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或る男の誘惑 4
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抱き寄せられたまま、一葉はすぐには動かなかった。
幸助の腕の力を確かめるように、ほんの少し呼吸を深くする。
離れない。
けれど、まだ預けきらない。
「……一葉……」
名を呼ぶだけで、胸の奥が震える。
その反応を感じ取って、一葉はわずかに口角を上げた。
「逃げないって言っただろ」
「……ああ」
「幸助……」
一葉は幸助の胸から顔を上げ、至近距離で視線だけを合わせる。欲が滲む幸助の瞳に、高揚する。
「落ち着けよ」
その言葉に、幸助の眉が僅かに動いた。
「……今さら、そんなこと言うのか。誘ったのは、お前だろ」
「焦らなくても、俺は逃げないよ。誘ったのは、俺だからね」
一葉は、つかまれたままの腕に軽く体重をかける。
それだけで密着の度合いが深くなり、幸せだと感じて無意識に笑みを浮かべた。
「幸助、ちゃんと……俺を見て……」
一葉の言葉と視線に、幸助の喉が鳴る。
返事の代わりに、腕の力が少しだけ強まった。
「……ほんと、ずるい」
「うん。知ってる」
一葉は笑いながらそう答えて、幸助の頬に手を這わせて、すぐに離した。
見て、と言ったわりに、視線を外して幸助の肩口に額をのせる。そうすると幸助の息遣いと、興奮したように喉を鳴らす音が聞こえて一葉自身も欲が湧き上がってくる。
「幸助……」
「……」
「何考えてる?」
一葉の問いは穏やかだが、無言を許さないような雰囲気があった。
しかし幸助から言葉は出てこない。幸助は再びゴクリ、と喉を鳴らした。
言い方を考えているのかもしれない。一葉はそう思い、小さく笑う。自分を想って欲望を抑え、言葉を考えてくれることが嬉しい。
そして少しの沈黙のあと、幸助が低く息を吐いた。
「……全部」
「全部って?」
「お前のこと」
一葉は、それを聞いてまた静かに笑った。
笑い声は出さない。ただ、胸の奥で満足する。
「それでいい。俺のことだけ考えて」
一葉は、幸助の腕の中でゆっくりと体の向きを変える。
幸助の体に、少しだけ体をあずけた。
感じる息遣い。体温。
「幸助……触っていいよ」
「……」
「幸助……?」
愛しい名前を呼び、間を置く。
「幸助の好きなように、触っていいよ」
それは、なんとも言えないほどに甘い、誘惑だった。
幸助の指先が、無意識に動く。
けれど、まだ触れない。
幸助に余裕などない。それでも、爆発しそうな欲望を必死に抑え込む。
奪うような暴くような行為ではなく、しっかりとこの気持ちが伝わるように、一葉が欲しいのだと、一葉を愛しているのだと、求めているのだと伝えたい。
「……ほんとに、誘ってるな」
「今夜はね」
なんとか絞り出した幸助の言葉に、一葉は振り返らず声だけで応じる。
「幸助が、好きなように触って。でも、奪うのはなしな」
一葉が言い終わらないうちに、灯が揺れ、影が動いた。
一葉の腹に回っていた幸助の手が、力強く一葉を引き寄せる。
「……あっ、こう……」
「一葉……」
幸助の唇が一葉のうなじに押し当てられ、最初はチュ、チュ、と軽く吸い付くだけだったが、所有の証をつけようとしているのだろう、徐々に強くなっていく。
一葉の体が小さく反応した。
「っ、ん……っ」
ピクリ、と一葉の肩が跳ねる。幸助は幾度も口付け吸い上げて、一葉が予想した通り、細く白い首筋に濃く痕をつけていく。
「一葉、好きだ……っ」
幸助の言葉にゾクゾクとした快感が一葉の背中を駆け抜け、意図せず反応が少し大きくなった。
幸助は一葉の反応の変化を見逃さず、着物をはだけさせて直に肌をなぞりながら唇を少しずつ滑らせて肩や腕にも後をつけていく。
「んっ、ぁ……幸助……」
「一葉……」
幸助は背後から圧し掛かるようにして、一葉の体に手を這わせていく。明確な意思を持った手に、一葉の体は何度も小さく跳ねる。こんなに簡単に反応することが恥ずかしいと思わなくもないが、幸助に求められ、愛されて、どうしたって嬉しい気持ちの方が大きい。
