リスタート―三度目の正直―

鶴機 亀輔

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番外編

空に太陽6

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「おまえのことは、ほんの少しは好きになったけど、あいつのことは大嫌いだ! ビジュアル的にもボディビルダーやボクサーみたいな見た目が生理的に受け付けないのに、その上むさ苦しいわ、昭和の体育会系だか軍隊方式だわで、とにかく受け入れられるわけがない!」

「もう……大嫌いだった僕のことも、ちょっとは好きになれたんだよ? ギルドのリーダーであるマックスさんの力を借りられたからギルドに入れたも同然だって、わかってるでしょ? 仲よくしなよ」

 勢いよくイチロウは立ち上がり、ツカツカとドアのほうへ歩いていってドアを開ける。

「わかってる。ギルドへ加入させてくれたことも心から感謝している。だけどそれはそれ、これはこれだ。あんなやつと仲よくする義理はない!」

 乱暴にドアを閉めてイチロウはルキウスの部屋を出ていった。

 ルキウスはソファの肘置きに肘をついて頬杖をする。

「マックスさん、明日の夜まで帰ってきてくれないのかな……?」とつぶやき、そのまま暗くなり始めた窓の外を眺める。「どんなプレゼントでもマックスさんが選んでくれたものなら、すごくうれしいし……誕生日の日に、そばにいれないから今日は、ずっとそばにいてほしかったのに」



 しかしイチロウの言葉は大きく外れ、ルキウスの不安は杞憂で済んだ。

 マックスは夕食時になると魔法の船からひょっこりやってきて、大みそかの食事をクライン家の者やイチロウと食べ始めたのである。

 その間イチロウは恨みのこもった眼差しでマックスを睨みつけ、ルキウスの父・ラーメスはいつものようにトゲのある口調で話しかけた。

 ラーメスはルキウスの母・マリアに「おとなげないですわよ、あなた」と言われ、家族や従者の前でいさめられたのだ。

 夕食後、片づけを終えるとオレインと料理長のマシュー、メイドたちは正面玄関以外の戸締まりをして、館からもっとも近い『屋敷』や『家』、『かまど』の神へ参拝しに行った。

 ついでマリアとメイド長、庭師のジャックとアンナ、それからアンナの母が『豊穣』の女神のもとへ、ウィリアムは『知恵』の女神のところへ、そしてアレキサンダーは『正義』の女神のところへ向かった。

 館の中は、ギルドが信奉すう『戦い』の神のところへ向かうルキウスとマックス、イチロウだけとなる。

 イチロウは初詣へ向かう準備を整えて一階の広間で待ちぼうけをしていた。

 正面玄関を施錠することになっていたルキウスは部屋へコートを杖を取りに行っていた。そこへマックスがやってくる。

「マックスさん、今まで一体どこへ行ってたんです?」

「魔法の船だ」

「魔法の船? なんのために?」

 黒のコートを身に纏ったルキウスは魔法の杖を入れておくホルダーを腰につけながら問いかけた。

「すぐにわかる。それより、どうしてオレに誕生日のことを教えてくれなかったんだよ。ピーターのとこへ行かなかったら、わからずじまいだったぞ」

「あー……あなたに話していなかったですか?」

 机に置いてあった杖をホルダーにす。ベッドに腰かけ、ブーツの紐を調節しながらルキウスはマックスの言葉に集中する。

「ああ、話してなかった。べつに怒ってるわけじゃねえけどな。話題にすら出さなかったオレにも非がある」

 そういえばマックスさんと家族や友だち、過去のできごとや好きなもの、嫌いなものについては話したけど誕生日については話さなかったなと思いながらルキウスは立ち上がった。

「マックスさんの誕生日は、いつなんですか?」

「二月十四日のバレンタインデーだ。ちゃんと覚えておいてくれよ」

 時計の針が十二時をさすと、けたたましく鐘の音が響く。

「一月一日だ。誕生日おめでとう、ルキウス」

 マックスは曲線を描いた杖のようなものを取り出した。杖の先には黄色と水色の小さな玉が交互に連なっている。金でできた玉飾りの中に真珠が入っていて、その先には雫を模した青い石がついていた。

「これはブックマーカーですね」

「そうだ、オレが作ったんだ」とマックスはブックマーカーをルキウスに手渡す。

「えっ、マックスさんが!?」

 びっくり仰天したルキウスがまじまじとブックマーカーを観察する。

「といってもオレが一から作ったんじゃなくて、母上が持っていた形見のネックレスをリメイクしたものだがな」

「ま、マックスさんのお母様のをですか!? それにこれって、ガラス細工や水晶玉でできたビーズじゃないですよね。真珠も本物……でしょうか?」

「そうだな。後は純金と宝石を使ってある。ラピスラズリにサファイア、それからトパーズだ」

「そ、そんな高価なものはもらえませんよ! おばあ様からお譲りいただいたもの」

 清貧をモットーにしていたルキウスの祖母・オフェリアは王女時代にもらった宝石のほとんどを質に入れ、貧しい人々へのボランティアに勤しんだ。

 だが母親のマリアがお茶会を開いたり、ルキウス自身も社交界に出て貴婦人と話す機会があった。その中で宝石についての知識が多少なりともついたのだ。
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