鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

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ー光ー 第十章 鬼使神差

第百三十話 鬼神の力

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 城の前には多くの神々がいた。


「早く!早くして!!」

「押すな!」


 神々は皆他国へ逃げようとしているのだ。
 しかし天宇軒の許可がないと移動することが出来ない。
 皆は天宇軒を待っているのだ。
 しかし天宇軒は死んだ。

 ここにいる皆は知らないのだ。


「皆さん、落ち着いてください!」


 天浩然や天語汐、天万姫は中央入口の前で必死に皆に伝えている。

 天李偉、天李静たちは既に城から出て天光琳を探しに行ったのだが、この三神は出遅れてしまったのだ。
 城の前に神々が集まりすぎて出ることが出来ない。


「万姫さん......どうしましょう......」

「早く神々を他国へ逃げさせてあげたい......けれど宇軒さんがいないから......」


 せめてここにいる神々だけでも助けてあげたいのだが、ここにいる三神にはどうすることも出来ない。
 国王の許可がないとどの国にも行くことが出来ない。


「一体兄上はどこへ行ったのか......」

「死んだよ」

「「「!?」」」


 突然、上の方から声が聞こえ、三神は上を向いた。
 そして同時に城の前にいる神々の悲鳴が聞こえた。


「て...天光琳だ!!」

「逃げろ!!」

「皆戻れ!!」


 皆は慌てだした。
 しかし皆は逃げようと城とは反対方向に向いたが、なんと後ろにはドロドロの生物が大量に歩いてきていた。


「ひぃ!?」

「いやだ、死にたくない!!」

「殺される!!」


 皆は囲まれ逃げれなかった。


「光琳!」


 中央入口の部分に、天光琳は足をバタバタさせて座っていた。
 そしてこちらを見つめている。
 天万姫たちは天光琳の様子がおかしいことに気づいた。


「死んだ......?兄上が......?」

「光琳......そこは危ないから......降りておいで......」


 天万姫は天光琳の様子がおかしいと気づいているが、信じたくないのだろう。
 いつものように心配した。

 すると天光琳はふわりと降りてきた。


「あなた......神の力が......」


 神の力が使えないはずなのだが何故か使えている。
 屋根に座るのも、浮く能力がないと座れないだろう。


「神の力......なんで僕は神の力が使えなかったと思う?」

「......っ!?」


 天万姫は驚愕した。
 額に汗が滲んできた。
 天語汐と天浩然はなぜそんなに驚いているのか分からなかった。


「母上は分かるよね?......神の力が使えない理由......本当は自分のせいなんだーって」

「「え?」」

「......」


 天浩然と天語汐は驚き天万姫の方を見た。
 下を向き、焦っている様子だ。
 天光琳は右手から光を出し、扇を作った。


「これは鬼神の力だ。神の力なんかじゃない」


 鬼神の力......なぜ使えるようになっているのだろうか。天光琳は神だ。鬼神ではない。


「光琳......兄上は死んだのか?」


 天浩然は恐る恐る聞いた。


「うん。僕が殺した。姉上もね」

「「「!?」」」


 三神は驚きのあまり言葉が出なかった。
 二神が死んだ......だと?
 桜雲天国の国王と奇跡の神が無能神様によって殺されたのだ。
 それを聞いていた、桜雲天国の神々は絶望した。
 桜雲天国はもう終わりだ......と。