幸助の手が、不意に一葉の胸元をス―ッと触れるか触れないかの距離で通りすぎた。その瞬間に、一葉の体はビクンッと跳ね声が漏れる。
「あ……ッ、んっ」
一葉が無意識に畳に手を付くと、幸助は背後から覆いかぶさるようにして体を密着させる。そしてそのまま一葉の胸を愛撫し始めた。
いつも筆を持って文字をつづる幸助の指が、一葉の胸の小さな突起を柔らかく撫でる。時折強弱をつけてつまみ、押しつぶす。その度に一葉は甘い声を上げ、体を跳ね上げた。
それは幸助にとって興奮材料であり、高揚が抑えきれなくなる。もっと、もっと一葉の乱れる姿が見たい。誰にも見せることのない、自分だけの一葉の姿を。
「っ、んぁ、ぁ……っ」
「一葉……可愛い……一葉、好きだっ」
「こ、すけ……顔、見せて……くれないのか?」
一葉は喘ぎの合間に言って、自分の胸をいじっている幸助の手に自分の手を重ねる。幸助の、興奮しているであろう顔が見たい。欲のこもった瞳が見たい。もっと、愛されたい。
「こうす……っ!」
一葉が呼び終わる前に、幸助に体を反転させられた。息を呑んだ一葉の視界に映った幸助の瞳を認識する前に、唇をふさがれた。すぐに舌が入り込んできて、上顎を撫でられ、舌を絡め取られる。その間に、胸への愛撫が再開された。
口内を、舌を愛撫され、両方の胸を執拗に苛められる。
――気持ちいい。
素直にそう思った。だが、まだ足りない。もっと幸助を感じたい、もっと幸助に求められたい愛されたい。
「あ、あ……こうすけ……っ」
名前を呼びながら幸助の首に腕を回し、逞しい首筋に指を這わせ、脚を開き幸助の体を挟み込む。すると、幸助の体がビクリ、と反応し、一葉は口付けられながら微かに口角を上げた。
幸助の腕の力を確かめるように、ほんの少し呼吸を深くする。
離れない。
けれど、まだ預けきらない。
「……一葉……」
名を呼ぶだけで、胸の奥が震える。
その反応を感じ取って、一葉はわずかに口角を上げた。
「逃げないって言っただろ」
「……ああ」
「幸助……」
一葉は幸助の胸から顔を上げ、至近距離で視線だけを合わせる。欲が滲む幸助の瞳に、高揚する。
「落ち着けよ」
その言葉に、幸助の眉が僅かに動いた。
「……今さら、そんなこと言うのか。誘ったのは、お前だろ」
「焦らなくても、俺は逃げないよ。誘ったのは、俺だからね」
一葉は、つかまれたままの腕に軽く体重をかける。
それだけで密着の度合いが深くなり、幸せだと感じて無意識に笑みを浮かべた。
「幸助、ちゃんと……俺を見て……」
一葉の言葉と視線に、幸助の喉が鳴る。
返事の代わりに、腕の力が少しだけ強まった。
「……ほんと、ずるい」
「うん。知ってる」
一葉は笑いながらそう答えて、幸助の頬に手を這わせて、すぐに離した。
見て、と言ったわりに、視線を外して幸助の肩口に額をのせる。そうすると幸助の息遣いと、興奮したように喉を鳴らす音が聞こえて一葉自身も欲が湧き上がってくる。
「幸助……」
「……」
「何考えてる?」
一葉の問いは穏やかだが、無言を許さないような雰囲気があった。
しかし幸助から言葉は出てこない。幸助は再びゴクリ、と喉を鳴らした。
言い方を考えているのかもしれない。一葉はそう思い、小さく笑う。自分を想って欲望を抑え、言葉を考えてくれることが嬉しい。
そして少しの沈黙のあと、幸助が低く息を吐いた。
「……全部」
「全部って?」
「お前のこと」
一葉は、それを聞いてまた静かに笑った。
笑い声は出さない。ただ、胸の奥で満足する。
「それでいい。俺のことだけ考えて」
一葉は、幸助の腕の中でゆっくりと体の向きを変える。
幸助の体に、少しだけ体をあずけた。
感じる息遣い。体温。
「幸助……触っていいよ」
「……」
「幸助……?」
愛しい名前を呼び、間を置く。
「幸助の好きなように、触っていいよ」
それは、なんとも言えないほどに甘い、誘惑だった。
幸助の指先が、無意識に動く。
