鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

文字の大きさ
145 / 184
ー光ー 第十章 鬼使神差

第四十四話 消えゆく記憶

しおりを挟む
「あとは玲瓏美国だけだ」


 とうとう、残りの国は玲瓏美国だけとなった。
 玲瓏美国ではいつ鬼神が現れてもおかしくない状況に迫り、国中が警戒している。
 また、残りは玲瓏美国だけということは逃げることが出来ない。勝たなければ命は無いのだ。


「行きますよ」


 天光琳たちは玲瓏美国へ向かった。
 とうとう鬼神が神界を支配する日がやってきた。


 玲瓏美国の空は急に曇りだし、雷が鳴り響いた。
 神々は顔を真っ青にし、騒ぎ出す。

 そして大きな雷鳴と共に、城の屋根に二神の姿が現れた。
 最初に見た神は大声を出し、他のものも目を向ける。
 間違えない。他の二神は......天光琳と鬼神だ。


「あ......現れたぞっ!!」

「皆の者、備えろっ!!」


 子供の神は屋内に隠れ、大人の神は先頭に備える。


「お母さん......私たち、死んじゃうの...?」

「死なないわ。私たちは勝つのよ!」


 神々を見ると、弦楽器を持っている神......だけではなく、扇子や金管楽器、何も持っていないが今にでも舞始めようとしている姿勢の神などが見える。

 本来ならばその国の人間の願いを叶える方法......玲瓏美国は弦楽器なのだが、弦楽器を覚えなくてはいけない。
 しかし今から覚えるとなるとかなり時間がかかってしまう。
 そのため、自国のやり方で良いと言うことになっているのだろう。

 二神は街を見渡した。
 シュヴェルツェはまだ勝っていないというのに嬉しそうに微笑んでいる。
 これで終わりだと思っているのだろう。
 随分余裕そうだ。天光琳も緊張の顔を見せない。むしろ、早く終わらせたいとだるそうな顔をしている。


「暴れますかねぇ」

「うん」


 もう城の方へ逃げる神はいない。逃げたってもう他国へ行けないのだから意味が無い。
 べトロたちは各地に現れ、城に注目していた街の神々は皆近くに現れたべトロたちに目を向ける。

 そしてべトロたちに集中していた神々の背後から、天光琳たちは攻撃する。
 得意な剣で攻撃したり、舞を舞ったり。
 容赦ない。


「天光琳様......許してくださいっ!!」

「ごめんなさい...ごめんなさい!」


 天光琳の目の前で腰を抜かした数名の神々が、泣きながら必死に謝っている。


「適当に謝ってんじゃねえよ」


 そう言って一番近くにいた女神を剣で刺した。 そばに居た神々は悲鳴をあげ、身を縮めた。
 恐怖で脚が動かない。これでは修行や稽古をした意味が無い。
 するとある神が大声で叫んだ。


「俺は何もしていない!なぜ殺されなきゃいけないんだよ!お前の悪口なんて一回も言ってねぇよっ!」


 勇気ある行動だ。他の神は驚き、その男神の方へむいた。
 男神は怒りと恐怖で震えながらも、しっかりと天光琳を見つめている。
 そして立ち上がり、天光琳に扇子を向けた。


「関係ないやつらも殺してんだよな?それってどうなんだよ。こん中にもお前の悪口を言ったことが一度もない神だっているはずだ。それでも殺すのか?」

「証拠はどこにある?」


 天光琳の低い声が響いた。
 これは信じて貰えないだろう。


「じゃあ逆に俺がお前の悪口を言ったって証拠はあるのかよ!?」

「神はみんな敵だ」


 質問とは違う返しがきて、男神はついに我慢の限界となった。天光琳に向かって大量の火の玉を放った。
 ......が。天光琳は片手で防御結界を張り、火の玉は結界に当たるとホッと一瞬で消えてしまった。


「みんな助けてくれない。みんな僕のことを嫌ってる。みんな僕なんていなければいいのにって思ってる!!」

「それはお前がこんなことしてるからだ!」

「なんでしてると思う!?」


 天光琳が大声をあげると、周りには無数の針が現れた。
 呼吸は乱れ、目を見開いている。


「僕は"アイツ"に......アイツ...に......」


 天光琳は言葉に詰まった。
 何を言おうとしたのだろうか。


「なんだよ、アイツって誰だ、何をされたんだ!俺たちが納得するように言ってみろ!!」

 (思い出せない......)


 そう言うと天光琳は手に力を入れた。
 すると周りにあった針はどんどん増えて行った。


「分からない!」

「分からないって......」


 そう言った瞬間、針は色んな方向へ飛んでいき、神々は急いで身を守ったが遅かった。
 バタバタと倒れていく神々。
 天光琳はゆっくりと呼吸を整えた。


「光琳様......私まで喰らうところでしたよ」

「ごめん」


 シュヴェルツェは手についた血を払いながら言った。
 急いで結界を張ったためなんとか防げたが、もう少し遅ければシュヴェルツェまで怪我......いや死んでいただろう。

 先程まで騒がしかった辺りは静かになった。
 じわじわと流れてくる血を見つめ、ため息をついた。


 (記憶が......消えていく......)


 天光琳は記憶がどんどん消えていくのに恐怖を感じている。
 いまや、なぜ自分がこんなことをしているのか忘れてしまった。
 そしていつか自分が何者なのか分からなくなってしまうのではないか......と思っている。


「なんで消えていくんだろう......」

「何が......ですか?」


 天光琳が呟くと、シュヴェルツェは首を傾げた。


「なんでもないよ」

「そうですか」


 天光琳はそう言って歩き出した。
 シュヴェルツェも後ろからついて行く。
 シュヴェルツェは......何故か今ニヤリと微笑んでいる。
 記憶を消しているのはシュヴェルツェだ。天光琳はそれに気づいていない。

 記憶を消していけば天光琳は完全に洗脳される。
 いや、記憶が全て消えれば天光琳は自分が何者なのか分からなくなり、今のように洗脳しなくても自分の意思で悪神として生き続けることが可能だ。シュヴェルツェはそれを狙っている。


 (計画は順調だ。......あと少しで......あぁ。あともう少しで光琳様は............)




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

とある中年男性の転生冒険記

うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...