リスタート―三度目の正直―

鶴機 亀輔

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番外編

空に太陽7

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「そんな高価なものいただけませんよ! そもそも、お母様の持ち物だったのでしょう? 大切なものでは、ありませんか。それはマックスさんが持つべきものです!」

 慌ててルキウスが返そうとするが、マックスはその手にそっとブックマーカーを握らせた。

「いいんだよ、オレが持っていても宝の持ち腐れになる。どこぞの女に渡す機会もないし、オレは耳飾りや腕輪で充分だからな。それにこれは、オレのいた国の神々の加護が宿ってる」

「マックスさんのいた国の……」

「そうだ。宝石は、おまえが英雄を見つけられるようにって願いを込めた。が、何よりおまえが魔族や魔王に襲われて殺されないための魔よけなんだよ。おまえは宝飾品といったらリボンタイだけで、後は懐中時計しか持たないだろ。おまけにリボンも、ポシェットも質素なものを使ってる。ちょうどイチロウが『ノートを買う』って言ってたからネックレスで渡すよりも、ずっといいと思ったんだ。そのほうが父上と母上も喜ぶし、浮かばれる。受け取ってくれないか?」

「そういうことでしたら、ありがたくちょうだいします」

 はにかんだ笑みを浮かべてルキウスはブックマーカーを受け取った。さっそくイチロウからもらった羊皮紙のノートに挟んで、ポシェットの中へ入れ直す。

「魔王復活によって戦争が起こり、王様が失意の底に沈んでいるときに不謹慎ですが、とてもうれしいです。今年はとても素敵な誕生日を迎えることができました。後は英雄を見つけられたり、手掛かりを発見できると助かるのですが……」

 マックスはルキウスの頬に手を当て、うつむいていた顔を上げさせる。

 ルキウスはマックスの腰に手を置き、ふたりは互いの目をじっと見つめ合った。

「きっと宝石たちが願いを叶えてくれる。おまえも、おまえの大切な人たちも、大丈夫だ。来年もこうやって年を迎えられる」

「……そうでしょうか?」

「もちろんだ、オレが保証する。……誕生日おめでとう、ルキウス」

 ふたりは目を閉じ、どちらからともなく口づけ合った。

 二度、三度と唇を触れ合わせ、音を立てる軽い口づけをする。

 しかし気分が高ぶってきたマックスは、手をルキウスの背に回し、唇をついばむものへと変えていく。もっとルキウスがほしいと願った彼は口づけを深めようとする。

「マックスさん。……皆さん、待ってます。……んぅ……っ……」

 媚薬を摂取したときと異なり、理性の残っているルキウスは、やんわりとマックスの口づけを止めようとする。一階の広間にイチロウを、遠く離れた神殿にはエリザやクロウリー、メリーを待たせていることをマックスに言おうとすれば舌を吸われてしまう。

 そのままマックスはルキウスを抱き上げ、ルキウスが普段使っているベッドへ横たわらせ、口づける。

「待って……マックスさん、ダメです……あっ!」

 びくりとルキウスは体を跳ねさせた。

 マックスの大きな右手がルキウスのふくらはぎや、ももを触り始め、唇で首筋を愛撫する。

「ルキウス……なあ、もう少し、しようぜ……」

「もうイチロウが待っているのに……あっ!」

 マックスはルキウスの耳に舌を這わせ、手を上半身へと移していく。

「服を脱いだりしない。だから、ほんの一、二分だけ。なっ?」

「……わかりましたよ。……少しだけ」

 そうしてルキウスはまつ毛を震わせながら、マックスの首へと回した。ふたたび、ふたりが口づけようとすると……「おいルキウス、後マックス! メリーたちから早くしろって伝書鳩が三羽も来やがったぞ!」

 とうとう待ちきれなくなったイチロウがドアを壊さんばかりの勢いでドンドン叩いたのだ。

「ったく、ムードもへったくれもないな」とマックスが身を起こし、口づけやマックスの愛撫によって、くたりとしているルキウスを抱き起こす。「なんだよ!?」

 マックスがドアを開けると、イチロウはマックスの肩越しからルキウスの様子を見た。そして苦虫を噛み潰したような顔をする。

「おまえら、新年早々抱き合おうとしてたのか? せめて初詣を済ませてからにしろ! 人に会う前だって言うのに節操なしかよ!?」

「おまえにだけは言われたくないっつーの! 少しキスをしてただけだ。ルキウスで変な妄想をするな!」

「あー、やだやだ。ぼくは何も聞こえませーん」

 両耳に手をあてたイチロウが首を横に振った。

「いや、聞こえてるだろ」とイチロウの子どもっぽい様子にマックスは呆れ返る。

 伝書鳩から手紙に戻った封筒をマックスの胸に押しつけたイチロウが廊下を走っていく。

「とにかく、さっさと準備してくれよな!」

「ほんっとに生意気なやつだな。大人をなんだと思ってる」

 ぶつくさ文句を口にしながらマックスは封筒の中身を開ける。エリザが怒っている顔が手紙から飛び出し、「いつまで待たせるつもりなの!? 乳繰り合ってたら、ただじゃおかないんだから!」と怒鳴ったのだ。ただの便せんとなった手紙を手にしたマックスは、なんともいえない顔をして首の後ろを掻き、顔をしかめた。

「イチロウの言っていることも一理ありますよ、マックスさん。クロウリー先生たちを寒空の下で、お待たせしているのは事実ですから」

「……そうだな。じゃあ行くとするか。今年もよろしく頼むな、ルキウス」

「はい、僕こそ今年もよろしくお願いします」

 マックスはルキウスの肩を抱き、頬へと軽く口づけた。

 ルキウスは「マックスさん!」と頬を赤く染めてマックスの行為をとがめたが、本気で怒っているわけではなかったため、迫力がない。



 彼らは転移魔法で神殿へ向かい、いつものメンバーと落ち合った。

 そしてこれから一年間、よい年が過ごせるよう天上に棲む神へ祈りを捧げたのだった。
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