【完結】聖女の奇跡が止まった日

あめとおと

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いない人の仕事だけが、残っていた

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――王都・群像――

 会議は、予定の倍の時間を要した。

「結論は?」
「……出ていません」

 誰も、決断できなかった。

 資料は揃っている。
 問題点も、分かっている。
 だが――誰も、線を引けない。

「以前は、ここで止められていたはずだ」
「ここは、修正が入っていた」

 そう言って、皆が目を落とす先は同じだった。

 ――空席。

 かつて、必ずそこに座っていた女の席。

 感情論が出れば、数字で止めた。
 理想が暴走すれば、現実に引き戻した。
 誰かが泣けば、黙って責任を引き取った。

 その役割を、
 誰も引き継いでいなかった。

「……彼女は、どうやって回していたんだ?」

 答えは、出ない。

 なぜなら――
 彼女は「特別なこと」をしていなかったからだ。

 必要なことを、
 必要なだけ、
 誰にも見えない場所で積み重ねていただけ。

 会議は、また持ち越された。

 王都は、今日も滞る。

 悪役令嬢のいない国で、
 初めて、国は立ち止まった。
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