ワームワームワーム

蒼キるり

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11.見返りのいる心

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 次の日、寝不足の目を擦りながらすぐに宇宙船を出た。確認するまでもなくそこにいるとわかった。


「昨日、連絡があった。お前を調べにやって来る人がいるって。記録にないパターンの生命体だからって。人が来るよ。それで共存に問題がなければ、俺はきっとここで生きるんだろう。まあ、お前にはどうでもいいことかもしれないけどさ、騒がしくなるから知らせておこうと思って」


 そこまで言いかけたところでなんの迷いもなく柔らかく触れられて、それがまるで慰められているかのように感じてしまった。


「ごめん、嫌な言い方したな」


 こんなの八つ当たりだとわかっているのに、言わずにはいられなかった。
 縋るように手を伸ばした。柔らかな感触が確かに腕の中にある。


「通信してきた人な、俺のことを優しいって言うんだ。あなたはあの子を愛してたのねって。だからそんなに頑張れるのねって。あの子は幸せに生きてるからねって」


 本当は罪人に伝えられることではないだろうに、危険を承知で伝えてくれた通信相手は優しい人だったのだろう。
 けれどそれは俺にとって嬉しい言葉とはいえない。


「あいつ生きてるんだって、幸せに。俺は全然幸せじゃないのにな。俺は誰も身代わりになってくれなかったのにな」


 俺がいなくても幸せに生きてればいいのにと思うのと同じくらい、俺がこんなにも寂しい思いをしてるのに何をのうのうと幸せに生きてるんだとも思ってしまう。


「なあ、愛してるってなんだ。俺は最後までそれだけはあいつに言ってやれなかったよ。愛してるなんて、心にもないことは言えなかった。愛ってなんだ、愛してるってなんだ。なんの見返りもなく考えもなく馬鹿みたいに尽くしてやることか? 俺はそんなんじゃない。そんなんじゃない!」


 恐ろしいほどの激情に合わせて叫んでいた。


「俺は自分がされたかったことをあいつにしただけだよ。俺がされたかった全部をしてあげただけだよ。あいつが笑うたびに笑い返しながら、腹の底が煮え繰り返ってたよ。俺はそんな風にしてもらえなかったって。でも俺はあいつに優しくしてやったよ。だって、だってさ、いつか返ってくるかもしれないだろ。俺が優しくしたら、あいつじゃなくても、あの人じゃなくても、俺に優しくしてくれる人がいるかもしれないだろ。俺のしたことを頑張ったな、よくやったなって褒めてくれるかもしれないだろ」


 見返りを求めないなんて、そんなことができるはずがなかった。俺は欲しくて欲しくて仕方なかった。
 ああ、なにも宇宙船に乗ってから起きた現象ではなかった。俺はずっとずっとずっと寂しかった。
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