5 / 195
第1章
捨てる神あれば拾う神あり4
しおりを挟む
「散々いい思いをさせてやったんだから感謝してほしいくらいだ。どちらにせよ、おまえはもう用済みだ」
すると隣室に控えていた衛兵たちが、エドワード様の私室へ押し寄せてきた。その場で僕は捕縛され、牢屋送りとなった。
*
「あの少年によって多くの人命が奪われました。『大いなる』神や、我らが父である『時空』の神も、あの少年の行動を止めようと尽力しましが敵わなかったのです。我らの力は、あの少年には及ばず、何人たりとも干渉できませんでした。ただ指をくわえて見ていることしかできなかったのです」
形のいい柳眉を下げ、悲嘆に暮れる『過去』の女神様の大空のように青い目を見つめる。
「どうして、あなたのように偉大な神々の力がノエル様には通用しなかったのですか?」
「おそらく異世界からやってきた人間だからでしょう。この世界で生まれ、神々の祝福を受けた人間であれば、たとえ他国の人間であろうと我らの力が及びます。それが、この世界のルールだから。でも、あの少年の住む世界では、そのようなルールがなかったり、神々の力が人間には及ばないのかも知れません」
「異世界からやってきた? そんなことがあるのですか……」
「なんにせよ私たちが一致団結して力を合わせたとしても、あの者を元いた世界へ返すことも、この国に現れないようにすることもできません」
「そんな……」
「私の姉である『未来』の女神は、あの神子を名乗る者が闇の力を振るって、この国を滅亡させる未来を見ました」
肩を落として落胆していれば、七色に光る蝶が僕を慰めるように左の肩へとまった。反対の右肩には、女神様のしっとりとした白魚のような手が置かれる。
「ルキウス、絶望に打ちひしがれてはなりません。心を強くお持ちなさい。絶望の中にこそ希望があるのです。まだ――未来は決まってはいませんよ」
「未来が決まっていないとは、どういうことでしょう……」
「――姉は、もうひとつの未来を見ました。それは異国の地からやってきた英雄がこの国を救う未来。我々はその未来に賭けようと思います」
「英雄……?」
「そうです。ある神は、英雄が現れるための鍵となる人物についてを予言をしました。その鍵はあなたですよ、ルキウス」
「僕が、ですか……」
自分がこの国を救う英雄のキーパーソン? そんなの到底信じられない。
僕は『過去』の女神様の言葉を理解できず、まばたきを繰り返した。
女神様は「ただ、」と悲哀に満ちた声色を出し、目線を落とした。「その未来を導くための道は獣道です。長くうねった険しい道を進まねばなりません。それ相応の覚悟がなければ、道半ばで命を落とすことになるでしょう。私は、この子の恩人でもあるあなただけでも生き延びる道を用意しましたが……あなたは、どうしたいですか。英雄を見つけるための獣道か、それとも自分だけが生き延びる道。どちらか選んでください」
期待と不安の入り混じった状態で彼女に尋ねる。
「もしも……もしも僕が獣道を進んで英雄を見つけたら、僕のせいで命を失った人たちも死なずに済むのでしょうか?」
「もちろんです。あなたが見事道を進みきり、雄を見出せることできれば、あなたの大切な人たちも死にません。全員、生き残れますよ」
だったら選ぶ道は決まっている。
「獣道です。僕は英雄を探す道を選びます」
「そう――わかりました。覚悟はできていますね」
女神様の言葉に、ゆっくりとうなずく。
「大切な人たちともう一度会えるのなら、みんなが笑顔でいられるのなら、どんなにつらくても、苦しくても構いません。たとえ、この身が朽ち果てようと大切な人たちを守ります。この命と引換えにしても、必ず!」
女神様の手が離れ、七色に光る蝶が女神様の被っている花の冠へと、とまった。
「では神子を名乗る者が現れる一年前へ時間を巻き戻しましょう」
どこからともなく金色に光り輝く時計が現れ、女神様が時計の長針に指先をやる。
「ルキウス、チャンスは二度までです。それ以上は、私たちにもどうすることもできません。この国の明日は、あなた次第。頼みましたよ」
「はい、ありがとうございます、女神様。このご恩は一生忘れません」
女神様が長針を指先で弾くと時計は逆回転をする。周りの景色がグニャリと歪み、急速に変化する。
ひどいめまいを覚えて僕は目を閉じた。
すると隣室に控えていた衛兵たちが、エドワード様の私室へ押し寄せてきた。その場で僕は捕縛され、牢屋送りとなった。
*
「あの少年によって多くの人命が奪われました。『大いなる』神や、我らが父である『時空』の神も、あの少年の行動を止めようと尽力しましが敵わなかったのです。我らの力は、あの少年には及ばず、何人たりとも干渉できませんでした。ただ指をくわえて見ていることしかできなかったのです」
形のいい柳眉を下げ、悲嘆に暮れる『過去』の女神様の大空のように青い目を見つめる。
「どうして、あなたのように偉大な神々の力がノエル様には通用しなかったのですか?」
「おそらく異世界からやってきた人間だからでしょう。この世界で生まれ、神々の祝福を受けた人間であれば、たとえ他国の人間であろうと我らの力が及びます。それが、この世界のルールだから。でも、あの少年の住む世界では、そのようなルールがなかったり、神々の力が人間には及ばないのかも知れません」
「異世界からやってきた? そんなことがあるのですか……」
「なんにせよ私たちが一致団結して力を合わせたとしても、あの者を元いた世界へ返すことも、この国に現れないようにすることもできません」
「そんな……」
「私の姉である『未来』の女神は、あの神子を名乗る者が闇の力を振るって、この国を滅亡させる未来を見ました」
肩を落として落胆していれば、七色に光る蝶が僕を慰めるように左の肩へとまった。反対の右肩には、女神様のしっとりとした白魚のような手が置かれる。
