-全無生物を魔法に変える落ちこぼれ勇者- ユニーク魔法で異世界無双

とりっぷましーん

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第一章

010 歩のユニーク魔法『描写実体化』

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 王女曰く、ステータス解放の儀を終えた俺は、ギリギリ叩き出されなかったが、やはり歩と二人で旅に出る事になった。
 現在はもう日も暮れるという事で、王城の一室を貸してくれ、そこで歩と二人夕食の準備を待っている。
 椅子に座り、机に肘を着き、衝撃的だった自分のステータスについて考えを巡らせる。

 レベル1とレベル3。

 一体そこにどれほどの差があるというのだろうか?

 言っちゃ悪いが、俺は地球においてなら、どんな赤ん坊よりも速く走れる自信がある。
 さらに言うならば、どんな赤ん坊よりも流暢に日本語を話せる自信がある。
 勝てないかもしれない、と思うのは一日の睡眠時間量くらい。
 だが赤ん坊のあれは、ある意味チートに近い。

 それを除けば我こそ最強也!

 さぁ、かかってくるが良いよ。


『全ての生まれたての赤子たちよ!』


 あ、やば、待て待て。お、多すぎるだろ! 待って。汚い! か、数の暴力反対です!
 と百万を優に超えるかという赤子達に押しつぶされ、よだれとおしっこと黒い『+α』の洗礼を浴びる、という妄想から逃げる様に部屋を見渡してみる。

 歩と二人の相部屋だが、召喚された部屋と同じ程度の大きさは学校の教室程もあり、ベッドも二つ、さらに俺達が無能だからといって、豚小屋のような場所に入れられる事もなかった。
 赤や白、金色などで装飾された部屋、調度品と思わしき物も置いてあり落ち着かないが不満はない。
 機械はないけど、魔導ランプとかいうので灯りも点いている。

 けれど、明らかに他に召喚されたメンバーとは部屋を離された。おそらく新垣の部屋なんかはもっと良い部屋なんだろう。
 そう思うと小さな溜息が出る。そのまま、部屋を眺めていた歩に声を掛けた。

「てかさ……どうするよ、今後。俺達この世界の事なーんにも知らねーんだぜ?」

「あ、うん。う~ん。うん。ちょっと見てよ?」

 きれいに磨かれたガラス窓を開けて外を指さしたので、俺もそこに歩み寄り外を眺めてみる。
 眼下に広がるのは城下町というやつなんだろう。日本とは明らかに違う街並み。
 けれど、オレンジの光が薄闇の中輝いて景色的には素晴らしい、とあまり情緒深くない俺でもそう感じた。

「城下町ってやつだよな。ヨーロッパってこんな感じなのかな……」

 おそらくヨーロッパも近代科学をふんだんに取り入れているはずなので、本来のそれとは全く違うはず。
 それでもなんとなくこんな雰囲気かな、と思わされるような気がしたのだ。

「ね? これで、この世界の事がちょっと分かったでしょ? 知らないならこれから知っていけばいいんだよ」

「……あ、ああ。何だ、歩って案外ポジティブなのな? それなのになんで江原にいじめられてたわけ?」

 言っちゃ悪いが、学校にいるときはいじめられてるのは知らなかったが、若干地味で暗いと思っていた。
 けれど、こっちに来てからは違う。明るい上によく笑う。俺よりも余程悲観的になっていない。

 いじめってのは、いじめられてるやつにも原因がある。

 誰かがそう言った。だが、歩を見ているとそれは間違いなんだろうな、と思えてくる。
 天ヶ崎会長の前でもその言葉を言えるか試してみたいもんだ。

 その時は、涙と鼻水が口から入って高速循環する永久機関になるのが目に見えている。
 飯の前に想像する事じゃなかったな、と思っていると、歩が僅かに俯き寂しそうな声色で口を開く。

「別に理由なんてないと思うよ。僕、中学の頃もいじめられて――」

「あー、すまん。嫌なこと聞いちまったな。しかし、ま、今は俺も歩の仲間だよ。一緒に頑張ろうぜ?」

 俺は被せ気味にそう口にした。歩が話したいならこれでも話すだろう。話したくなければやめるだろう。
 俺には気持ちが分からない。けれど、後半の俺の言葉は本心から出たものだというのは感じていた。

「あ、うん。ごめ、気を遣わせちゃったかな。でも、弱ければ奪われる。って、さっき話してたよね……」

 泥沼ループになりそうな雰囲気にどうしようかと考えていると、歩は手をパチンと叩きニコリと微笑んだ。

「でも、兵輔はどうか知らないけどさ――っと」

 言いかけた所で聞こえるドアを叩く音。
 いかにもメイドといった風体の女性二人、が見た目豪華な夕食を用意してくれる。

 礼儀作法には詳しくないが、その所作は丁寧過ぎて――――俺にはなんだか冷たいように感じられた。
 俺にメイド趣味とかいう奴はないが、折角の可愛らしい顔が台無しになっている。
 飯の味に精神面が関係するという事を知らないのだろうか。小さく微笑みでも入れりゃいいのに、と配膳の様子をじっと眺める。

