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第三章 転機編
転機編 2
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それから、さらにいくつもの同じような日々が過ぎていった。
初めてニャーが柊一郎と出会ったあの日から、少しずつ悠介と柊一郎の関係は変わっていき、しかし知り合ってからある程度関係性が出来上がると、平穏な安定した関係が暫く続いていた。
イベントに行った日からは、明らかに変わっていた。悠介は以前よりも柊一郎に気を許し始めていたし、柊一郎もこれまで以上に自分の気持ちと向き合った。
そして柊一郎は今日の昼休みも古書店へ足を運んだ。悠介とニャーと癒しのひと時を過ごした後、また会社へと戻っていく。それは最早習慣になり、しかし義務的にというわけではない。だが、この習慣をこれからも止めるつもりはない。
悠介にとってもニャーにとっても、そして柊一郎にとっても当たり前の日常になっていた。
***
――最初はそう、最初はニャーに会うためだったかもしれにゃい。けれど今は、それだけじゃにゃい――
いつも通り客が引いたタイミングで少し遅めの昼食を済ませて悠介と戯れた後、ニャーは無意識に古書店を出ながら、そんなことを思った。歩きながら、ふとカウンターを振り返れば悠介がぼんやりと写真を眺めている。
ニャーは悠介から視線を逸らし、ゆっくりと商店街の慣れた石畳の上を歩く。意識していたわけではなく、悠介と柊一郎の事を考えながらの無意識の行動だった。
ニャーは商店街のアーチの下まで歩いてくると、そこで立ち止まる。
「……決めたニャ」
ぽつりと呟く。
それは、誰に聞かせるでもない小さな呟き――とは言っても、聞こえたとしても悠介以外には通じない言葉だが――
「ニャーは、悠介の幸せのために一肌脱ぐニャ!」
意を決したニャーは、ひときわ敏い鼻をぴんと立て、空気に漂う柊一郎の匂いを探り始めた。
イベントの後、柊一郎に誘われて何度か車で出かけたことがあったが、その時に柊一郎が話していた彼の会社の場所を思い出しながら、商店街を駆け抜ける。
けれどアーチを抜けた先は、夕方――帰宅ラッシュ――というにはまだ少し早い時間だというのに行き交う人で溢れ返っている。
――このまま地上を進んでは、いつまで経ってもたどり着けにゃい――
ニャーはそう考えて一度辺りを見渡した。
「にゃっ……!」
店などの少ない道を探して住宅街へと入ると軽やかに塀へ飛び乗り、そのまま民家の屋根へ跳び上がった。そして瓦を蹴って、また次の屋根へ。ただひたすら走る。匂いと勘と柊一郎の言葉を思い出しながら、風を切って走り抜ける。
途中、ふと立ち止まって周囲を見回す。教えてもらった方向を確かめると、また一気に走り出す。と、そのときニャーはハッとして速度が緩やかになった。
――しまったニャ! 悠介ににゃにも言ってにゃいニャ……――
悠介に何も言わずに出てきたことを思い出し、緩やかになった走りに更にブレーキがかかった。だが、もう引き返すことはできない。悠介には、どうしても幸せになってもらわなければならないのだ。悠介には幸せになってほしいのだ。
ニャーは強くそう思い心の中で悠介に謝ると、より一層速く、真っ直ぐに、柊一郎のいる場所を目指して駆け出した。
初めてニャーが柊一郎と出会ったあの日から、少しずつ悠介と柊一郎の関係は変わっていき、しかし知り合ってからある程度関係性が出来上がると、平穏な安定した関係が暫く続いていた。
イベントに行った日からは、明らかに変わっていた。悠介は以前よりも柊一郎に気を許し始めていたし、柊一郎もこれまで以上に自分の気持ちと向き合った。
そして柊一郎は今日の昼休みも古書店へ足を運んだ。悠介とニャーと癒しのひと時を過ごした後、また会社へと戻っていく。それは最早習慣になり、しかし義務的にというわけではない。だが、この習慣をこれからも止めるつもりはない。
悠介にとってもニャーにとっても、そして柊一郎にとっても当たり前の日常になっていた。
***
――最初はそう、最初はニャーに会うためだったかもしれにゃい。けれど今は、それだけじゃにゃい――
いつも通り客が引いたタイミングで少し遅めの昼食を済ませて悠介と戯れた後、ニャーは無意識に古書店を出ながら、そんなことを思った。歩きながら、ふとカウンターを振り返れば悠介がぼんやりと写真を眺めている。
ニャーは悠介から視線を逸らし、ゆっくりと商店街の慣れた石畳の上を歩く。意識していたわけではなく、悠介と柊一郎の事を考えながらの無意識の行動だった。
ニャーは商店街のアーチの下まで歩いてくると、そこで立ち止まる。
「……決めたニャ」
ぽつりと呟く。
それは、誰に聞かせるでもない小さな呟き――とは言っても、聞こえたとしても悠介以外には通じない言葉だが――
「ニャーは、悠介の幸せのために一肌脱ぐニャ!」
意を決したニャーは、ひときわ敏い鼻をぴんと立て、空気に漂う柊一郎の匂いを探り始めた。
イベントの後、柊一郎に誘われて何度か車で出かけたことがあったが、その時に柊一郎が話していた彼の会社の場所を思い出しながら、商店街を駆け抜ける。
けれどアーチを抜けた先は、夕方――帰宅ラッシュ――というにはまだ少し早い時間だというのに行き交う人で溢れ返っている。
――このまま地上を進んでは、いつまで経ってもたどり着けにゃい――
ニャーはそう考えて一度辺りを見渡した。
「にゃっ……!」
店などの少ない道を探して住宅街へと入ると軽やかに塀へ飛び乗り、そのまま民家の屋根へ跳び上がった。そして瓦を蹴って、また次の屋根へ。ただひたすら走る。匂いと勘と柊一郎の言葉を思い出しながら、風を切って走り抜ける。
途中、ふと立ち止まって周囲を見回す。教えてもらった方向を確かめると、また一気に走り出す。と、そのときニャーはハッとして速度が緩やかになった。
――しまったニャ! 悠介ににゃにも言ってにゃいニャ……――
悠介に何も言わずに出てきたことを思い出し、緩やかになった走りに更にブレーキがかかった。だが、もう引き返すことはできない。悠介には、どうしても幸せになってもらわなければならないのだ。悠介には幸せになってほしいのだ。
ニャーは強くそう思い心の中で悠介に謝ると、より一層速く、真っ直ぐに、柊一郎のいる場所を目指して駆け出した。
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