194 / 195
番外編
空に太陽6
しおりを挟む
「おまえのことは、ほんの少しは好きになったけど、あいつのことは大嫌いだ! ビジュアル的にもボディビルダーやボクサーみたいな見た目が生理的に受け付けないのに、その上むさ苦しいわ、昭和の体育会系だか軍隊方式だわで、とにかく受け入れられるわけがない!」
「もう……大嫌いだった僕のことも、ちょっとは好きになれたんだよ? ギルドのリーダーであるマックスさんの力を借りられたからギルドに入れたも同然だって、わかってるでしょ? 仲よくしなよ」
勢いよくイチロウは立ち上がり、ツカツカとドアのほうへ歩いていってドアを開ける。
「わかってる。ギルドへ加入させてくれたことも心から感謝している。だけどそれはそれ、これはこれだ。あんなやつと仲よくする義理はない!」
乱暴にドアを閉めてイチロウはルキウスの部屋を出ていった。
ルキウスはソファの肘置きに肘をついて頬杖をする。
「マックスさん、明日の夜まで帰ってきてくれないのかな……?」とつぶやき、そのまま暗くなり始めた窓の外を眺める。「どんなプレゼントでもマックスさんが選んでくれたものなら、すごくうれしいし……誕生日の日に、そばにいれないから今日は、ずっとそばにいてほしかったのに」
しかしイチロウの言葉は大きく外れ、ルキウスの不安は杞憂で済んだ。
マックスは夕食時になると魔法の船からひょっこりやってきて、大みそかの食事をクライン家の者やイチロウと食べ始めたのである。
その間イチロウは恨みのこもった眼差しでマックスを睨みつけ、ルキウスの父・ラーメスはいつものようにトゲのある口調で話しかけた。
ラーメスはルキウスの母・マリアに「おとなげないですわよ、あなた」と言われ、家族や従者の前でいさめられたのだ。
夕食後、片づけを終えるとオレインと料理長のマシュー、メイドたちは正面玄関以外の戸締まりをして、館からもっとも近い『屋敷』や『家』、『かまど』の神へ参拝しに行った。
ついでマリアとメイド長、庭師のジャックとアンナ、それからアンナの母が『豊穣』の女神のもとへ、ウィリアムは『知恵』の女神のところへ、そしてアレキサンダーは『正義』の女神のところへ向かった。
館の中は、ギルドが信奉すう『戦い』の神のところへ向かうルキウスとマックス、イチロウだけとなる。
イチロウは初詣へ向かう準備を整えて一階の広間で待ちぼうけをしていた。
正面玄関を施錠することになっていたルキウスは部屋へコートを杖を取りに行っていた。そこへマックスがやってくる。
「マックスさん、今まで一体どこへ行ってたんです?」
「魔法の船だ」
「魔法の船? なんのために?」
黒のコートを身に纏ったルキウスは魔法の杖を入れておくホルダーを腰につけながら問いかけた。
「すぐにわかる。それより、どうしてオレに誕生日のことを教えてくれなかったんだよ。ピーターのとこへ行かなかったら、わからずじまいだったぞ」
「あー……あなたに話していなかったですか?」
机に置いてあった杖をホルダーに挿す。ベッドに腰かけ、ブーツの紐を調節しながらルキウスはマックスの言葉に集中する。
「ああ、話してなかった。べつに怒ってるわけじゃねえけどな。話題にすら出さなかったオレにも非がある」
そういえばマックスさんと家族や友だち、過去のできごとや好きなもの、嫌いなものについては話したけど誕生日については話さなかったなと思いながらルキウスは立ち上がった。
「マックスさんの誕生日は、いつなんですか?」
「二月十四日のバレンタインデーだ。ちゃんと覚えておいてくれよ」
時計の針が十二時をさすと、けたたましく鐘の音が響く。
「一月一日だ。誕生日おめでとう、ルキウス」
マックスは曲線を描いた杖のようなものを取り出した。杖の先には黄色と水色の小さな玉が交互に連なっている。金でできた玉飾りの中に真珠が入っていて、その先には雫を模した青い石がついていた。
「これはブックマーカーですね」
「そうだ、オレが作ったんだ」とマックスはブックマーカーをルキウスに手渡す。
「えっ、マックスさんが!?」
びっくり仰天したルキウスがまじまじとブックマーカーを観察する。
「といってもオレが一から作ったんじゃなくて、母上が持っていた形見のネックレスをリメイクしたものだがな」
「ま、マックスさんのお母様のをですか!? それにこれって、ガラス細工や水晶玉でできたビーズじゃないですよね。真珠も本物……でしょうか?」
「そうだな。後は純金と宝石を使ってある。ラピスラズリにサファイア、それからトパーズだ」
「そ、そんな高価なものはもらえませんよ! おばあ様からお譲りいただいたもの」
清貧をモットーにしていたルキウスの祖母・オフェリアは王女時代にもらった宝石のほとんどを質に入れ、貧しい人々へのボランティアに勤しんだ。
だが母親のマリアがお茶会を開いたり、ルキウス自身も社交界に出て貴婦人と話す機会があった。その中で宝石についての知識が多少なりともついたのだ。
「もう……大嫌いだった僕のことも、ちょっとは好きになれたんだよ? ギルドのリーダーであるマックスさんの力を借りられたからギルドに入れたも同然だって、わかってるでしょ? 仲よくしなよ」
勢いよくイチロウは立ち上がり、ツカツカとドアのほうへ歩いていってドアを開ける。
「わかってる。ギルドへ加入させてくれたことも心から感謝している。だけどそれはそれ、これはこれだ。あんなやつと仲よくする義理はない!」