 終わって頭を下げて出て行くのも、何だか無感情というかなんというかな雰囲気。くすりとも笑いやしない。

 ドアがガチャリと閉まり、俺は白色のクロスが敷かれた丸い机に用意された食事に目を向ける。

 香ばしい匂いを発するこげ茶色の表面に、赤とピンクが混ざりこんだ中身の厚切り肉――いわゆるローストビーフのようなものに、食欲をそそる甘い匂いを発する茶のタレがかけられた物。
 白く光を照り返しオレンジ、緑、茶といった具材が転がるとろみがかったクリームシチューのような見た目のスープ。
 フランスパンのようなパンに切れ目が入り、野菜やらなんやらよく分からんが色とりどりの物が入ったサンドイッチのような物。

 見ているとジワと唾が滲み出て、俺の胃袋がキュッと胃液を絞りだしてくる。

「く、食おうぜ?」

「あ、うん。凄いね、こんなにお金を使えるなら、それを民衆のためだったり、軍事費に回せばいいのに」

「いやいや、待てよ。これは軍事費だ。なんてったって、俺たちは戦力として呼ばれたんだから! 食わなきゃ損! いらんなら貰うぞ?」

「い、いや、いるよ、いるいる。お腹空いたし、食べるよー」

 そう言葉を交わし、俺達は席につき食事を開始した。

 確かに歩の言ったように、何とかオブリージュ?のように民衆に益を還元するのが高貴な人間の務め。

 だが、そんなこと言っても仕方がない。

 なぜなら世の中には『パンを食べれないなら、原宿のパンケーキ(税抜き1400円)を食べればいいじゃない』と言う人がいるのだ。


――ドバイで破産しろ!


 とは思うが、パンケーキ屋に時間をかけて並んで食べてくれるお陰で、もっと美味い物が食える店に奴らは来ないのだ。
 もっとも、行列の出来るラーメン屋に化粧臭い〇リー・アントワネッ〇がやって来でもしたら、「くせぇ!」つって叩き出してやるけどな!


――ふはははは。


 そんなことを考えていると、メイド達に僅かに低下させられたテンションも上がり、精神的にも飯の味に良い影響を与えてくる。
 折角なので話でもするかと思い、噛みしめると肉汁が溢れるローストビーフの欠片を、胃の腑の奥へと押しやった。

「なぁ、さっきなんか言いかけてなかった?」

 突然の言葉に驚いたのか、喉を詰まらせたのか「ごほっごほっ」と歩は咳きこんだ。
 何か飲ませようかと思ったが、なぜか用意されているのはワインのようなルビー色の液体。おそらくこれを今飲ませれば、盛大な赤の噴水がきらめくだろう。

「だ、大丈夫か? すまんな、急に声を掛けて」

「あ、ふ、ふう……。えほっ。いや、だいじょぶだよ。パンの欠片が気管に入ったみたい」

 ワインのような物を舐めて確かめてみたが、やはり中身はおそらくワイン。甘味が強めだが渋みもあるし、何よりアルコールが感じられる気がする。
 成人年齢とかそう言ったものはよく分からんが、俺達に出しても良いというのがこの国の常識という事。

 だが、アルコールは成人してから。と口を酸っぱくして言われ続けてきた日本人としては、やはり軽々しく酒を飲むのは躊躇われる。
 とはいえ、文化は文化。郷に入っては郷に従え。慣れることも必要だと感じ、ちびりちびりと舐めてみることにした。

「わ、兵輔がワイン飲んでる! 会長に言っちゃうよ?」

「何言ってんだよ。会長ならこれ幸いとばかりに、浴びる様に飲んでることだと思うぞ? 莉緒も酒豪なような気がするし……」

「う……。言われてみればそんな気がする」

「だろ? この先、酒を飲むことを強要されることがある時に備えて飲んでおくべきだ!」

 俺の言葉に歩も恐る恐るワインに口をつけ「うぇぇ、まずい」と顔を顰めた。
 俺もワインの美味さはよく分からないが、想像以上に甘くて美味いとは感じた。
 だがそこで歩は真剣な顔になり、俺の顔をじっと見つめてきながら、なぜかステータスを開いた。

「でだよ。これさ、皆気付いてるのかどうか知らないんだけど、ほら!」

 歩は両の親指と中指で円環を作り、そして空いてる人差し指をそのエメラルドグリーンの画面に当て、スライドさせた。
 円環を作りながらだから、非常にやり辛そうだが表示されている物が動いているのが目に映る。

「え? 何それ? 動かせんだ……」

 歩がやっているのは完全にスマホをいじるような操作。内容は見えないが何か文字が現れたのが見えた。
 けれど、俺の言葉に歩はステータスを一度消してからドアに目を向け、そして俺に顔を向けなおす。