けれど、まだ触れない。
幸助に余裕などない。それでも、爆発しそうな欲望を必死に抑え込む。
奪うような暴くような行為ではなく、しっかりとこの気持ちが伝わるように、一葉が欲しいのだと、一葉を愛しているのだと、求めているのだと伝えたい。
「……ほんとに、誘ってるな」
「今夜はね」
なんとか絞り出した幸助の言葉に、一葉は振り返らず声だけで応じる。
「幸助が、好きなように触って。でも、奪うのはなしな」
一葉が言い終わらないうちに、灯が揺れ、影が動いた。
一葉の腹に回っていた幸助の手が、力強く一葉を引き寄せる。
「……あっ、こう……」
「一葉……」
幸助の唇が一葉のうなじに押し当てられ、最初はチュ、チュ、と軽く吸い付くだけだったが、所有の証をつけようとしているのだろう、徐々に強くなっていく。
一葉の体が小さく反応した。
「っ、ん……っ」
ピクリ、と一葉の肩が跳ねる。幸助は幾度も口付け吸い上げて、一葉が予想した通り、細く白い首筋に濃く痕をつけていく。
「一葉、好きだ……っ」
幸助の言葉にゾクゾクとした快感が一葉の背中を駆け抜け、意図せず反応が少し大きくなった。
幸助は一葉の反応の変化を見逃さず、着物をはだけさせて直に肌をなぞりながら唇を少しずつ滑らせて肩や腕にも後をつけていく。
「んっ、ぁ……幸助……」
「一葉……」
幸助は背後から圧し掛かるようにして、一葉の体に手を這わせていく。明確な意思を持った手に、一葉の体は何度も小さく跳ねる。こんなに簡単に反応することが恥ずかしいと思わなくもないが、幸助に求められ、愛されて、どうしたって嬉しい気持ちの方が大きい。
幸助の手が、不意に一葉の胸元をス―ッと触れるか触れないかの距離で通りすぎた。その瞬間に、一葉の体はビクンッと跳ね声が漏れる。
「あ……ッ、んっ」
一葉が無意識に畳に手を付くと、幸助は背後から覆いかぶさるようにして体を密着させる。そしてそのまま一葉の胸を愛撫し始めた。
いつも筆を持って文字をつづる幸助の指が、一葉の胸の小さな突起を柔らかく撫でる。時折強弱をつけてつまみ、押しつぶす。その度に一葉は甘い声を上げ、体を跳ね上げた。
それは幸助にとって興奮材料であり、高揚が抑えきれなくなる。もっと、もっと一葉の乱れる姿が見たい。誰にも見せることのない、自分だけの一葉の姿を。
「っ、んぁ、ぁ……っ」
「一葉……可愛い……一葉、好きだっ」
「こ、すけ……顔、見せて……くれないのか?」
一葉は喘ぎの合間に言って、自分の胸をいじっている幸助の手に自分の手を重ねる。幸助の、興奮しているであろう顔が見たい。欲のこもった瞳が見たい。もっと、愛されたい。
「こうす……っ!」
一葉が呼び終わる前に、幸助に体を反転させられた。息を呑んだ一葉の視界に映った幸助の瞳を認識する前に、唇をふさがれた。すぐに舌が入り込んできて、上顎を撫でられ、舌を絡め取られる。その間に、胸への愛撫が再開された。
口内を、舌を愛撫され、両方の胸を執拗に苛められる。
――気持ちいい。
素直にそう思った。だが、まだ足りない。もっと幸助を感じたい、もっと幸助に求められたい愛されたい。
「あ、あ……こうすけ……っ」
名前を呼びながら幸助の首に腕を回し、逞しい首筋に指を這わせ、脚を開き幸助の体を挟み込む。すると、幸助の体がビクリ、と反応し、一葉は口付けられながら微かに口角を上げた。
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いつもありがとうございます✨
二人の恋が、これからどうなっていくのか温かく見守っていてくださると嬉しいです🍀
今回は、幸助を理解しすぎている一葉に焦らされて転がされて苦しそうな幸助が少し可哀想な気がしましたが、それだけ一葉も幸助を見つめているという事なので大人の恋愛は、深すぎますね😅✨✨
いつもありがとうございます✨
幸助の想いが深い分、我慢も辛くなっちゃいますよね💦
それても一葉が幸助を想っている気持ちは幸助に伝わっているので、きっとそれも幸せの一部だと思います✨