「ルキウス、絶望に打ちひしがれてはなりません。心を強くお持ちなさい。絶望の中にこそ希望があるのです。まだ――未来は決まってはいませんよ」
「未来が決まっていないとは、どういうことでしょう……」
「――姉は、もうひとつの未来を見ました。それは異国の地からやってきた英雄がこの国を救う未来。我々はその未来に賭けようと思います」
「英雄……?」
「そうです。ある神は、英雄が現れるための鍵となる人物についてを予言をしました。その鍵はあなたですよ、ルキウス」
「僕が、ですか……」
自分がこの国を救う英雄のキーパーソン? そんなの到底信じられない。
僕は『過去』の女神様の言葉を理解できず、まばたきを繰り返した。
女神様は「ただ、」と悲哀に満ちた声色を出し、目線を落とした。「その未来を導くための道は獣道です。長くうねった険しい道を進まねばなりません。それ相応の覚悟がなければ、道半ばで命を落とすことになるでしょう。私は、この子の恩人でもあるあなただけでも生き延びる道を用意しましたが……あなたは、どうしたいですか。英雄を見つけるための獣道か、それとも自分だけが生き延びる道。どちらか選んでください」
期待と不安の入り混じった状態で彼女に尋ねる。
「もしも……もしも僕が獣道を進んで英雄を見つけたら、僕のせいで命を失った人たちも死なずに済むのでしょうか?」
「もちろんです。あなたが見事道を進みきり、雄を見出せることできれば、あなたの大切な人たちも死にません。全員、生き残れますよ」
だったら選ぶ道は決まっている。
「獣道です。僕は英雄を探す道を選びます」
「そう――わかりました。覚悟はできていますね」
女神様の言葉に、ゆっくりとうなずく。
「大切な人たちともう一度会えるのなら、みんなが笑顔でいられるのなら、どんなにつらくても、苦しくても構いません。たとえ、この身が朽ち果てようと大切な人たちを守ります。この命と引換えにしても、必ず!」
女神様の手が離れ、七色に光る蝶が女神様の被っている花の冠へと、とまった。
「では神子を名乗る者が現れる一年前へ時間を巻き戻しましょう」
どこからともなく金色に光り輝く時計が現れ、女神様が時計の長針に指先をやる。
「ルキウス、チャンスは二度までです。それ以上は、私たちにもどうすることもできません。この国の明日は、あなた次第。頼みましたよ」
「はい、ありがとうございます、女神様。このご恩は一生忘れません」
女神様が長針を指先で弾くと時計は逆回転をする。周りの景色がグニャリと歪み、急速に変化する。
ひどいめまいを覚えて僕は目を閉じた。
1
あなたにおすすめの小説
早く惚れてよ、怖がりナツ
ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。
このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。
そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。
一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて…
那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。
ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩
《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》
平民なのに王子の身代わりをすることになり、氷の従者に教育されることになりました
律子
BL
牢に捕まった平民のカイルが突然連れていかれた場所はなんと王宮!
そこで自分と瓜二つの顔を持つ第二王子に会い、病弱な彼の「身代わり」をさせられることになった!
突然始まった王子生活でカイルを導くのは、氷のように冷たい美貌の従者・アウレリオ。
礼儀作法から言葉遣い、歩き方まで──何もかもを厳しく“教育”される日々。
でも、そうして過ごすうちにアウレリオの厳しいだけではない一面が見えてくることに。
二人は「身代わり生活」の相棒となり、試練を乗り越えていくが…。
だんだんと相手に向ける感情が『相棒』に向ける信頼だけではなくなっていく…!?
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
黒豹拾いました
おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。
大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが…
「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」
そう迫ってくる。おかしいな…?
育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
甘味食して、甘淫に沈む
箕田 はる
BL
時は大正時代。
老舗の和菓子店の次男である井之口 春信は、幼馴染みである笹倉 明臣と恋仲にあった。
だが、母の葬儀を終えた早々に縁談が決まってしまい、悲嘆に暮れていた。そんな最中に、今度は何故か豪商から養子の話が持ち上がってしまう。
没落寸前の家を救う為に、春信はその養子の話を受け入れることに。
そこで再会を果たしたのが、小学校時代に成金と呼ばれ、いじめられていた鳴宮 清次だった。以前とは違う変貌を遂げた彼の姿に驚く春信。
春信の為にと用意された様々な物に心奪われ、尊敬の念を抱く中、彼から告げられたのは兄弟としてではなく、夫婦としての生活だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる