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第二章 友達編
友達編 15
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休憩スペースに着くと、開場から然程時間が経っていないせか人は少ない。柊一郎は安堵の息を吐き悠介を椅子に座らせて自分もその隣に座った。
「……ごめ、なさ……っ」
柊一郎が座ると悠介は、か細い声で謝罪の言葉を口にした。俯いていて顔は見えないが、膝に置いた手をギュッと握り震えている。柊一郎は少しでも悠介の恐怖を拭い去りたくて、優しく悠介の手に自分の手を重ねた。
「謝らなくてもいいんですよ。誰にだって苦手なこと、嫌なもの、ありますから」
柊一郎がそう言うとニャーは軽やかに悠介の膝に乗って悠介の頬をてちり、と舐める。
「っ、ニャーも……ごめん、ね」
ニャーが楽しみにしていた事を知っている悠介は申し訳ない気持ちと情けなさで涙を浮かべ、こんな自分を嫌悪してしまう。
「ニャー」
「……だ、いじょうぶ……ごめん、ね」
ニャーはまだ震えている悠介を安心させるかのように 頬をテチリテチリと優しく舐める。柊一郎は、そんなニャーと悠介の側にいたいと思った。優しい信頼関係で結ばれている二人を、羨ましいと思うし、心の底から自分もその中にいられたらどれだけ幸せだろうかと思う。柊一郎は無意識に悠介の手をギュッと握った。
「っ、しゅ……ういちろう、さん……」
「……あ、す、すみません……つい」
手を握られた悠介は少し驚きながらも、柊一郎に手を握られて安心感覚えた。体が震え、まだ不安な気持ちもあるのに。こんなことは初めてだった。
「しゅ、いちろ……さん……迷惑かけて、すみま、せん……」
俯いたまま何度も謝る悠介に柊一郎の胸が切なく締め付けられる。
「迷惑だなんて思ってませんよ。俺がしたくてしてるんですから」
「……すみません……ほんと、に……」
「すみませんより、ありがとうの方が嬉しいです」
柊一郎の言葉に少し顔を上げて小さく微笑んだ悠介の瞳に涙の膜を張る。瞬きすると溢れてしまいそうだ。
柊一郎は悠介の瞳に息を呑む。こんなに純粋で澄んだ綺麗な瞳を見たことがない。しかしその瞳も不安気に揺れている。
「あ、りがと……ござ、います……」
律儀にそう言う悠介に愛おしさが込み上げてくる。
「どういたしまして。もう少し、休みましょう」
「……はい……ニャーも、ありがと」
悠介がそう言うと、ニャーは一声鳴いて悠介の膝の上で丸くなる。こういういつもの態度が悠介を安心させるのだろう、と柊一郎は思った。
「あ、何か飲みますか? 俺、そこで買ってきますよ」
何がいいかと聞けば、悠介は甘いものがいいと言ってくれた。好みを知らない今は、何でもいいと言われるのが一番困る。ちゃんと答えてくれたことに安堵して立ち上がると、休憩ブースの脇にある屋台へと急いだ。
「……ごめ、なさ……っ」
柊一郎が座ると悠介は、か細い声で謝罪の言葉を口にした。俯いていて顔は見えないが、膝に置いた手をギュッと握り震えている。柊一郎は少しでも悠介の恐怖を拭い去りたくて、優しく悠介の手に自分の手を重ねた。
「謝らなくてもいいんですよ。誰にだって苦手なこと、嫌なもの、ありますから」
柊一郎がそう言うとニャーは軽やかに悠介の膝に乗って悠介の頬をてちり、と舐める。
「っ、ニャーも……ごめん、ね」
ニャーが楽しみにしていた事を知っている悠介は申し訳ない気持ちと情けなさで涙を浮かべ、こんな自分を嫌悪してしまう。
「ニャー」
「……だ、いじょうぶ……ごめん、ね」
ニャーはまだ震えている悠介を安心させるかのように 頬をテチリテチリと優しく舐める。柊一郎は、そんなニャーと悠介の側にいたいと思った。優しい信頼関係で結ばれている二人を、羨ましいと思うし、心の底から自分もその中にいられたらどれだけ幸せだろうかと思う。柊一郎は無意識に悠介の手をギュッと握った。
「っ、しゅ……ういちろう、さん……」
「……あ、す、すみません……つい」
手を握られた悠介は少し驚きながらも、柊一郎に手を握られて安心感覚えた。体が震え、まだ不安な気持ちもあるのに。こんなことは初めてだった。
「しゅ、いちろ……さん……迷惑かけて、すみま、せん……」
俯いたまま何度も謝る悠介に柊一郎の胸が切なく締め付けられる。
「迷惑だなんて思ってませんよ。俺がしたくてしてるんですから」
「……すみません……ほんと、に……」
「すみませんより、ありがとうの方が嬉しいです」
柊一郎の言葉に少し顔を上げて小さく微笑んだ悠介の瞳に涙の膜を張る。瞬きすると溢れてしまいそうだ。
柊一郎は悠介の瞳に息を呑む。こんなに純粋で澄んだ綺麗な瞳を見たことがない。しかしその瞳も不安気に揺れている。
「あ、りがと……ござ、います……」
律儀にそう言う悠介に愛おしさが込み上げてくる。
「どういたしまして。もう少し、休みましょう」
「……はい……ニャーも、ありがと」
悠介がそう言うと、ニャーは一声鳴いて悠介の膝の上で丸くなる。こういういつもの態度が悠介を安心させるのだろう、と柊一郎は思った。
「あ、何か飲みますか? 俺、そこで買ってきますよ」
何がいいかと聞けば、悠介は甘いものがいいと言ってくれた。好みを知らない今は、何でもいいと言われるのが一番困る。ちゃんと答えてくれたことに安堵して立ち上がると、休憩ブースの脇にある屋台へと急いだ。
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