31 / 42
第8章
小さな友だちVS犬猿幼なじみ!?1
『へえー、三上さんとこの息子さんと仮契約結んだのか』
「そうなんですよ」
聡太さんにLIMEで電話しながら、先週のできごとを話した。
「健太くん、すごくいい子で、やさしくて、子どもなのに頼り甲斐もあって、犬のぼくのお世話もしっかりしてくれます。たまに、どっちが年上? って感じで複雑な気分になっちゃうんですけど」
『まあ、おまえ高校生にしてはガキっぽいし、天然ボケだからな』
辛辣な言葉に唇を尖らせる。
「そんなんじゃないです!」って怒ったら、ますます墓穴を掘りそうで文句も言えない。
『で、この後も、その……健太くんって子と出かけるのか』
「はい、三上さんは、お仕事がお忙しくって。ぼくは今日、レッスンがないので健太くんとアニメ映画を見るんです」
前髪に寝癖がついていないのを確認し、手についらワックスを落とすため、ハンドソープで洗う。
洗面所のタオルで拭き、スマホを持ち上げる。
「健太くんと話すのは楽しいから好きですよ。でも、人間の姿で出かけるとなると、おまわりさんから職務質問されないか心配です。顔も似てないから親戚のお兄さんで通せないし、ぼくと健太くんじゃ七歳も違う。今の世の中って高校生が小学生といるだけでロリコン・ショタコンって大人から思われちゃうでしょ?」
深刻に悩んでいるののに聡太さんはケラケラ笑い始める。
『大丈夫、大丈夫。童顔のおまえじゃ、中学生くらいにしか見えないって。それに、そんなポヤポヤした能天気顔の犯罪者なんていないっつーの!』
「聡太さん、言い方! もっとオブラートに包んで言ってくださいよ……!」
『むしろオレは、おまえのほうが心配だけどな。鷺ノ宮プロデューサーにつけ狙われてるくらいだし』
聡太さんの言葉にぼくは乾いた笑いをこぼした。
「信・濃・くーん」
「はい」
ガヤの出演が終わり、帰路につこうとしたら廊下で鷺ノ宮プロデューサーに声をかけられた。
芸能界の重鎮と知り合いで、やり手だと先輩方が話している。
細身のやさしそうなおじさんなんだけど、猛禽類みたいな目つきが、ちょっと苦手。
「いやー、今日のきみの演技もすばらしかったよ! まるで、かわいいワンちゃんがキュンキュン言ってるみたいで、聞いてたら胸が熱くなっちゃった」
「えっと……ありがとうございます」
毎度、顔を合わせるたびに犬みたいだなんだと言われて心臓に悪い。それに――「きみのかわいい声と演技なら男の人とエッチなことしてるBLCDが売れると思うんだよね。きっと女の子たちのファンが大勢できるよー。NLのCDでも女の人に責められてる演技なら絶対バカ売れ。男のファンもできてウハウハだ。保証するよ!」
「いえ、ぼく露骨な濡れ場ありはNGなんで……」
大人向けの作品もいずれは出演するときが来るけど、二十歳になるまでは、やめておこうってマネージャーや社長と話し合いで決めた。
それで仕事が狭まる可能性もあるけど、硬派でまじめな新人で売っているから、そのイメージを壊したくない。
何度もお断りしているのに鷺ノ宮プロデューサーは、ぼくに濡れ場のある仕事をどうかと聞いてくる。
「そっかー、残念だな。信濃くんはビジュアルもよくてアイドルに転向しても売れるのに」
「いえ、そんな……歌と踊りはアイドルの人たちに負けますよ。顔やスタイルだって、すごくいいわけじゃないし」
「そこはほら、整形って手もあるでしょ? 服を脱いだり、お風呂に浸かっている姿を撮った写真集でも出せば、すぐに資金も貯まるって」
「そういうのは、ちょっと……」
「そうそう、近々渋谷でナイトプールのパーティがあるんだ。会員限定なんだけど信濃くんもどう? きみがどんな水着を着て泳ぐのか見てみたいな」
「へっ?」
急にプロデューサーの手が肩に回り、内緒話でもするみたいに顔を近づけられる。
生理的な嫌悪でゾゾゾと悪寒が走り、真冬でもないのに鳥肌が立った。
「かわいいモデルの女の子が来るし、芸能事務所の関係者とコネも作れるよ。SNS映えするオシャレなご飯やカクテルなんかも――」
お酒は二十歳まで飲んじゃダメ!