乱暴にドアを閉めてイチロウはルキウスの部屋を出ていった。
ルキウスはソファの肘置きに肘をついて頬杖をする。
「マックスさん、明日の夜まで帰ってきてくれないのかな……?」とつぶやき、そのまま暗くなり始めた窓の外を眺める。「どんなプレゼントでもマックスさんが選んでくれたものなら、すごくうれしいし……誕生日の日に、そばにいれないから今日は、ずっとそばにいてほしかったのに」
しかしイチロウの言葉は大きく外れ、ルキウスの不安は杞憂で済んだ。
マックスは夕食時になると魔法の船からひょっこりやってきて、大みそかの食事をクライン家の者やイチロウと食べ始めたのである。
その間イチロウは恨みのこもった眼差しでマックスを睨みつけ、ルキウスの父・ラーメスはいつものようにトゲのある口調で話しかけた。
ラーメスはルキウスの母・マリアに「おとなげないですわよ、あなた」と言われ、家族や従者の前でいさめられたのだ。
夕食後、片づけを終えるとオレインと料理長のマシュー、メイドたちは正面玄関以外の戸締まりをして、館からもっとも近い『屋敷』や『家』、『かまど』の神へ参拝しに行った。
ついでマリアとメイド長、庭師のジャックとアンナ、それからアンナの母が『豊穣』の女神のもとへ、ウィリアムは『知恵』の女神のところへ、そしてアレキサンダーは『正義』の女神のところへ向かった。
館の中は、ギルドが信奉すう『戦い』の神のところへ向かうルキウスとマックス、イチロウだけとなる。
イチロウは初詣へ向かう準備を整えて一階の広間で待ちぼうけをしていた。
正面玄関を施錠することになっていたルキウスは部屋へコートを杖を取りに行っていた。そこへマックスがやってくる。
「マックスさん、今まで一体どこへ行ってたんです?」
「魔法の船だ」
「魔法の船? なんのために?」
黒のコートを身に纏ったルキウスは魔法の杖を入れておくホルダーを腰につけながら問いかけた。
「すぐにわかる。それより、どうしてオレに誕生日のことを教えてくれなかったんだよ。ピーターのとこへ行かなかったら、わからずじまいだったぞ」
「あー……あなたに話していなかったですか?」
机に置いてあった杖をホルダーに挿す。ベッドに腰かけ、ブーツの紐を調節しながらルキウスはマックスの言葉に集中する。
「ああ、話してなかった。べつに怒ってるわけじゃねえけどな。話題にすら出さなかったオレにも非がある」
そういえばマックスさんと家族や友だち、過去のできごとや好きなもの、嫌いなものについては話したけど誕生日については話さなかったなと思いながらルキウスは立ち上がった。
「マックスさんの誕生日は、いつなんですか?」
「二月十四日のバレンタインデーだ。ちゃんと覚えておいてくれよ」
時計の針が十二時をさすと、けたたましく鐘の音が響く。
「一月一日だ。誕生日おめでとう、ルキウス」
マックスは曲線を描いた杖のようなものを取り出した。杖の先には黄色と水色の小さな玉が交互に連なっている。金でできた玉飾りの中に真珠が入っていて、その先には雫を模した青い石がついていた。
「これはブックマーカーですね」
「そうだ、オレが作ったんだ」とマックスはブックマーカーをルキウスに手渡す。
「えっ、マックスさんが!?」
びっくり仰天したルキウスがまじまじとブックマーカーを観察する。
「といってもオレが一から作ったんじゃなくて、母上が持っていた形見のネックレスをリメイクしたものだがな」
「ま、マックスさんのお母様のをですか!? それにこれって、ガラス細工や水晶玉でできたビーズじゃないですよね。真珠も本物……でしょうか?」
「そうだな。後は純金と宝石を使ってある。ラピスラズリにサファイア、それからトパーズだ」
「そ、そんな高価なものはもらえませんよ! おばあ様からお譲りいただいたもの」
清貧をモットーにしていたルキウスの祖母・オフェリアは王女時代にもらった宝石のほとんどを質に入れ、貧しい人々へのボランティアに勤しんだ。
だが母親のマリアがお茶会を開いたり、ルキウス自身も社交界に出て貴婦人と話す機会があった。その中で宝石についての知識が多少なりともついたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げる銀狐に追う白竜~いいなずけ竜のアレがあんなに大きいなんて聞いてません!~
結城星乃
BL
【執着年下攻め🐲×逃げる年上受け🦊】
愚者の森に住む銀狐の一族には、ある掟がある。
──群れの長となる者は必ず真竜を娶って子を成し、真竜の加護を得ること──
長となる証である紋様を持って生まれてきた皓(こう)は、成竜となった番(つがい)の真竜と、婚儀の相談の為に顔合わせをすることになった。
番の真竜とは、幼竜の時に幾度か会っている。丸い目が綺羅綺羅していて、とても愛らしい白竜だった。この子が将来自分のお嫁さんになるんだと、胸が高鳴ったことを思い出す。
どんな美人になっているんだろう。
だが相談の場に現れたのは、冷たい灰銀の目した、自分よりも体格の良い雄竜で……。
──あ、これ、俺が……抱かれる方だ。
──あんな体格いいやつのあれ、挿入したら絶対壊れる!
──ごめんみんな、俺逃げる!
逃げる銀狐の行く末は……。
そして逃げる銀狐に竜は……。
白竜×銀狐の和風系異世界ファンタジー。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる