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4話
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その日の放課後。
最後まで夢の件についてははぐらかす姿勢を見せた智美の時とは打って変わり、大森はすぐさまサクラコの着座する机に詰め寄ってきた。
「ちょ、ちょ、ちょっと、話があるんだけど……」
普段からあまり誰と話したりする様子もない彼がかなり挙動不審な態度で、いきなり女子に声をかけるのを見たからか、周りのクラスメイト達は「うわぁ、何?」「大森がなんかサクラコさんに話しかけてるよ」「えぇ、もしかして告白……」とひそひそと囁きだした。
サクラコは先ほどの夢の件だということが明白だったので、特に気に留めることもなく、「ええ、わかったわ、とりあえず外で話しましょう」と促した。
しかし大森は自分から誘ってきた割にはモタモタオロオロとしっぱなしでその場を動こうとしなかった。
サクラコは当時の男子学生から見れば、顔もスタイルも良い女子学生であったため、大森が緊張しているのは当然のことであった。
しかし、これから色々と夢について詰問したいと急いているだけのサクラコにとってみれば、ただもどかしさを感じるだけだった。
サクラコは我慢できなくなり、彼の腕を引っ張り、教室を飛び出した。
教室から「おーっ」と黄色い意味合いの声が上がる。
しかしサクラコにとっては「大森とサクラコがまさか……?」などという他の学生達と同様の恋愛談義に心が着火することは微塵もなかった。
道中、下校途中の幾十の生徒から好機の眼差しを浴びたが、それさえサクラコは全く意に介さなかった。
暫しの後、サクラコと大森は学校近くの公園にたどり着いた。
「とりあえず、ここで良いかしら?」
この公園は、植物の手入れが雑で、ベンチや遊具も古く錆びれており、普段はあまり人が寄り付かない。 しかし、聞き耳を立てられたくないサクラコにとってみればむしろ好都合だった。
「はぁ、はぁ……。あ、あ、う、うん……」
大森は息を切らし、更に依然として落ち着きがなく、サクラコはまともにコミュニケーションが取れるだろうか不安に感じた。
取り敢えずは彼に休息と緊張を和らげることを考え、バッグから財布を取り出して近くの自販機へ向かった。
自販機は蠅や蚊等の虫がたかっており、お世辞にも衛生的には見えなかったが、中身は問題ないだろうと考え、サクラコはスポーツドリンクのボタンを押した。
「急に走らせて悪かったわ、はい、私の奢りよ」
「あ、あ、あ、どうも……」
大森はひどく赤面した顔色でサクラコからスポーツドリンクを受け取った。
「あっちに座りましょうか、ちょっと汚れているけれど……」
サクラコは腐敗が進んでいると思しき木製のベンチを指さし、二人はそこに腰掛けた。
「さて、ではさっそくで悪いのだけど、話っていうのは……」
夢のことについてなんでしょう?
まずはそう切り出そうとするサクラコ。
だがそれを遮って、大森はなんと、突然立ち上がった。
あまりの彼の勢いの良さに、サクラコの肩はビクッとなり、大森が持っていたまだ飲みかけのペットボトルは、ごとりと地面に落ちて中から漏れ出した液体が砂に滲んだ。
「ぼ、ぼ、ぼ、僕は、サクラコさんが好きであります!!!!!」
「……は?」
サクラコは途端に思考が完全停止した。
「な、なにを言っているのいきなり……」
狼狽するサクラコを他所に大森は顔をリンゴのように赤くして、声を張り上げる様に続けた。
「ず、ず、ず、ずっと前から好きだったんです! そしたら、さっき、国語の授業のとき、あ、さ、サクラコさんが出てきて、て、天使だったんだ! 僕の天使なんだ!」
うまく呂律が回っていない大森の言動に、サクラコは要領を得なかったが、どうやら自分は愛の告白を受けているようだということだけは悟った。
「え、ちょっと待ってくれないかしら……私……」
「好きでありまあぁああああああああああっす!」
「うわっ!? あ、はい……」
「はい!? うわあああああああよっしゃあああああああああああああああああああああああ」
「う、うるさい……」
まるでウジウジとなめくじのようだった大森が突然、獣のように咆哮したためサクラコは思わず耳を塞いだ。
その動作の隙に、なんと大森はそのまま公園を駆け出して行ってしまった。
「……。……え? ちょっと待って、大原君!」
サクラコが呼び止めようとするのも聞かず、先程の鈍足が嘘のように全力疾走で、大森は消え去ってしまった。
あまりの出来事にサクラコは暫し絶句した。
そして、気を取り戻した後、大森が落としたペットボトルを自販機近くのごみ箱に捨ててから、改めて考えてみた。
「これは、一体何が起こっているのかしら。もしかしたら、屋上の夢のせいで彼がおかしくなってしまっているのかも、だとすると、すごく危険かもしれない……。あの勢いで現実でも身を投げられでもしたら……」
