鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

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ー光ー 第四章 玲瓏美国

第六十八話 扇子専門店

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 入る時は気づかなかったが、そういえば、簪
 専門店と扇子専門店は同じ建物で出来ていた。

 内装も同じような造りだった。

 中に入ると、背が高い女神が出てきた。


「いらっしゃいませ~!」


 この女神の髪には二本の簪がついている。
 恐らく、隣の店で買ったものだろう。
 そういえば、簪専門店の女神の帯にも、扇子を挟んでいた気がする。
 それはここで買ったものだろうか......。

 分からないが、仲は良さそうだ。


「さ、選ぼうか!」

「そうだね!」


 お土産はそこまで多くなくて良いだろう。
 天麗華が女神たちに渡すのであれば、天光琳と天宇軒は男神...つまり、天宇軒と天浩然の分を渡すだけでよい。

 この店も男神用、女神用と別れているが、今回は女神用には用はない。
 そのため、天麗華も男神用のところへきた。


「俺、こういう普段使うような扇子持ってないんだよなー。姉様(ねーさま)がよく使ってるから、少し気になってるんだよね」

「そうだよね、色々な扇子持ってるのかな......日によって柄や色が違うよね」


 姉様とは天李偉のことだ。
 天李偉は数え切れないほどの扇子を持っているため、二日連続同じデザインの扇子を持っていることは一度もない。


「姉様は昔から集めるのが好きなんだよね、扇子や簪、ネックレスやイヤリング。俺からすると、そんなにいるかってなるけど」

「そう?私も可愛いものは集めたくなるわよ。服や気分によって変えたりするの、とても楽しいわよ」


 へーっと天光琳たちは言った。
 天光琳は何となくわかるかも...と思っているそうだが、美朝阳と天俊熙はよく分かって無さそうだ。


 天光琳と天麗華は天宇軒のを、天俊熙は天浩然の扇子を選び、扇子屋の女神に渡した。


「ん?......これ、今日俺が買った簪のデザインと似てる気がする...」


 天俊熙は銀色の龍が描かれた扇子に目が止まった。
 龍のデザインは、あの簪とそっくりだ。


「こちらのお店は、隣の簪専門店とデザインを合わせたりしています!セットで買いに来るお客様がいますので、同じデザインの商品を売ろうって話になりまして......」

「そうなんですね」


 天俊熙はそう言うと、龍の扇子を手に取った。


「それ、買うの?」

「うん。一つは欲しいなーって思って。だから、簪とお揃いのこの扇子を買おうかなってね」


 天俊熙がそう言うと、天光琳ははっと何か思いついたようだ。


「あ、ねぇねぇ。俊熙ってもうすぐ誕生日だよね。これ、僕が買うよ!」

「おー、いいの?」


 天光琳はうんと頷いた。
 天俊熙は一週間後、誕生日だ。
 毎年天光琳は天俊熙の誕生日プレゼントで頭を抱えている。

 酒を渡すのは何か違うし、本を渡しても興味がないのだから困るだけだ。
 去年は悩み、たしか少し高いスイーツを渡した気がする。

 今年はどうしようか迷っていたので、これは調度良い。


「ありがとな!」


 天光琳は天俊熙から扇子を受け取ると、天宇軒用の扇子と一緒にお金を払った。

 扇子専門店の女神は、話を聞いていたようで、丁寧にラッピングしてくれた。

 扇子は今すぐ使いたいと言う訳では無いため、誕生日に渡してくれれば良いということになった。

 天俊熙も天浩然用を買い終えたあと、四神は店をでた。

 外に出ると薄暗くなってきていた。
 空を見るとオレンジ色に染まっている。

「ちょうど良い時間だね、戻ろうか」


 そろそろ祭りが終わるため、広場に戻ることにした。
 毎回、美梓豪が舞台に上がって、開館式をするそうだ。

 今日は玲瓏美国の街をまわることができ、二神は満足していた。
 しかし、今日は街をまわっただけだ。まだまだ玲瓏美国の見所はある。
 ただ、それを全て一日でまわろうとするのはさすがに難しい。
 そのため、明日行こうと言うことになった。
 明日は美朝阳だけでなく、美鈴玉、美暁龍、美雪蘭、美夢華も一緒に来るそうだ。


「おー、おかえり~!楽しかったか?」

「はい!凄く楽しかったです!」

「また行きたいです!」


 広場に戻ると、酒を持った美梓豪がそういい、天光琳と天俊熙は笑顔で言った。
 すると、良かった良かったと、美梓豪は笑顔で頷き、またグビッと酒を飲んだ。

 美鈴玉、美雪蘭、美暁龍、美暁龍たちも街へ行っていたそうで、ちょうど帰ってきたようだ。

 美夢華は大きな袋を二つ手に持ってニコニコしている。


「何を買ってもらったの?」


 美朝阳がそう聞くと、美夢華は袋の中に手を入れ、ガサッと中から何か取り出した。
 小さな手に掴まれていたのはお菓子だった。


「母上がいーっぱい買ってくれたの!!」

「それは良かったね」


 美夢華はへへっと笑ったあと、お菓子を袋の中に戻し、自分の席に座った。

 美雪蘭と美暁龍もお菓子を買ってもらったようで、袋を一袋持っている。

 あまりお菓子を食べないのか、美雪蘭はお菓子の量が少なかった。


 この後、無事に開館式が終わると、先程まで賑やかだった玲瓏美国は静かになった。
 後片付けは護衛神や国の神々がやってくれるそうで、天光琳たちは城に戻ることにした。

 そして、夕食を終えたあと、昨日のように温泉に行き、部屋に戻ってきた。


「いや~今日は楽しかった~!」

「ねぇ~!」


 天俊熙と天光琳は背伸びをしながら言った。
 今日で二日目だが、あっという間に終わってしまった。


「美国の神々の演奏って、本当に綺麗よね」

「ですよね、母上のもいつか聴いてみたいなぁ」


 天光琳は帰ったら頼んでみようと思った。


「姉様たち、今頃何してるかなぁ」


 この時間は恐らく寝ているか、部屋でのんびりしている時間だろう。

 三神は玲瓏美国にいるため、桜雲天国の城はいつもより静かだ。


「さぁ、明日も早いし、寝ましょうか」

「そうですね」


 天麗華が電気を消すと、三神は目を閉じ、眠りについた。
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