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第三章 転機編
転機編 1
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初めてのデート(?)から数週間が経った。周囲の木々や草花が、ちらほらと紅色に染まり始めている。
悠介と柊一郎の距離はデート前よりグンと近付いた。だが、友達の関係から進むことはなかった。
ニャーはいつもどおり毎日来る柊一郎と、それをバレないように――実際はニャーにバレているが――待っている悠介にヤキモキするのが日課になっている。
どうして思い合っているのに番になろうとしないのか。ニャーにはそれが不思議でたまらない。悠介の過去を思えば分からなくもないが、それでもこのニャーが柊一郎は大丈夫ニャと言っているというのに。
※※※
「はぁ……今日も柊一郎さん素敵だったなぁ……」
悠介はレジのカウンターに置いてある、わんにゃんフェスで撮った写真を見つめながら頬杖をついて溜息を吐いた。あの数週間前のわんにゃんフェス以来、悠介の頭の中を占めているのは柊一郎で、悠介は大好きな本も読めずに惚けている。これまでに出会ったことのない悠介の理想像に寸分の違いもない男。好きになるなと言う方が無理というものだ。
「さっき会ったばっかりなのに……また会いたくなっちゃう……はぁ」
悠介は何度めか分からない溜め息を吐いて瞼を閉じる。脳裏に浮かぶ柊一郎の爽やかな笑顔。心が晴れるような手の温もり。心の奥底まで満たされるような優しさ。どれもこれも悠介が今まで経験したことのない幸せな時間だった。もしも、そんな素敵な柊一郎とずっと一緒にいられたら、どれだけ幸せなのだろう。しかしそう思った途端に悠介はブンブンと首を横に振った。
高望みなのもそうだが、一緒にいたらきっと幻滅される。今までがそうだったように。柊一郎に冷たい目で見られたら、きっと二度と立ち直れない。今の、友達のままでいるのが一番いい。そもそも柊一郎はノンケだろう。そう思ってまた溜息を吐く。
「すにゃおに会いたいと言えばいいニャ」
悠介の独り言を聞いていたニャーがカウンターの上に優雅に飛び乗り、悠介の頬に尻尾を撫で付ける。
「……ニャー……急に……ビックリするでしょ」
そう言いながらもニャーの背中にソッと手を這わせ、ゆっくりと優しく撫で付ける。そうだ、ニャーが側にいてくれる。それ以外は望まない。悠介はキュッと唇を結んで自らの想いを殻に閉じ込めた。
「にゃにをそんにゃに考えこんでるかニャ」
ニャーは分かっているがあえて言わずに、素知らぬ顔で問いかける。その間もニャーの背を撫でる悠介の手は止まらない。
「何でもないよ」
優しい微笑みをニャーに向けながら悠介は答えた。ニャーが分かっていて問いかけてきた事を悠介も分かっていた。しかしこれ以上傷つきたくないし、何よりニャーに心配をかけたくない。悠介は心の底からそう思っている。
「悠介はすにゃおじゃにゃいニャ」
そう言いながらニャーは、にゃふふと笑う。悠介がママのお腹の中にいる時からずっと一緒のニャー。悠介にとってニャーは家族以上に家族だった。そんなニャーと一緒にいられるなら、それだけでいい。他には何も望まない。
「俺はいつだって素直だよう」
「いつからこんにゃに嘘つきににゃったかニャ」
「嘘つきじゃないもん」
ニャーの言葉にそう反論しながらぷうっと頬をふくらませる。小さい口が更に小さくなって可愛い。ニャーはまた、にゃふふと笑った。
「嘘つきニャ。柊一郎の事が好きにゃくせに」
「そりゃあ好きだよ。お友達だもん」
「好きが違うニャ! ニャーを騙そうにゃんて100年早いニャ!」
ニャーはそう言って尻尾で悠介の頬を撫でながら、どうにかして悠介を幸せにできないかと考えた。
悠介と柊一郎の距離はデート前よりグンと近付いた。だが、友達の関係から進むことはなかった。
ニャーはいつもどおり毎日来る柊一郎と、それをバレないように――実際はニャーにバレているが――待っている悠介にヤキモキするのが日課になっている。
どうして思い合っているのに番になろうとしないのか。ニャーにはそれが不思議でたまらない。悠介の過去を思えば分からなくもないが、それでもこのニャーが柊一郎は大丈夫ニャと言っているというのに。
※※※
「はぁ……今日も柊一郎さん素敵だったなぁ……」
悠介はレジのカウンターに置いてある、わんにゃんフェスで撮った写真を見つめながら頬杖をついて溜息を吐いた。あの数週間前のわんにゃんフェス以来、悠介の頭の中を占めているのは柊一郎で、悠介は大好きな本も読めずに惚けている。これまでに出会ったことのない悠介の理想像に寸分の違いもない男。好きになるなと言う方が無理というものだ。
「さっき会ったばっかりなのに……また会いたくなっちゃう……はぁ」
悠介は何度めか分からない溜め息を吐いて瞼を閉じる。脳裏に浮かぶ柊一郎の爽やかな笑顔。心が晴れるような手の温もり。心の奥底まで満たされるような優しさ。どれもこれも悠介が今まで経験したことのない幸せな時間だった。もしも、そんな素敵な柊一郎とずっと一緒にいられたら、どれだけ幸せなのだろう。しかしそう思った途端に悠介はブンブンと首を横に振った。
高望みなのもそうだが、一緒にいたらきっと幻滅される。今までがそうだったように。柊一郎に冷たい目で見られたら、きっと二度と立ち直れない。今の、友達のままでいるのが一番いい。そもそも柊一郎はノンケだろう。そう思ってまた溜息を吐く。
「すにゃおに会いたいと言えばいいニャ」
悠介の独り言を聞いていたニャーがカウンターの上に優雅に飛び乗り、悠介の頬に尻尾を撫で付ける。
「……ニャー……急に……ビックリするでしょ」
そう言いながらもニャーの背中にソッと手を這わせ、ゆっくりと優しく撫で付ける。そうだ、ニャーが側にいてくれる。それ以外は望まない。悠介はキュッと唇を結んで自らの想いを殻に閉じ込めた。
「にゃにをそんにゃに考えこんでるかニャ」
ニャーは分かっているがあえて言わずに、素知らぬ顔で問いかける。その間もニャーの背を撫でる悠介の手は止まらない。
「何でもないよ」
優しい微笑みをニャーに向けながら悠介は答えた。ニャーが分かっていて問いかけてきた事を悠介も分かっていた。しかしこれ以上傷つきたくないし、何よりニャーに心配をかけたくない。悠介は心の底からそう思っている。
「悠介はすにゃおじゃにゃいニャ」
そう言いながらニャーは、にゃふふと笑う。悠介がママのお腹の中にいる時からずっと一緒のニャー。悠介にとってニャーは家族以上に家族だった。そんなニャーと一緒にいられるなら、それだけでいい。他には何も望まない。
「俺はいつだって素直だよう」
「いつからこんにゃに嘘つきににゃったかニャ」
「嘘つきじゃないもん」
ニャーの言葉にそう反論しながらぷうっと頬をふくらませる。小さい口が更に小さくなって可愛い。ニャーはまた、にゃふふと笑った。
「嘘つきニャ。柊一郎の事が好きにゃくせに」
「そりゃあ好きだよ。お友達だもん」
「好きが違うニャ! ニャーを騙そうにゃんて100年早いニャ!」
ニャーはそう言って尻尾で悠介の頬を撫でながら、どうにかして悠介を幸せにできないかと考えた。
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