サクラコは冷静さを取り戻して、大森の住所を知る手段として、智美に電話を掛けることとした。
最後まで夢の件についてははぐらかす姿勢を見せた智美の時とは打って変わり、大森はすぐさまサクラコの着座する机に詰め寄ってきた。
「ちょ、ちょ、ちょっと、話があるんだけど……」
普段からあまり誰と話したりする様子もない彼がかなり挙動不審な態度で、いきなり女子に声をかけるのを見たからか、周りのクラスメイト達は「うわぁ、何?」「大森がなんかサクラコさんに話しかけてるよ」「えぇ、もしかして告白……」とひそひそと囁きだした。
サクラコは先ほどの夢の件だということが明白だったので、特に気に留めることもなく、「ええ、わかったわ、とりあえず外で話しましょう」と促した。
しかし大森は自分から誘ってきた割にはモタモタオロオロとしっぱなしでその場を動こうとしなかった。
サクラコは当時の男子学生から見れば、顔もスタイルも良い女子学生であったため、大森が緊張しているのは当然のことであった。
しかし、これから色々と夢について詰問したいと急いているだけのサクラコにとってみれば、ただもどかしさを感じるだけだった。
サクラコは我慢できなくなり、彼の腕を引っ張り、教室を飛び出した。
教室から「おーっ」と黄色い意味合いの声が上がる。
しかしサクラコにとっては「大森とサクラコがまさか……?」などという他の学生達と同様の恋愛談義に心が着火することは微塵もなかった。
道中、下校途中の幾十の生徒から好機の眼差しを浴びたが、それさえサクラコは全く意に介さなかった。
暫しの後、サクラコと大森は学校近くの公園にたどり着いた。
「とりあえず、ここで良いかしら?」
この公園は、植物の手入れが雑で、ベンチや遊具も古く錆びれており、普段はあまり人が寄り付かない。 しかし、聞き耳を立てられたくないサクラコにとってみればむしろ好都合だった。
「はぁ、はぁ……。あ、あ、う、うん……」
大森は息を切らし、更に依然として落ち着きがなく、サクラコはまともにコミュニケーションが取れるだろうか不安に感じた。
取り敢えずは彼に休息と緊張を和らげることを考え、バッグから財布を取り出して近くの自販機へ向かった。
自販機は蠅や蚊等の虫がたかっており、お世辞にも衛生的には見えなかったが、中身は問題ないだろうと考え、サクラコはスポーツドリンクのボタンを押した。
「急に走らせて悪かったわ、はい、私の奢りよ」
「あ、あ、あ、どうも……」
大森はひどく赤面した顔色でサクラコからスポーツドリンクを受け取った。
「あっちに座りましょうか、ちょっと汚れているけれど……」
サクラコは腐敗が進んでいると思しき木製のベンチを指さし、二人はそこに腰掛けた。
「さて、ではさっそくで悪いのだけど、話っていうのは……」
夢のことについてなんでしょう?
まずはそう切り出そうとするサクラコ。
だがそれを遮って、大森はなんと、突然立ち上がった。
あまりの彼の勢いの良さに、サクラコの肩はビクッとなり、大森が持っていたまだ飲みかけのペットボトルは、ごとりと地面に落ちて中から漏れ出した液体が砂に滲んだ。
「ぼ、ぼ、ぼ、僕は、サクラコさんが好きであります!!!!!」
「……は?」
サクラコは途端に思考が完全停止した。
「な、なにを言っているのいきなり……」
狼狽するサクラコを他所に大森は顔をリンゴのように赤くして、声を張り上げる様に続けた。
「ず、ず、ず、ずっと前から好きだったんです! そしたら、さっき、国語の授業のとき、あ、さ、サクラコさんが出てきて、て、天使だったんだ! 僕の天使なんだ!」
うまく呂律が回っていない大森の言動に、サクラコは要領を得なかったが、どうやら自分は愛の告白を受けているようだということだけは悟った。
「え、ちょっと待ってくれないかしら……私……」
「好きでありまあぁああああああああああっす!」
「うわっ!? あ、はい……」
「はい!? うわあああああああよっしゃあああああああああああああああああああああああ」
「う、うるさい……」
まるでウジウジとなめくじのようだった大森が突然、獣のように咆哮したためサクラコは思わず耳を塞いだ。
その動作の隙に、なんと大森はそのまま公園を駆け出して行ってしまった。
「……。……え? ちょっと待って、大原君!」
サクラコが呼び止めようとするのも聞かず、先程の鈍足が嘘のように全力疾走で、大森は消え去ってしまった。
あまりの出来事にサクラコは暫し絶句した。
そして、気を取り戻した後、大森が落としたペットボトルを自販機近くのごみ箱に捨ててから、改めて考えてみた。
「これは、一体何が起こっているのかしら。もしかしたら、屋上の夢のせいで彼がおかしくなってしまっているのかも、だとすると、すごく危険かもしれない……。あの勢いで現実でも身を投げられでもしたら……」
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