 そして次国王になるのは......天光琳だ。

 天光琳は神々が他国へ行くことを許可するわけが無い。
 それどころか、皆殺しにするつもりだ。
 国を滅ぼそうとしているのだから。

 天光琳は指をパチンと鳴らした。
 するとドロドロの生物たちが神々を目掛けて襲ってきた。


「うわぁぁぁあ!!!」

「助けてっ!!」


 神々の悲鳴が響く。
 天万姫、天浩然、天語汐は青ざめた。


「光琳、やめなさい!」


 天万姫が天光琳の腕を握ると天光琳は払いのけた。
 天光琳がそんなことをしたのは初めてで天万姫は心がズキンと痛んだ。


「光琳......」


 すると、神々の悲鳴の中からある言葉が聞こえた。


「この生物、神を食べる度増えていくぞ!!」


 確かに先程より増えている。
 ドロドロの生物は神を殺し食べたり、食べなかったりするが、食べる度どんどん増えていく。

 ドロドロの生物はどんどん増えていき、皆は城の方向に逃げ出した。
 しかし城の方向には天光琳がいる。
 神々は扇を持ち、天光琳に攻撃をし始めた。


「この生物に攻撃が効かなくても、光琳には攻撃が効くはずだ!!」

「天光琳を狙え!」


 さまざまな攻撃が飛んできて天万姫たちは当たらないようにと身をかがめた。

 天光琳は扇を持って舞い始めた。
 それは見たことの無い舞だった。

 天光琳の舞いは変わらずとても美しい。
 しかし、まるで手足が糸で繋がれている操り人形のような天光琳らしくない動きをすることがある。

 すると神々の攻撃が跳ね返り、神々の方向へと飛んでいく。


「ぐっ!!」

「攻撃をやめろ!」

「いや、まだだ!!」


 攻撃を辞める者もいれば続ける者もいる。しかし天光琳は舞をやめない。


「光琳、やめるんだ!」


 天浩然が天光琳が扇を持っている右手を握ると天光琳は天浩然を睨み、左手をパチンと鳴らした。
 すると天浩然の腹部に大きな針が刺さった。


「がはっ......」

「浩然さん!?」


 天語汐は天浩然の腹部を押さえ止血をしようとした。しかし血は止まらない。


「光琳やめて!!」

「邪魔をしないでっ!」


 天万姫が止めても聞かなかった。神々は反撃を受けどんどん倒れていく。また後ろから襲ってくるドロドロの生物からも襲われ、辺りはどんどん血の海になっていく。

 天万姫は目から涙が溢れてきた。
 全ては自分のせいなのだと。

 自分のせいで神々がどんどん死んでいく。
 そして天宇軒、天麗華......天浩然もだ。

 天語汐は天浩然を抱きしめた。しかしもう目を覚ますことは無い。


「浩然さん......まだ李静や李偉、俊熙は生きているのよ......まだ死んじゃだめ......」


 今頃、天俊熙たちは父が死んだということは知らないだろう。

 そして気づけば......神々は攻撃をしてこなくなった......いや、皆死んだのだ。

 天万姫は絶望した。
 全身が震え、涙が止まらなかった。

 天光琳はくるりと天万姫たちの方を向いた。
 冷たい風が吹いた。
 黒いマントと長い髪の毛がなびく。
 そして鉄のような血の匂いが鼻を刺す。

 天万姫と天語汐は殺されると思ったが足が動かなかった。

 そして......天光琳は扇を消し、両手を合わせた。
 手を合わせたあと素早く手を離すと、あやとりのように手には黒い糸が絡みついていた。

 何が起こったか分からず二神は天光琳の手を見つめていると、急に首元が苦しくなった。
 いつの間にか黒い糸が巻きついていた。
 そして天光琳は手に絡みついた糸を解き、右手をくるくると動かすと今度は二神の手足に巻きついた。


「へぇ......」

  
 新しい能力を手に入れ試しに遊んでいるかのように見える。
 天光琳は怪しい笑を浮かべた。


「これで操れるってわけか」


 その言葉を聞き、二神は息を飲んだ。


「光琳...ごめんなさい......本当にごめんなさい......」


 天万姫は必死に謝った。
 すると天光琳は左手を素早く動かした。

 するとどんどん首が閉まっていく。
 二神は苦しそうにしているのだが、天光琳は止めようとはしなかった。


「苦しいでしょ?僕の気持ち......分かった?こんな風にさ、みんなから苦しめられて行って......」


 そして天光琳は左手を手を握りしめた。


「こうだ」


 すると二神の首は体から離れた。
 生々しい音と共に、二神の首から上が転がった。

 天光琳は糸を消し、城に背を向けた。
 そしてマントをなびかせながらゆっくりと歩いていく。
 地面は血の海になっていて、歩く度ぴちゃ...ぴちゃ......と音を立てていく。

 天光琳は再び鬼神の力を使って黒い糸を出した。
 糸を出すと、あやとりのように遊び始めた。
 倒れている神を踏んでしまっても気にせずそのまま歩いていく。
 まるでおもちゃに夢中の子供のようだ。


「光琳様。前を向いて歩かないと、危ないですよ」


 別のところで神を殺していた落暗がふっと天光琳の前に現れた。
 天光琳は手を止め、前を向いた。


「......ところでそちらは......あ、大丈夫でしたか」


 落暗は天光琳を心配し、戻ってきたのだが大丈夫だった。


「余裕だよ」

「さすが光琳様」


 そう言うと天光琳は再び糸で遊び始めた。


「新しい能力を手に入れたのですね」

「うん」


 二神は他に生き残っているものはいないか探し始めた。
 ドロドロの生物たちはどんどん増えていき、桜雲天国はもうおしまいだ。


「た...助けて!!」


 すると奥の方から聞き覚えのある声が聞こえた。

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