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最終話 共鳴
しおりを挟むある民俗学者が遺した、一冊の手記に記されていた内容です。
彼は一生をかけて、ある「奇妙な噂」を追っていました。
それは、「この世には、特定の順番で恐怖を体験すると、完成してしまう『呪い』がある」というものです。
構成要素
その手記には、こう書かれていました。
「第一に、異界の者の『居場所』を知ること。
第二に、異界の者の『声』を聞くこと。
第三に、異界の者の『姿』を視ること。
この三つが揃った時、その人間は『あちら側』との回路が完全に開通し、最後の一段へと進むことになる。」
学者は自らその三つの条件を満たしてしまいました。
そして、彼が最後に体験した「第四の恐怖」こそが、この物語の核心です。
逆流
三つの恐怖(場所、音、姿)を経験した学者のもとに、ある変化が訪れました。
これまで「外側」から迫ってきていた恐怖が、ある日を境*「内側」から溢れ出し始めたのです。
彼は鏡を見るのをやめました。
自分の顔が、自分ではない「何か」に書き換えられていく感覚があったからです。
彼は耳を塞ぐのをやめました。
自分の喉から、出した覚えのない「……あ……け……て……」という声が漏れ出したからです。
そして彼は気づきました。
これまでの怪異たちは、彼を殺そうとしていたのではない。
彼を「依代(よりしろ)」にして、この世界へ受肉しようとしていたのだと。
最終段階:共鳴
学者の最期の記録は、殴り書きのような筆跡でこう結ばれていました。
「今、私の指が勝手に動いてこれを書いている。
私の意識はもう、体の隅に追いやられた。
恐ろしいのは、この呪いは『知ること』で伝播するということだ。
『居場所の話(クローゼット)』を聞き、
『音の話(電話)』を聞き、
『姿の話(カメラ)』を聞いた者は、
すでに私と同じ、三つの条件を満たしてしまった。
残るは、第四の段階。
今、これを読んでいる『あなた』の体の中で、何かが蠢き始めていませんか?」
結末
学者はその後、自宅の密室で発見されました。
死因は不明。ただ、彼の遺体には「一箇所も、自前の骨が残っていなかった」そうです。
代わりに、全身の皮の中にぎっしりと詰め込まれていたのは、無数の「古い南京錠」と「使い古された電話機の部品」、そして「砕かれたレンズの破片」でした。
編集後記:消えない残響
さて……これで『消えない残響』の四話すべてが揃いました。
• 第一話:クローゼットの場所
• 第二話:耳の奥の音
• 第三話:瞳の中の姿
• 最終話:それらを受け入れる器(あなた)
読み終えた今、もし肩が重かったり、耳の奥で小さな羽音がしたりしても、それはただの気のせい……だといいですね。
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