穏やかな午後の、魔法のジャム作り

あめとおと

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騎士カイルの「止まった時間」と、焼きたてのパン

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夕暮れ時。エマさんの家の庭先に、カイルが力なく腰掛けていました。

鎧は脱いでいるものの、背負った剣と鋭い眼光が、彼が戦場にいたことを物語っています。

そこへ、顔に少し粉をつけたアル君が、大きなバスケットを抱えて走ってきました。

「カイル兄ちゃん! 見てよ、これ! 今日は僕が魔法で膨らませすぎちゃったパンなんだ!」

カイルは少し困ったように眉を下げ、力なく笑います。

「……ああ、アルか。相変わらず元気だな。俺にはその元気、ちょっと眩しすぎるよ」

すると、後ろからエマさんが、温かいスープの入ったボウルを持って現れました。

「カイルさん、お帰りなさい。戦うための魔法も立派だけど、この子の『失敗しちゃった魔法』も、なかなか捨てたもんじゃないわよ。さあ、冷めないうちにそのパンを千切ってスープに浸して」

カイルはおずおずと、アル君が差し出した不格好なパンを手に取ります。

まだ熱々で、小麦の香りが鼻をくすぐります。一口食べると、アル君の魔法のせいか、驚くほど軽くて優しい食感でした。

「…………。……美味しい」

ボソリと呟いたカイルの目から、一滴だけ涙がこぼれました。

王都では、毒味を気にして冷めた食事ばかり、あるいは急いで飲み込むだけの食事でした。

「でしょ! 精霊さんも、カイル兄ちゃんが元気ないからって、今日は特別に甘い粉を振りまいてくれたんだよ」

アル君が自慢げに話す横で、カイルはゆっくり、本当にゆっくりとパンを噛みしめます。

剣を握りしめて固まっていた彼の指先が、パンの熱で少しずつ解けていくようでした。


この後の「騎士の休日」

• 剣を置いて、クワを持つ: エマさんに頼まれて、魔法を使わずに「力仕事」を手伝うカイル。心地よい疲れが、彼の不眠を癒していきます。

• アル君の護衛(?): 森へベリーを採りに行く時、アル君の「最強の護衛」として付き添います。でも、実際は精霊に追いかけられるアル君を助ける、微笑ましい光景に。

• 夜の語らい: 暖炉の前で、エマさんの淹れたハーブティーを飲みながら。カイルは少しずつ、王都での出来事を(愚痴っぽくなく、昔話のように)話し始めます。

カイルさんの心は、エマさんの料理とアル君の無邪気さで、少しずつ「現役」から「ただの青年」に戻っていけそうです。
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