親戚の結婚式や、お葬式に参加したときだって、「大人になるまで飲みません」って断ってきた。
プロデューサーに初めて会ったとき、まだ高校を卒業してないって伝えてあるのに、なんでアルコールを勧めてくるの!?
「ごめんなさい。母に仕事が終わったら、すぐ明日の朝食に使うものを買ってくるよう頼まれているので、これで失礼します!」
そうして脱兎のごとく逃げたのだ。
『完全にセクハラだな。つーか成人してないやつはノンアルでもグレーゾーンなのに』
「もう、なんとかならないかなーって感じで、困っているんですよね」
『マネージャーや社長に伝えとけよ。オレのほうからも言っとくから。後、おまえと健太くんが歩いても、渉が健太くんにキスしたり、トイレの個室へ無理やり連れ込んだりしない限りは、周りの連中もなーんも思わねえって』
「ぼく、そんなこと絶対にしませんよ! 同い年の好きな人がいるのに、なんで健太くんを傷つけるような真似をしなきゃいけないんですか!?」
カバンの中身を確認し、スマホを入れて玄関のドアを開ける。
「そうなんですよ」
聡太さんにLIMEで電話しながら、先週のできごとを話した。
「健太くん、すごくいい子で、やさしくて、子どもなのに頼り甲斐もあって、犬のぼくのお世話もしっかりしてくれます。たまに、どっちが年上? って感じで複雑な気分になっちゃうんですけど」
『まあ、おまえ高校生にしてはガキっぽいし、天然ボケだからな』
辛辣な言葉に唇を尖らせる。
「そんなんじゃないです!」って怒ったら、ますます墓穴を掘りそうで文句も言えない。
『で、この後も、その……健太くんって子と出かけるのか』
「はい、三上さんは、お仕事がお忙しくって。ぼくは今日、レッスンがないので健太くんとアニメ映画を見るんです」
前髪に寝癖がついていないのを確認し、手についらワックスを落とすため、ハンドソープで洗う。
洗面所のタオルで拭き、スマホを持ち上げる。
「健太くんと話すのは楽しいから好きですよ。でも、人間の姿で出かけるとなると、おまわりさんから職務質問されないか心配です。顔も似てないから親戚のお兄さんで通せないし、ぼくと健太くんじゃ七歳も違う。今の世の中って高校生が小学生といるだけでロリコン・ショタコンって大人から思われちゃうでしょ?」
深刻に悩んでいるののに聡太さんはケラケラ笑い始める。
『大丈夫、大丈夫。童顔のおまえじゃ、中学生くらいにしか見えないって。それに、そんなポヤポヤした能天気顔の犯罪者なんていないっつーの!』
「聡太さん、言い方! もっとオブラートに包んで言ってくださいよ……!」
『むしろオレは、おまえのほうが心配だけどな。鷺ノ宮プロデューサーにつけ狙われてるくらいだし』
聡太さんの言葉にぼくは乾いた笑いをこぼした。
「信・濃・くーん」
「はい」
ガヤの出演が終わり、帰路につこうとしたら廊下で鷺ノ宮プロデューサーに声をかけられた。
芸能界の重鎮と知り合いで、やり手だと先輩方が話している。
細身のやさしそうなおじさんなんだけど、猛禽類みたいな目つきが、ちょっと苦手。
「いやー、今日のきみの演技もすばらしかったよ! まるで、かわいいワンちゃんがキュンキュン言ってるみたいで、聞いてたら胸が熱くなっちゃった」
「えっと……ありがとうございます」
毎度、顔を合わせるたびに犬みたいだなんだと言われて心臓に悪い。それに――「きみのかわいい声と演技なら男の人とエッチなことしてるBLCDが売れると思うんだよね。きっと女の子たちのファンが大勢できるよー。NLのCDでも女の人に責められてる演技なら絶対バカ売れ。男のファンもできてウハウハだ。保証するよ!」
「いえ、ぼく露骨な濡れ場ありはNGなんで……」
