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第三章
話したくなるようにしてあげるわ
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戦場の雰囲気は、一変した。
王国で最高位の魔力を持つ、宮廷魔道士・ローガンさんの到着。そして、過去の戦闘で大活躍した英雄・ルーカス王の登場によって、兵たちの士気はいやがおうにも高まった。
実際に、2人の魔法攻撃と物理攻撃の連続技で、魔法召喚されたドラゴンを仕留めている。倒された巨竜は、まぶしい閃光を放ちながら、魔法陣の中に吸い込まれて、消えていった
だが魔女は、まったく怯える気配がない。自らの魔力に、絶対の自信があるのだろうか。
「これは、お久しぶりね、英傑王。話があって、来たのよ。」
「……久しぶりじゃのう、黒の魔女よ。クァコーンの掃討戦以来かの……相変わらず、魔女というのは、年をとらんのう。」
レイノルズ王は大剣を構え、一瞬たりとも隙を見せない構えをとっている。
「話とは、なんじゃ。」
「私が探しているのは、人生選択の指輪よ。」
ふいに、魔女の口から飛び出した言葉に、僕の心臓は早鐘のように鳴り始めた。――彼女の狙いは、僕が装着しているアイテムだ。
「あなたの国にあると聞いて、もらいに来たの。どこかにあるんでしょう?」
「そんな指輪は、見たことも聞いたこともない。」
レイノルズ王は、じっと相手を見据えて応えた。
「もしあったとしても、お前みたいな礼儀を知らんもんには、教えてやらん。帰ってくれると、助かるのう。」
英傑王の言葉に、近衛兵たちは各々が戦闘態勢をとった。どちらかが、仕掛けることになりそうだ。僕はといえば、街灯の陰に隠れたまま、無意識に指輪を手で隠した。
先に動いたのは、黒の魔女だった。
「愚かな王よ。少し、話したくなるようにしてあげるわ。」
魔女の周囲の空間に、みるみるうちに魔力が充満していく。目視で確認できるほどの魔力エネルギーが、球状に拡大していった。
「まずい! 防御の姿勢をとれ! 回復班は、回復の準備を!」
近衛兵たちが叫んだ直後、魔女が何事か詠唱した。僕は恐怖で足がすくみ、動けなかった。
「まとめて、石になりなさい。」
魔女がつぶやいた直後、魔力波が周囲を覆った。その波は、2回、3回と押し寄せてきた。
「強度のステータス異常攻撃が、連続で押し寄せてくる!」
僕は、地べたにはいつくばって、波動を必死に耐えた。強烈な魔力の重圧の中、目をあけようと必死に試みる。
魔法防御力の弱い戦士や、精神力レベルの未熟なものから順に、石化していくのが見えた。魔法戦闘学の常識として、通常、状態異常魔法は、連続で飛んでこない。だが相手が魔女となると、教科書で習った常識は、通用しないようだった。
「ふーん、半分くらい石になったかしら。」
魔女の攻撃が一巡した。僕は顔をあげて、周囲を見渡した。王国の誇る近衛兵たちが、あちこちで、なすすべもなく石像と化している。僕は、自分が石化していないことが信じられなかった。
「石化を回復できるものはいるか!」
英傑王が雄々しく叫ぶ。さすがに、レイノルズ王ほどのレベルになると、やすやすと石化はしないようだ。だが、表情には多少の焦りが見える。
「無駄よ、英傑王。それなりの魔力がないと、この石化は解けない。指輪のありかを教えてくれれば、元に戻してあげてもいいけどね……」
その時、宮殿の2階の窓から、何者かが唱えた回復魔法が飛来した。
石化した兵士に、淡い色の魔法の光があたる。しかし、兵士の石化は、解けなかった。
「おや、2階にもネズミがいるのかしら。」
魔女が、鋭く視線を向けた先。その視線をたどったレイノルズ王が、慌てて声をあげた。
「出てきてはいかん! 戻れ!!」
そこにいたのは、リサ王女だった。兵士の状態異常を回復しようと、魔法を詠唱したようだ。その場にいた全員が、凍り付いた。王女が危険な戦場に、姿を現している。そして、魔女に発見された――。
魔女が、リサ王女の方に、つと指先を向けた。そこで、何かを詠唱したようだ……が、その動きはどんどんスローモーションになっていった。あたりの景色が、白黒に変わっていく。
――ああ、このタイミングで、僕はまた、「選択」を迫られるのか――。
僕は、何が起ころうとしているのか、直感で理解した。魔法の指輪の不思議な機能が、発動している。
こんどは、何だ。
