳様の怪我の事かな?」

「はい...」


 天光琳は小さく頷いた。
 国峰は今回、手当をしていなかったが、話は天宇軒から聞いていたそうだ。

 何かあったら頼む...と。


「昨日の夜、ちょっと悪化しちゃったみたいで......」


 天俊熙は代わりに話した。


「見せてもらえるかな」


 国峰がそう言うと、天光琳は頷いた。同時に表情が固くなる。


「怖がらなくても大丈夫ですよ」

「そうだよ」


 女神と天俊熙は後ろから苦笑いしながら言うと、国峰が悲しそうな顔をした。


「毎回光琳様に怖がられるが......そんなに怖いかの...?」


 コクコク、と二回頷いた。
 別に天光琳一神の時に、雑に診察していたとかそんなことは一度もない。

 天光琳は大怪我をした時にしか医務室に行かないため、手当には時間がかかり、ものすごく痛い。そのため怖いと感じている。
 実に可哀想な国峰だ。


 天光琳は嫌そうな顔をしているが、診ない訳には行かない。そのため診察を始めた。


 前を開けると、包帯には血が滲んでいた。
 包帯を解くと、左首から右脇腹まで広がる傷が現れた。
 首周りと脇腹辺りの傷は薄くなってきている。

 しかし胸辺りの傷はまだじわじわと血が滲んでいる。


「傷が完全に開いた訳では無いから、縫わなくても大丈夫そうじゃな」

「よかったな」


 ふぅ...と天光琳は安心した。
 実は今まで何度も縫ってもらったことがある。
 修行中、崖から落ちて大怪我をしてしまった時や、小さい頃に階段から落ちてしまったことがあり、その時にも塗ってもらった。

 今でもその痛みを覚えている。怪我の痛みより、縫う時の痛みの方が痛かったと記憶に残っているのだ。 


「ぎっ!!いだっ!!!」


 国峰は天光琳の首にある傷を触った。


「あぁすまんの......薄くはなっているが、まだ痛むのか...」


 そう言って国峰は神の力を使い、手から緑色の光を出した。それを左首から右脇腹のに当てた。
 だんだん痛みが治まってくる。


「凄い...」


 天光琳は驚いた。実はずっとじわじわと痛んでいたのだが、国峰の能力のおかげで痛みが一瞬で引いた。


「完全に治った訳では無いぞ。全て能力で治してしまうと、体は能力に頼るようになり、治りが悪くなってしまう。自然に治すことも必要だからのぅ...」


 国峰の言う通り、神の力で完全に治すことができるのだが、完全に治してしまうと次に怪我をしてしまった時に治りが遅くなってしまう。


「あと包帯だけでは危ないから......テープを貼っておくかの」


 そう言うと、後ろに立っていた女神が診察室の奥へ行き、天井まで続く大きく沢山の引き出しがある薬品棚からテープを取り出し国峰に渡した。
 国峰が礼を言うと、女神はまた天光琳の後ろ、天俊熙の隣に立った。


「ちと痛むぞ...」


 貼る時にはどうしても傷口に触れてしまうため、痛むのは当たり前だ。
 天光琳は必死に我慢したが......


「ひぃ...!痛い痛い!」


 あまりの痛さに叫んでしまった。






「終わったぞ、すまんな...」

「大丈夫です...ありがとうございます......」


 天光琳は涙目でお礼を言った。


「そこまで怖くなかっただろ?」

「うん......。あ、そういや俊熙、笑ってたでしょ!」

 天光琳が赤ちゃんのように泣き叫ぶため、天俊熙はずっと笑っていた。
 女神も笑いを堪えていたため、ずっと肩が震えていた。


「ごめんごめん」


 天光琳は頬をふくらませた。


「はい、ここには塗り薬とテープと痛み止めと包帯が入っているからな」


 国峰が天光琳に紙袋を渡すと、女神が追加で説明してくれた。


「塗り薬は入浴後に塗ってください。そして、塗り終わったら傷口にテープを貼って、上から包帯を巻いてください。痛み止めはまた痛み出したら飲んでくださいね」

「分かりました」


 天光琳は中身を確認し、両手で紙袋を抱え、立ち上がった。


「ありがとうございました...!」


 お辞儀をしながら言うと、国峰は笑顔で言った。


「何かあったら直ぐに来ても良いからな、いつでも診てあげるからのぅ」

「は...はい...」

 今回は怖くなかったものの、やはり国峰は怖いと思ってしまう。全然そんなことは無いのに。


 天俊熙もお辞儀をし、二神は診察室から出た。


 ✿❀✿❀✿


 診察室から出ると、待合室で待っている神々が天光琳を見てクスクスと笑った。

 最初はなぜ笑われているのか理解出来なかったが、何となく分かった...


「俊熙......笑われてるのって......僕が叫んだからかな...」

「そうだな、外まで聞こえてたみたいだな」


 天光琳の顔は茹でダコのように真っ赤になった。


「恥ずかしすぎる...」

「どんまい」


 天俊熙は苦笑いしながら言った。
 恥ずかしすぎて耐えられなかったのか、天光琳はそのまま走って医務室を出た。


「ちょっ、怪我人走るなって......!」


 天俊熙も早歩きで医務室から出た。

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