「浅草寺さんに聞いてたよね。僕や他の何人かが小説での予習組って」

「あ、ああ。聞いたな。俺は直前に頑張る組だから」

「え、いや、なにそれ? あ! 試験の話でしょ、それ。違うよ」

「いや、分かってるって。歩のツッコミレベルを測ろうとだな……。
 ちなみに今のだと不合格です!」

 歩は腕を組むと、むすっと唇を引き締める。

「今、真面目な話してるんだからさ。ツ、ツッコミレベルは上げれるように頑張ってみるから話を聞いてよ」

「ああ、分かった分かった。会長と付き合うならツッコミが必要……、いや、あの人はボケも両方こなすな。サラブレッドだから」

「さ、サラブレッドって意味違うし!」

「おお、早速ツッコミか! でも……まだ、会長には釣り合うレベルじゃないな。……す、すまん、さっきの話を続けてくれ」

 だんだんと怒りだしそうな進藤に、頭を掻きながら話を戻す。
 手も突きつけてツッコんできた歩に、やはりノリが良いなと思い嬉しさを感じたが。

「新垣君が英雄なのは想定通り。あのくそ不良も同じだったのはむかむかしたけれど、まぁいいよ」

「ふぅん。やっぱ、小説だとそれが普通なんだな? つまんなくね?それ」

「うん。それだけならね? でも、そうじゃないんだ。大体そう言うパターンだと、落ちこぼれと思われた人が、実は凄かったって事が多いんだよ。
 だから何かあると思って、動かして確認してみたわけ」

「へぇ~~。でも、それって凄くご都合主義じゃん? だって、言っちゃ悪いけど、歩になんかあるとは思えないし」

 歩はニヤと口の端をあげると、再度ワイングラスを掌で持ち上げてちびりと口にし「うぇぇ」とやってみせた。
 カッコつけようとしたのかもしれないけれど、それだとどう見ても失敗だ。

「小説だとそういうもんなんだ。そう思ってよ」

「そういうもんなのか。分かった。けどさ、今は小説じゃなくて現実じゃん?
 つーか、俺ご都合主義って度が過ぎるとくっそ嫌いなんだよ」

「え、そ、そんなこと言われると見せる気無くなっちゃうよ……」

「ん? ああ。さっき動かしてたステータス? いや、いいよ。今は現状を把握するべきなんだから。何が書かれてたん?」

 歩は俺の言葉に再度ニヤリと笑うと、対面から隣へと椅子を動かしてきた。
 もう一度ドアを確認し、そのままステータスを開くとスライドさせて俺に見せてくる。

 そこには『ユニーク魔法』と書かれ、その横に『描写実体化』と表示されていた。

「おお! おお? 何これ? 魔法の才能無しってわけじゃないんだ。
 ユニークってなんだっけ……、愉快って意味だっけ? 愉快な魔法?」

「いや、えっと……ユニークの意味はちょっと忘れちゃったけど……、小説では固有の力とか稀有な力とかって意味で使われてるんだよ」

「へぇ~。ユニークって、金髪の男が笑って指さしながら『あははは、あそこにいる人はとてもユニークなお人だね!ハニー』みたいなシーンが頭に浮かぶからさ」

「え、ええ? なんか嫌なシーンだね、それ。でも、僕もなんとなく頭に浮かんじゃったよ……」

 金髪の男性マイケルと金髪の女性キャサリンが、歩の頭にも思い浮かんだかな?と思いつつ尋ねかける。

「でさ、これ、何? 詳しくは分からないん?」

「ふふ、分かるよ。さっきタップしたら説明出てきたから」

 と言いながら『描写実体化』をタップして俺に見せてきた。


『描写実体化(レベル1)』

 円環を作りながら指で描いた無生物を、実体化する魔法。
 平面化、立体化、及び、彩色、拡縮は術者の思念によって自動的に行われる。
 但し、消費する魔力量によって実体化する物の性能は変化する。
 描写可能時間「最大10秒」 実体化継続時間「最長10分」 消費可能魔力量「50」
 ユニーク魔法所持の特例者として、総魔力量の上昇に固有計算式が適応される。


「おお! 描いたものが現実に現れるってこと? すっげ! けど、制限がなんとなく厳しいな? 俺10秒じゃ『へのへのもへじ』くらいしか書く自信ねーよ」

「あーうん、確かにそうだね。でも、多分(レベル1)って書かれてるから成長していくんだよ」

「なるほど! へーへーへー! 面白い! 良いなぁ……、俺だけ無能ってなんか疎外感を感じるぞ……」

 言って項垂れる俺の肩に手を置きながら笑いかけてくれる。

「いや、違うんだよ。僕の考えでは、兵輔も同じようなのがあるんじゃないか?ってこと!」

「え? まじで!? 俺にもなんかあるの?」

 俺にも特別な力がある可能性を示唆したことに、俺の心は否応にもなく沸きたった。
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