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2.なぜ子どもができないのでしょう?
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しかし、それは皆が口には出さないだけで暗黙の了解となっていることであった。
何故ならば皇子は今年で十八になったというのに一人の子も成し得ていないのだ。
第一皇子の後宮が開かれて優に三年は経つ。それだけ経っても一人も懐妊の兆しを見せないというのははっきり言って異常だ。
多くの民のように相手が一人というならばあり得る話だが、ここは後宮だ。幾人もの相手がいる。女側に何か問題があったとして、全員というのはあり得ない。
それに加え、この後宮にはかなりの人数が集められているという。今の国王陛下よりも多いだろう。
皇子は若いからたくさんの女が欲しいのだ、なんて下世話にも囁かれているが、それなら子供を授からないことが尚更不思議だ。
淡白であるというならまだしも、欲望があって子供を授からないというのはどういうことだろう。
(まさか、皇子ご自身がどこかご病気にかかられている? いや、それなら城の医者が気づかれないはずもない。子が出来にくい体質で、それを公には出来ないからこうして闇雲に女を集めているの? だから私のような者も呼ばれた?)
同い年で健康的な者の方が懐妊し易いと考えたのだろうか。確かに部屋の中で蝶よ花よと育てられている令嬢よりは運動をしているし身体も引き締まっているだろうけど、とミアは一応の納得をしてみせる。
どの道、自分に選択権はないのだから。そう考えたところで、軽やかな鈴の音が響いた。ミアはハッとして立ち振る舞いを正した。
鈴の音は皇子の訪れの合図だと教えられている。普通は先触れに側仕えの一人でもやってくるものではないかと思ったのだけれど、皇子たってのご希望らしい。
女とは二人きりで逢いたいから他の人は不要だと。つくづく変わった人だとミアは眉を顰めたものの、即座にそれを正して頭を下げた。
微かな衣擦れの音がして皇子が部屋に入って来たことをミアは把握して、決められた挨拶を口にする。
「エレン殿下、お初にお目にかかります。ミアと申します。この度は殿下の一夜のお相手が出来て誠に光栄に存じます」
長ったらしい挨拶を間違えずに言えたことに安堵しつつ、皇子が一言も発しないことを訝しむ。
話さないどころか近づいてさえ来ない皇子への対応についてミアは必死で頭を巡らせた。
そういう勉強は一応してきたけれど、それは大抵皇子が積極的にこちらを求めてくるという前提があるものだった。
それに対してどう応じるのかということを中心的に学んだのであって、これは予想外だったのだ。
何故ならば皇子は今年で十八になったというのに一人の子も成し得ていないのだ。
第一皇子の後宮が開かれて優に三年は経つ。それだけ経っても一人も懐妊の兆しを見せないというのははっきり言って異常だ。
多くの民のように相手が一人というならばあり得る話だが、ここは後宮だ。幾人もの相手がいる。女側に何か問題があったとして、全員というのはあり得ない。
それに加え、この後宮にはかなりの人数が集められているという。今の国王陛下よりも多いだろう。
皇子は若いからたくさんの女が欲しいのだ、なんて下世話にも囁かれているが、それなら子供を授からないことが尚更不思議だ。
淡白であるというならまだしも、欲望があって子供を授からないというのはどういうことだろう。
(まさか、皇子ご自身がどこかご病気にかかられている? いや、それなら城の医者が気づかれないはずもない。子が出来にくい体質で、それを公には出来ないからこうして闇雲に女を集めているの? だから私のような者も呼ばれた?)
同い年で健康的な者の方が懐妊し易いと考えたのだろうか。確かに部屋の中で蝶よ花よと育てられている令嬢よりは運動をしているし身体も引き締まっているだろうけど、とミアは一応の納得をしてみせる。
どの道、自分に選択権はないのだから。そう考えたところで、軽やかな鈴の音が響いた。ミアはハッとして立ち振る舞いを正した。
鈴の音は皇子の訪れの合図だと教えられている。普通は先触れに側仕えの一人でもやってくるものではないかと思ったのだけれど、皇子たってのご希望らしい。
女とは二人きりで逢いたいから他の人は不要だと。つくづく変わった人だとミアは眉を顰めたものの、即座にそれを正して頭を下げた。
微かな衣擦れの音がして皇子が部屋に入って来たことをミアは把握して、決められた挨拶を口にする。
「エレン殿下、お初にお目にかかります。ミアと申します。この度は殿下の一夜のお相手が出来て誠に光栄に存じます」
長ったらしい挨拶を間違えずに言えたことに安堵しつつ、皇子が一言も発しないことを訝しむ。
話さないどころか近づいてさえ来ない皇子への対応についてミアは必死で頭を巡らせた。
そういう勉強は一応してきたけれど、それは大抵皇子が積極的にこちらを求めてくるという前提があるものだった。
それに対してどう応じるのかということを中心的に学んだのであって、これは予想外だったのだ。
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