鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

文字の大きさ
118 / 184
ー光ー 第九章 鬼神と無能神様

第百十七話 悪現る

しおりを挟む
「どういうこと......」

「さぁ、どういうことだと思う?......言ったら...光琳様は自分を責めて自分を殺してしまうかもしれないからなぁ......"まだ"教えないよ」


 自分を殺してしまう.....どういうことだろうか。
 そして『まだ』教えない......ということは何か企んでいるのではないか?
 ......と。


「光琳のせいで悪神が存在するのなら、光琳を殺してしまえば良い!」

「無能神様なんていらないわ!!」


「......!?」


 街にいた神々は声を揃えてそう叫んだ。
 中には泣いているものもいる。恐らく先程ドロドロの生物に家族が殺されたのだろう。


「何言ってるんだ!?」


 千秋は必死に皆にそう言ったが、皆は聞かない。


「ほぉ......。光琳様可哀想......。光琳様、どうですか?コイツら......"殺しちゃいませんか"?」


 鬼神がそう言うと皆は顔を青ざめ黙り込んだ。
 天光琳はその様子を見てふと嫌なことを思ってしまった。


 (悪神といれば......僕は...笑われたりしない......?)


 無敵だ。みなからもう笑われなくて済む。誰も天光琳をバカに出来ないのだ。だって......馬鹿にされたら殺せばよいのだから。

 ......いや、何を言っている?
 そんなの許されることなのか?
 そんなことしたらどうなる......恐らく、天俊熙や天麗華、千秋など大切な仲間は離れていくだろう。
 そんなのは良くない。


「殺さない......お前の仲間にもならない......!」


「......そうか。ではまだ足りないか」


 足りないとはどういうことだろう。
 すると、鬼神はフッと消えていった。
 鬼神がいなくなったのを確認すると、先程まで黙り込んでいた神々は再び怒鳴り出した。


「光琳を殺せ!」

「殺される前に殺すのよ!」

「国のお荷物だし、ちょうど良いだろ!」

「私の娘を返して!!」


 天光琳は立ち尽くした。
 なぜが逃げる気がしなかった。
 このままでは殺されてしまう。
 しかし脚が動かないのだ。......怖いとかでは無い。心のどこかに逃げようとしない自分がいるのだ。
 死にたくない、殺されたくない......しかし自分がいるから鬼神は存在する......ならば.........。


「光琳!!」


 すると何者かが天光琳の腕を引っ張った。
 ......はぐれていた天俊熙だ。
 そして天李静もいた。
 天俊熙は天光琳の腕を引っ張りながら走っていく。
 気のせいだろうか。天俊熙の手はすごく震えているように感じた。


「待って!」


 千秋も後ろから追いかけてきた。



 神通りの少ない所へ移動すると、天俊熙は天光琳の腕を離し、千秋の方を見た。


「お前......なんでついてきた!?」

「俊熙、千秋くんは大丈夫だよ」


 天光琳がそう言ったのなら大丈夫だろう。
 しかし天俊熙はまだ納得していないようだ
 。


「俊熙、この神は大丈夫だと思うよ。さっきだって......光琳と一緒に戦ってたし」


 天李静もそう言うと、天俊熙は千秋に対する警戒を緩めた。  


「それにしてもお前、なんで逃げなかった......」

「分からない」


 天光琳は下を向いたまま言った。
 それ以外何も言わなかった。
 天光琳自身もよく分かっていないのだ。なぜあの時逃げられなかったのか。


「とりあえずもう暗くなるから城に戻ろう。......千秋」

「......はい」


 千秋は天俊熙が怖いようで小さな声で返事をした。
 昔はそんなこと無かったのだが、今の天俊熙はなんだか怖く感じる。


「毒針は?」

「あれには毒は入ってないし、捨てたからもう持ってないよ。それに、もう光琳と俊熙とは前みたいに戻りたいから......もう傷つけたりはしない」


 千秋は真剣な顔で言ったため、天俊熙は千秋を信じることにした。


「俊熙、行こ」


 三神は千秋と別れ、城に戻って行った。
 千秋は三神の姿を眺めていた。
 ......すると。


「やっぱり怪しいと思ったよ」

「......!?」


 千秋は驚き、振り返った。
 すると睿、填可、明貴が立っていた。
 いつからいたのだろうか。


「睿......」

「光琳を殺せと言ったはずだ。俺たちは光琳のせいでどれだけ苦しい思いをしてきたのか、知らないのか!?」


 睿はそう言って千秋の頬を殴った。
 そして胸ぐらを掴んだ。


「アイツのせいなんだよ!?俺の母さんが死んだのはっ!!」


 睿の母はもう死んだのか?そんなの知らない。


「昔......俺の母さんは光琳のことを可愛がっていた。それで光琳が神の力を使えない無能神様だと言うことがわかった時、天光琳の悪口を言うやつが増えただろ?その時、「母さんは光琳をバカにしないで」と悪口を言っていたやつの前で言った。そしたらどうなったか......俺の母さんまで馬鹿にされるようになったんだよ。それだけじゃない。俺も父さんもだ。......俺の母さんは優しかったからさ......自分のせいだと責めて......亡くなった」


 填可、明貴はその事を知っているようだ。
 千秋は初耳だ。もしかしたら結構前から疑われていたのかもしれない。


「だからアイツを殺したいんだ。それなのにお前は邪魔をして......」

「邪魔......?僕は別に邪魔なんて」

「うるせえっ!!」


 千秋は強く押され、転んでしまった。
 別に邪魔はしていない。元々千秋が天光琳と話していた時に割り込んできたのだから。


「お前も殺してやる!填可、明貴!」


 睿がそう怒鳴ったが、二神はどうしようか戸惑っているようだ。

「なにしてる!」と睿が振り返って言ったのと同時に、千秋は立ち上がり逃げ出した。


「待て!!」


 日は落ちて、辺りは暗い。
 直ぐに千秋の姿が見えなくなってしまった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

とある中年男性の転生冒険記

うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...