レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった

あめとおと

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街道調整編

第1話 外れスキルと地図

 目を覚ましたとき、俺――カイルは、見知らぬ石畳の上に倒れていた。

「……ここ、どこだ?」

 見上げた空はやけに青く、雲の流れも遅い。
 周囲には中世ヨーロッパ風の建物が並び、人々は剣や杖を当たり前のように腰に下げている。

 ――ああ、これ。

 ラノベで何百回も見たやつだ。

「異世界、ってやつか……?」

 現実味のない状況に呆然としていると、頭の奥に機械的な声が響いた。

〈スキル付与を開始します〉
〈個体名:カイル〉
〈ユニークスキル【地図作成】を付与しました〉

「地図……作成?」

 次の瞬間、視界の端に淡く光る枠が現れた。
 半透明の“地図”だ。

 今立っている広場。
 周囲の建物。
 道の分岐。

 それらが、簡略化された線で正確に描かれている。

「……便利、ではあるけど」

 正直に言えば、微妙だった。

 火を操るわけでもない。
 剣がうまくなるわけでもない。
 回復魔法もなければ、ステータスが爆上がりする気配もない。

 ――外れ、だよな。

 その予感は、冒険者ギルドに登録した瞬間、確信へと変わった。

「地図作成? ああ……記録系か」

 受付の男性は、露骨に期待を落とした顔をした。

「戦闘系じゃないなら、新人向けの雑用クエストしか出せないが……それでもいいか?」

「……はい」

 断る選択肢はない。
 金も、伝手も、知識もないのだから。

 最初に渡された依頼は、
【街道沿いの安全確認】――要するに、散歩だ。

 魔物の気配を調べ、問題がなければ報告するだけ。
 経験値も報酬も最低限。

 だが、街を出てしばらく歩いたとき、異変は起きた。

「……ん?」

 視界の地図が、微かに揺れた。

 街道から外れた森の一角。
 本来、何も表示されないはずの場所に――

 薄く、点線が描かれている。

「これ……道?」

 実際に目を凝らしても、獣道すら見えない。
 だが地図は、確かに“奥へ続く何か”を示していた。

 嫌な予感と、抑えきれない好奇心。

 少しだけ。
 本当に、少しだけ確認するつもりで――俺は森に足を踏み入れた。

 その選択が、
 世界の裏側へ繋がる第一歩になるとも知らずに。


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