大人向けの作品もいずれは出演するときが来るけど、二十歳になるまでは、やめておこうってマネージャーや社長と話し合いで決めた。
それで仕事が狭まる可能性もあるけど、硬派でまじめな新人で売っているから、そのイメージを壊したくない。
何度もお断りしているのに鷺ノ宮プロデューサーは、ぼくに濡れ場のある仕事をどうかと聞いてくる。
「そっかー、残念だな。信濃くんはビジュアルもよくてアイドルに転向しても売れるのに」
「いえ、そんな……歌と踊りはアイドルの人たちに負けますよ。顔やスタイルだって、すごくいいわけじゃないし」
「そこはほら、整形って手もあるでしょ? 服を脱いだり、お風呂に浸かっている姿を撮った写真集でも出せば、すぐに資金も貯まるって」
「そういうのは、ちょっと……」
「そうそう、近々渋谷でナイトプールのパーティがあるんだ。会員限定なんだけど信濃くんもどう? きみがどんな水着を着て泳ぐのか見てみたいな」
「へっ?」
急にプロデューサーの手が肩に回り、内緒話でもするみたいに顔を近づけられる。
生理的な嫌悪でゾゾゾと悪寒が走り、真冬でもないのに鳥肌が立った。
「かわいいモデルの女の子が来るし、芸能事務所の関係者とコネも作れるよ。SNS映えするオシャレなご飯やカクテルなんかも――」
お酒は二十歳まで飲んじゃダメ!
親戚の結婚式や、お葬式に参加したときだって、「大人になるまで飲みません」って断ってきた。
プロデューサーに初めて会ったとき、まだ高校を卒業してないって伝えてあるのに、なんでアルコールを勧めてくるの!?
「ごめんなさい。母に仕事が終わったら、すぐ明日の朝食に使うものを買ってくるよう頼まれているので、これで失礼します!」
そうして脱兎のごとく逃げたのだ。
『完全にセクハラだな。つーか成人してないやつはノンアルでもグレーゾーンなのに』
「もう、なんとかならないかなーって感じで、困っているんですよね」
『マネージャーや社長に伝えとけよ。オレのほうからも言っとくから。後、おまえと健太くんが歩いても、渉が健太くんにキスしたり、トイレの個室へ無理やり連れ込んだりしない限りは、周りの連中もなーんも思わねえって』
「ぼく、そんなこと絶対にしませんよ! 同い年の好きな人がいるのに、なんで健太くんを傷つけるような真似をしなきゃいけないんですか!?」
カバンの中身を確認し、スマホを入れて玄関のドアを開ける。
あなたにおすすめの小説
みどりとあおとあお
うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。
ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。
モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。
そんな碧の物語です。
短編。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
ポメった幼馴染をモフる話
鑽孔さんこう
BL
ポメガバースBLです! 大学生の幼馴染2人は恋人同士で同じ家に住んでいる。ある金曜日の夜、バイト帰りで疲れ切ったまま寒空の下家路につき、愛しの我が家へ着いた頃には体は冷え切っていた。家の中では恋人の居川仁が帰りを待ってくれているはずだが、家の外から人の気配は感じられない。聞きそびれていた用事でもあったか、と思考を巡らせながら家の扉を開けるとそこには…!※12時投稿。2025.3.11完結しました。追加で投稿中。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。