戦えない庭師ですが、星の花のバフが強すぎて最強プレイヤー10人に守られることになりました 〜星詠みの庭師と10人の守護騎士〜

あめとおと

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第1話 星の庭師

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 フルダイブ型VRMMO――

 《アストラル・ガーデン・オンライン》

 それは、サービス開始前から“女性プレイヤーが最も期待するゲーム”として話題になっていたタイトルだ。

 空に浮かぶ大陸。
 精霊が住む森。
 星の力が満ちる神殿。

 そして、戦うだけではなく――

 作る・育てる・暮らす

 そんなスローライフも楽しめるゲームとして注目されている。

 

「……うわぁ」

 ヘッドギアの装着を終え、ログインした瞬間。

 ユイの目の前に広がったのは、柔らかな光に包まれた白い空間だった。

 どこまでも続くような星空の下に、淡く輝く床が広がっている。

 そして、透明なウィンドウが目の前に現れた。

 

《キャラクター作成を開始します》

 

「いよいよかぁ……」

 ユイは小さく息を吐く。

 社会人になってからは忙しく、ゲームをする時間も減っていた。
 それでもこのゲームだけはどうしてもやりたくて、発売日に合わせて有給まで取ってしまった。

 少し笑ってしまう。

「大人になっても、こういうのワクワクするんだよね」

 

 種族。
 外見。
 身長。
 髪色。

 細かな設定を終え、最後の項目が表示される。

 

《職業を選択してください》

 

 画面にいくつもの職業が並んだ。

 剣士。
 騎士。
 魔導士。
 弓使い。
 神官。
 錬金術師。

「うーん……」

 ユイは少し悩む。

 戦うのも嫌いじゃない。
 でも、どちらかと言えば――

「作る系、好きなんだよなぁ」

 前に遊んでいたゲームでも、装備を作ったりポーションを調合したりする方が楽しかった。

 錬金術師かな。

 そう思って手を伸ばした、そのときだった。

 

 画面の端に、ひとつだけ見慣れない文字が現れた。

 

《隠し職業が解放されました》

 

「……え?」

 思わず声が出る。

 そんな説明、事前情報にあっただろうか。

 新しく表示された職業はひとつ。

 

《星詠みの庭師》

 

「庭師……?」

 説明文が浮かび上がる。

 

《星の力を宿した植物を育てる者》
《精霊と共に庭を作り、仲間を導く職業》

 

「なんか……すごくファンタジー」

 ユイは思わず笑った。

 戦闘職ではなさそうだ。
 でも、嫌いじゃない。

 むしろ――

「こういうの、好きかも」

 

 決定ボタンを押す。

 

《職業:星詠みの庭師 が選択されました》

 

 次の瞬間、視界が光に包まれた。

 

 

 気が付くと、ユイは草原に立っていた。

 どこまでも広がる緑。
 遠くには森。
 空には、ゆっくり流れる雲。

「……綺麗」

 思わず呟く。

 現実と見分けがつかないほどの景色だった。

 すると、視界の端に小さなウィンドウが現れる。

 

《チュートリアルクエスト》
《庭を作りましょう》

 

「庭?」

 不思議に思いながらメニューを開く。

 すると、インベントリの中にひとつだけアイテムが入っていた。

 

《星の種》

 

「これを植えるのかな」

 近くの土に手を触れる。

 すると、システムメッセージが表示された。

 

《星の種を植えますか?》

 

「はい」

 

 ぽん、と軽い音がして、種が土に吸い込まれる。

 その瞬間。

 淡い光が地面から溢れ出した。

 

「えっ?」

 

 きらきらと星のような粒子が舞う。

 そして――

 

 小さな芽が顔を出した。

 

 それは普通の植物ではなかった。

 葉の先がほんのり光り、まるで夜空の星のように輝いている。

 

《星花が成長しました》

 

「かわいい……」

 ユイはしゃがみ込み、そっと眺めた。

 すると、ふわりと光が広がる。

 

《星花の祝福》
《周囲のプレイヤーの能力が微量上昇します》

 

「バフ?」

 つまり、近くにいる人を強くする効果があるらしい。

 なるほど。

 戦う職業じゃないけど、サポート系なんだ。

「面白いかも」

 

 そう思っていた、そのとき。

 

 遠くの森の方から――

 金属がぶつかる音が聞こえた。

 

 ガキン!

 

「……戦闘?」

 どうやら誰かがモンスターと戦っているらしい。

 ユイは立ち上がる。

 気になって、少しだけ様子を見に行こうと歩き出した。

 

 このときはまだ知らなかった。

 

 この小さな星花の庭に――

 やがて。

 

10人の最強プレイヤーが集まることになるなんて。

 

 そしてこの庭が。

 

 冒険者たちにとって
 “特別な場所”になることも。
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