鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

文字の大きさ
120 / 184
ー光ー 第九章 鬼神と無能神様

第百十九話 お兄様

しおりを挟む
 次の日。
 朝食の時間、天宇軒疲れきった様子は変わらないが普通に朝食を食べていたため安心した。
 しかし.........。


「光琳。お前はしばらく部屋にいろ。俊熙か麗華にも伝えておく。二神のそばにいるように」

「はい......」


 信用されていないのだろう。
 確かに天光琳が勝手に外出し、被害が出たら大変だ。
 しかし信用されていないと思うと胸が痛くなる。いつになったら信用されるのだろうか。

 そして今日は数名の護衛神と共に、昨日鬼神が現れたところに行き、調査をしに出かけた。

 天光琳は外出する訳にもいかず、本を読むことにした。
 天俊熙はソファに座り、お茶を飲みながら何か書いている。
 恐らく国の仕事だろう。
 天光琳は天俊熙がやっている仕事に興味を引かれ本を開いたまま眺めていた。


 (書くだけなら僕だってできるのに)


 神の力を使っている様子はなく、天光琳は自分でもできると思った。
 国の仕事は神の力が使えなければいけないと聞いていたが......使っていないではないか。


「よし、おーわり」


 天俊熙は羽根ペンを置き、背筋を伸ばした。


「なんの仕事?」

「昨日他国へ行った神々の記録をまとめてる。本当は国王がやるんだけど、俺もたまに手伝ってるんだ」


 昨日他国へ行った神々の記録なら、行った記録を見なければいけない。見るには神の力が必要だ。......やはり神の力は必要なのか。


 すると扉をノックする音が聞こえた。


「はーい」


 天光琳が開けに行くと、天李静が立っていた。
 天李静は大きな可愛い袋を両手で持っていた。


「俊熙、李静だよー」

「李静?珍しいな......どーした?」


 天俊熙は立ち上がり、扉の所まで行った。
 すると天李静はムッと頬をふくらませた。 


「用があるのは俊熙じゃなくて光琳」


 二神は「えっ」と驚いた。いつもあまり話さない天李静が来たということは、兄である天俊熙になにか用があるのかと思った。天俊熙も同じだ。しかしどうやらそうでは無いようだ。

 天李静は持っていた袋を天光琳に渡した。


「え?......えっと......」


 袋はズッシリと重かった。
 ガサガサっと音が聞こえ......中身はお菓子だろうか。


「昨日助けてくれてありがとう。光琳"兄様"」


 天李静がそう言った瞬間、天俊熙は「は?」と言った。
 それを聞こえなかったかのように天李静はスルーし、走って行った。


 (兄様......?)


 天光琳はぽかんと立ち尽くした。
 天李静にそう呼ばれたのは初めてだった。
 そう、初めて.........そうか。


「アイツ......妹のくせに俺の事呼び捨てしてくるくせに、光琳には『兄様』ってつけやがって......」


 そういえば天俊熙は兄であるのに呼び捨てされていた。通りで先程天李静が『光琳兄様』と呼んだ時天俊熙は「は?」と言ってきれていたのだろう。
 天光琳は苦笑いした。



 袋を開けてみると、中には大量のお菓子が入っていた。


「お......多......」

「ははっ、アイツらしいや。光琳の食える量考えろっての」


 天俊熙は苦笑いしながら言った。
 それほど感謝しているのが分かる。天李静は言葉ではあまり伝えないが行動で示すことが多い。今回もそういうことだろう。

 天光琳は嬉しくなった。




 そのあとも天李静はなぜが天光琳のそばに来るようになった。


「光琳兄様。元気ないね」

「えっ?そう......?」


 隣で天俊熙が不満そうな顔をしていると言うのに、天李静は目も合わせず天光琳と会話を続ける。
 天光琳はどうすれば良いのか分からず、とりあえず苦笑いした。




 次の日も天光琳と天俊熙が部屋でお茶を飲みながら話していると、天李静が来た。
 そして天光琳の隣に座ったため、天俊熙はため息をついて立ち上がり、天李静のお茶を用意した。


「全く......偉そうに......俺はお前の兄だぞ?」

「ねぇ光琳兄様」

「って、聞いてんのかお前っ!!」


 天俊熙がお茶を用意してくれたのにも関わらず、お礼を言わず天光琳の方を向いた。
 天俊熙は諦め、自分の席に座った。


「ごめんね」

「えっ何が?」


 天李静は天光琳の袖をちょこんと掴み、申し訳なさそうな顔をしていた。


「李静、ずっと光琳兄様のこと嫌ってたの」

「それ......本人の前でいうか、普通......」


 天俊熙は呆れた。
 言われても言われなくても、天光琳は知っているため驚きはしなかった。


「李偉姉様が光琳兄様のこと嫌いって言ってたから、李静も嫌いって思うようにしてたの。......でも今は違うよ。光琳兄様優しいもん」


 いつも一緒に夕食を食べていたが、天李静がこんなに喋る神だとは思っていなかった。
 天光琳は微笑んだ。

 ......が。


「待て、え?......姉様は光琳のこと嫌ってるのか?」


 天俊熙が聞くと天李静と天光琳は頷いた。
 そうか。天俊熙は知らないのか。
 天俊熙は優しい天李偉しか知らない。天光琳が知っているあの恐ろしい天李偉を知らないだろう......。


「知らなかった......てかなんで言わないんだよ」


 めんどくさい事になりそうなので言いたくなかったのだ。
 天光琳は苦笑いして目を逸らした。


 そういえば天李静は今までずっと天李偉といたのだが......最近はどうなのだろう。


 (あっ......)


 天光琳は嫌な予感がした。


「どうした?」

「いや......なんでもない......」







 それは当たっていた。
 どうやら不満そうにしているのは天俊熙だけでは無さそうだ。

 三神は部屋を出て天麗華の部屋に向かう途中だった。

 なにか視線を感じる......と思い天光琳は当たりを見渡した。

 ......向こうでずっとこちらを見つめているのは......天李偉だろう。

 せっかくの可愛らしい顔が台無し......と言っていいほど天光琳をすごい目で見ている。
 天光琳はお化けでも見てしまったかのようにそっと目を逸らした。


 (僕は...悪くない......)



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

とある中年男性の転生冒険記

うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...