レイノルズ王、近衛兵たち、魔女、ローガンさん。すべての景色はセピア色の背景となり、僕と、指輪だけの、透明なガラスで囲われた世界が現れた。
王国で最高位の魔力を持つ、宮廷魔道士・ローガンさんの到着。そして、過去の戦闘で大活躍した英雄・ルーカス王の登場によって、兵たちの士気はいやがおうにも高まった。
実際に、2人の魔法攻撃と物理攻撃の連続技で、魔法召喚されたドラゴンを仕留めている。倒された巨竜は、まぶしい閃光を放ちながら、魔法陣の中に吸い込まれて、消えていった
だが魔女は、まったく怯える気配がない。自らの魔力に、絶対の自信があるのだろうか。
「これは、お久しぶりね、英傑王。話があって、来たのよ。」
「……久しぶりじゃのう、黒の魔女よ。クァコーンの掃討戦以来かの……相変わらず、魔女というのは、年をとらんのう。」
レイノルズ王は大剣を構え、一瞬たりとも隙を見せない構えをとっている。
「話とは、なんじゃ。」
「私が探しているのは、人生選択の指輪よ。」
ふいに、魔女の口から飛び出した言葉に、僕の心臓は早鐘のように鳴り始めた。――彼女の狙いは、僕が装着しているアイテムだ。
「あなたの国にあると聞いて、もらいに来たの。どこかにあるんでしょう?」
「そんな指輪は、見たことも聞いたこともない。」
レイノルズ王は、じっと相手を見据えて応えた。
「もしあったとしても、お前みたいな礼儀を知らんもんには、教えてやらん。帰ってくれると、助かるのう。」
英傑王の言葉に、近衛兵たちは各々が戦闘態勢をとった。どちらかが、仕掛けることになりそうだ。僕はといえば、街灯の陰に隠れたまま、無意識に指輪を手で隠した。
先に動いたのは、黒の魔女だった。
「愚かな王よ。少し、話したくなるようにしてあげるわ。」
魔女の周囲の空間に、みるみるうちに魔力が充満していく。目視で確認できるほどの魔力エネルギーが、球状に拡大していった。
「まずい! 防御の姿勢をとれ! 回復班は、回復の準備を!」
近衛兵たちが叫んだ直後、魔女が何事か詠唱した。僕は恐怖で足がすくみ、動けなかった。
「まとめて、石になりなさい。」
魔女がつぶやいた直後、魔力波が周囲を覆った。その波は、2回、3回と押し寄せてきた。
「強度のステータス異常攻撃が、連続で押し寄せてくる!」
僕は、地べたにはいつくばって、波動を必死に耐えた。強烈な魔力の重圧の中、目をあけようと必死に試みる。
魔法防御力の弱い戦士や、精神力レベルの未熟なものから順に、石化していくのが見えた。魔法戦闘学の常識として、通常、状態異常魔法は、連続で飛んでこない。だが相手が魔女となると、教科書で習った常識は、通用しないようだった。
「ふーん、半分くらい石になったかしら。」
魔女の攻撃が一巡した。僕は顔をあげて、周囲を見渡した。王国の誇る近衛兵たちが、あちこちで、なすすべもなく石像と化している。僕は、自分が石化していないことが信じられなかった。
「石化を回復できるものはいるか!」
英傑王が雄々しく叫ぶ。さすがに、レイノルズ王ほどのレベルになると、やすやすと石化はしないようだ。だが、表情には多少の焦りが見える。
「無駄よ、英傑王。それなりの魔力がないと、この石化は解けない。指輪のありかを教えてくれれば、元に戻してあげてもいいけどね……」
その時、宮殿の2階の窓から、何者かが唱えた回復魔法が飛来した。
石化した兵士に、淡い色の魔法の光があたる。しかし、兵士の石化は、解けなかった。
「おや、2階にもネズミがいるのかしら。」
魔女が、鋭く視線を向けた先。その視線をたどったレイノルズ王が、慌てて声をあげた。
「出てきてはいかん! 戻れ!!」
そこにいたのは、リサ王女だった。兵士の状態異常を回復しようと、魔法を詠唱したようだ。その場にいた全員が、凍り付いた。王女が危険な戦場に、姿を現している。そして、魔女に発見された――。
魔女が、リサ王女の方に、つと指先を向けた。そこで、何かを詠唱したようだ……が、その動きはどんどんスローモーションになっていった。あたりの景色が、白黒に変わっていく。
――ああ、このタイミングで、僕はまた、「選択」を迫られるのか――。
僕は、何が起ころうとしているのか、直感で理解した。魔法の指輪の不思議な機能が、発動している。
こんどは、何だ。
レイノルズ王、近衛兵たち、魔女、ローガンさん。すべての景色はセピア色の背景となり、僕と、指輪だけの、透明なガラスで囲われた世界が現れた。
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